日本IBM科学賞第13回(1999年)受賞者
受賞者紹介
山村 清隆(やまむら・きよたか)
昭和34年12月19日生まれ
中央大学理工学部電気・電子工学科 教授

昭和 57年
早稲田大学理工学部電子通信学科卒業
昭和 59年
早稲田大学大学院理工学研究科
博士課程前期修了昭和 60年
早稲田大学理工学部電子通信学科
助手昭和 62年
早稲田大学大学院理工学研究科
博士課程後期修了(工学博士)昭和 63年
群馬大学工学部情報工学科・助教授
平成 10年
中央大学理工学部電気・電子工学科
助教授平成 11年
中央大学理工学部電気・電子工学科
教授専門:
非線形システムの数値解析
贈賞の理由
非線形システムの数値解析法の開発とその応用に関する研究
大規模集積回路網の設計にはスパイス(SPICE)と呼ばれる数値解析シミュレーション法が使われている。ディジタル回路網の場合、非線形方程式にニュートン法を適用して必ず解が収束することが証明されているので、回路設計にはこれが広く使われて来た。しかしながら、アナログ回路網の場合、ニュートン法では解が収束することが保証されていないため、シミュレーションによる設計が非常に困難であった。
山村教授は非線形システムの新しい数値解析手法としてホモトピー法を導入することを研究し、ニュートンホモトピー法を用いると収束性がよいことを明らかにして来た。その応用として大規模集積回路網設計法のスパイスに数値解析手法として本方法を適用し、従来法では不可能であったアナログ回路網の数値解析シミュレーションが可能であることを数学的に証明した。さらに、その手法をスパイスに組み込み、トランジスタ1万素子を含むアナログ大規模集積回路の設計に有効であることを産業界と協力して実証した。
同時期には米国ベル研究所、カリフォルニア大学バークレイ校でもスパイスにホモトピー法を適用する方法が研究されていたが、数値解析の解が収束しないのとの報告が多々あった。彼らは、不動点ホモトピー法を用いており、収束に関する数学的証明が行われていなかった。山村教授は、不動点ホモトピー法をスパイスに適用した場合の数学的収束の可能性について証明を試み、彼らの方法そのままでは数学的に収束する確率がきわめて低いことを見いだした。しかも、収束を可能にするためには、彼らの導入したホモトピー法の関数のある部分に-1を付加するだけで、高い確率を持って解が収束することを証明した。この結果
、米国でもホモトピー法を用いるアナログ大規模集積回路網の数値解析が可能になり、現在、本方法を用いたシミュレータが実用化され、大規模集積回路開発に大きく貢献している。
以上のように、山村教授は非線形システムの数値解析分野において、極めて独創的な方法論を展開し、理論的な奥深さと実用性の両方を兼ね備えた研究を行って、産業界へも寄与をした。このほか、新時代の科学技術における最重要課題の一つである非線形システムに数値解析法を広い範囲で展開しており、応用数学、化学などの他分野にも大きなインパクトを与えている。これらの成果
はIBM科学賞受賞にたいへんふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
