日本IBM科学賞第12回(1998年)受賞者
受賞者紹介
大野 英男(おおの・ひでお)
昭和29年12月18日生まれ
東北大学電気通信研究所 教授

昭和 52年
東京大学工学部卒業
昭和 57年
東京大学大学院工学系研究科
博士課程(電子工学専攻)修了昭和 57年
北海道大学工学部・講師
昭和 58年
北海道大学工学部・助教授
昭和 63年
IBM T. J. Watson研究所・客員研究員
平成 6年
東北大学工学部・教授
平成 7年
東北大学電気通信研究所・教授
専門:
半導体工学
著書:
『”Field-effect transistors” in GalnAsP Alloy Seminconductors』
(ed.T.Pearsall, John Wiley and Sons, 1982年)
『III‐V族化合物半導体』
(共著、赤碕勇、培風館、1994年)
贈賞の理由
強磁性半導体とそのヘテロ接合に関する研究
今日のエレクトロニクスは、半導体集積回路や半導体レーザなどの半導体を用いたデバイスと、磁性体を用いた磁気記録・磁気デバイスによって支えられている。大野教授は、III-V族化合物半導体をベースとした強磁性半導体、(Ga,Mn)Asのエピタキシャル成長に成功しその電気的・磁気的性質を明らかにすると共に、ヘテロ接合の形成を行い、半導体と磁性体の間に橋を架ける研究を大きく前進させた。
従来、磁性半導体としてEu酸化物やII-VI族希薄磁性半導体が研究されてきた。しかし、前者は微小な結晶しか得られず、後者は高抵抗であり通常強磁性を得ることができない。このような背景のもと大野教授は1996年代表的な化合物半導体であるGaAsにMnを最大7%まで導入した(Ga,Mn)Asの結晶成長に成功し、これが強磁性を示すことを明らかにした。従来、MnをGaAs結晶中に大量に導入する試みは、Mnの固溶度が低くまた表面偏析を生じるため失敗してきた。大野教授は、低温分子線エピタキシ法を用いるとGaAs基板上に(Ga,Mn)Asが再現性良く成長すること、Mnがドーパントとなるために低抵抗となること、この薄膜がキューリー温度Tc
=110 Kを有する強磁性体であること等を見いだした。引き続き、スピン乱雑散乱の解析から(Ga,Mn)Asにおける強磁性の起源がRKKY相互作用で説明できることを示すと共に、(Ga,Mn)As/GaAs超格子の成長にも成功した。これに基づき大野教授は共鳴トンネル構造により(Ga,Mn)Asの自発的スピン分裂を観測し、また強磁性(Ga,Mn)As層間の磁気的結合をGaAsや(Al,Ga)As層を挿入することにより制御可能であることも明らかにした。
このような新しい強磁性半導体の誕生の結果、キャリアスピンと磁性スピンとの交換相互作用により生ずるさまざまな現象を利用することが可能となった。
本研究は従来の半導体エレクトロニクスに大きなインパクトを与えるものであり、本賞の受賞にふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
