日本IBM科学賞第12回(1998年)受賞者
受賞者紹介
時任 宣博(ときとう・のりひろ)
昭和32年1月26日生まれ
九州大学有機化学基礎研究センター 教授

昭和 54年
東京大学理学部化学科卒業
昭和 60年
東京大学大学院理学系研究科博士課程化学専門課程修了
理学博士学位取得昭和 60年
東京大学大学院理学系研究科
大学院研究生昭和 60年
国際基督教大学自然科学科化学教室
非常勤助手昭和 61年
筑波大学化学系・文部技官
昭和 62年
筑波大学化学系・助手
平成 元年
東京大学理学部(化学教室)・助手
平成 6年
東京大学大学院理学系研究科
(化学専攻)・助教授平成 10年
九州大学有機化学基礎研究センター
教授専門:
有機化学、有機ヘテロ原子化学、
有機金属化学著書:
『The Chemistry of Organosilicon Compounds,Part2』
(共著:Wiley,1998年)
『Comprehensive Heterocyclic Chemistry II』
(共著:Pergamon,1996年)
贈賞の理由
速度論的安定化の概念に立脚した新規典型元素多重結合の創出
有機化合物は、炭素、水素を中心としこれに第二周期元素である酸素、窒素などが加わってできている。また新しい反応や合成の開発、新しい機能の発現には、二重結合などの多重結合をもった化合物が重要な役割を果たしてきた。時任教授は、このような従来の有機化学の枠組みに縛られることなく、その目を周期表の下の元素に向け、高周期14族、16族元素を含みなおかつこれらが多重結合した全く新しい有機化合物の合成に次々と成功した。
不安定且つ高反応性が予測されるこれら化学種を合成するためには、非常にかさ高くしかも優れた立体保護能を持つ置換基(原子団)を開発する必要がある。時任教授は、2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル基を新たに開発し、これを用いると種々の不安定化学種を速度論的に安定化できることを明らかにした。この発明により、新規な結合様式を有する様々の高周期典型元素多重結合化学種を安定に合成・単離することを可能とした。
なかでも最新の研究成果である「ケイ素原子を環内に含む安定な芳香族化合物、シラベンゼンおよびシラナフタレンの初の合成とその分子構造の解明」と「重いビスマス原子2個を二重結合で結んだ安定ジビスムテンの合成、構造および反応の研究」は特筆に値する。前者は、長年多くの研究者がその合成・単離を目指していたものであり、時任博士による初めての合成と構造、反応性の解明は、現在内外でホットな話題となっている。後者のジビスムテンの合成と単離は、非放射性元素中で最も重いビスマス原子においても二重結合の形成が可能であることを示したものであり、化学者の夢を越える化合物であったと言える。重原子の化学結合論の観点から理論化学/計算機化学者の興味をも引き付けている。
以上のように、時任博士の新規な高周期典型元素多重結合化学種に関する系統的合成研究は、有機化学者の好奇心を
満たすのみならず、典型元素化学の領域を拓いたものとして高く評価され、本賞の受賞にふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
