日本IBM科学賞第12回(1998年)受賞者
受賞者紹介
樽茶 清悟(たるちゃ・せいご)
昭和28年9月20日生まれ
東京大学理学部物理学科 教授

昭和 51年
東京大学工学部卒業
昭和 53年
東京大学大学院工学系研究科
修士課程修了昭和 53年
日本電信電話公社基礎研究所
(現NTT基礎研究所)入所昭和 61年
東京大学工学博士学位取得
昭和 61年
マックスプランク固体研究所・客員研究員
平成 5年
NTT基礎研究所・特別研究員
平成 7年
デルフト工科大学・客員教授
平成 10年
東京大学理学部・教授
専門:
半導体電子物性
贈賞の理由
低次元電子系における強相関効果の実験的研究
近年、微細加工技術の発展により、電子を微細な固体空間に閉じ込めることが可能となりつつあり、このような系における電子の挙動が大きな関心を集めている。樽茶教授は、数10ナノメーターの太さをもち長さ10マイクロメーター程度の一次元伝導体や100ナノメーターサイズのドットを作成する技術を開発し、さらに電極を工夫することにより、理想的な一次元伝導体やドットを実現させた。これらの低次元系において電子の振る舞いを研究し、以下の二つの重要な結果を得た。
一次元電子系においては、電子間のクーロン相互作用のために三次元系とは異なり朝永-Luttinger液体とよばれる特異な状態にあることが理論的に予言され、この状態においては、電気伝導度などの物理量が温度のべき乗で変化することが予想されていた。樽茶教授は、一次元伝導体のコンダクタンス(電気伝導度)の長さ依存性や温度依存性を詳しく測定し、朝永-Luttinger理論の実験的検証に初めて成功した。
微小サイズのドットにおいては、電子の量子力学的性質が顕著になり、電子を狭い空間に閉じこめる効果が電子間のクーロン相互作用よりも強い場合には原子に似たエネルギー準位をとる。このようなドットにおける「人工原子」は以前から興味が持たれていたが作成技術の難しさから実験的に調べることは出来なかった。樽茶教授は理想的なドットの作成に成功し、このドットに電子を一個ずつ注入しその電圧-電流特性を調べた。その結果、電子数が2、2、12個などのときは電流が流れず、それ以外では流れることを発見した。すなわち、ドット内の電子配置は原子に似た殻構造をとり、閉殻のときには電子系が安定なのでイオン化エネルギーが大きくなり電流が流れないことが実験的に示された。
これらの研究成果は、物理学の発展にとって重要であるばかりではなく、将来のマイクロエレクトロニクスへの応用という点においても画期的なものであり、本賞を贈るにふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
