
昭和 61年
東京大学工学部計数工学科卒業
昭和 63年
東京大学大学院工学系研究科
修士課程終了昭和 63年
電子技術総合研究所入所
平成 7年
電子技術総合研究所・主任研究官
平成 8年
理学博士(東京大学)
平成 10年
~11年スタンフォード大学・客員研究員
専門:
低温物理
田仲 由喜夫(たなか・ゆきお)
昭和37年1月23日生まれ
名古屋大学大学院工学研究科応用物理学専攻 助教授

昭和 60年
東京大学理学部物理学科卒業
昭和 62年
東京大学大学院理学系研究科
物理学専攻修士課程終了平成 2年
東京大学大学院理学系研究科
物理学専攻博士課程修了平成 2年
新潟大学理学部・助手
平成 8年
新潟大学理学部・助教授
平成 8年
新潟大学大学院自然科学研究科
助教授平成 10年
名古屋大学大学院工学研究科・助教授
専門:
物性物理学理論
低温物理理論
贈賞の理由
異方的超伝導体におけるトンネル現象の研究
1986年に酸化物高温超伝導体が発見されて以来、従来のBCS超伝導体とは異なる多くの特異な現象が見出されている。超伝導状態では2つの電子が作るクーパー対がボーズ凝縮しているが、高温超伝導体等の電子間相互作用の強い系では電子間の斥力を避けるために、異方的な対ポテンシャル状態が出現していると考えられている。これは超伝導体中の励起準粒子の感じるポテンシャルの符号(位相)が変化することを意味する。
柏谷博士と田仲助教授は、酸化物超伝導体のような異方的超伝導体の持つ対ポテンシャルの内的位
相により、BCS超伝導体では予想もされなかった新規な干渉効果が、準粒子のトンネル効果
とジョセフソン効果に現れることを、理論と実験の両面から明らかにした。最も基本的な点は、準粒子が超伝導体界面
で反射する際に感じる対ポテンシャルの符号変化に由来する干渉により、零エネルギー状態が出現する場合があることである。
柏谷博士と田仲助教授は、超伝導体/常伝導体界面でのトンネル効果において零エネルギー状態に対応する零バイアス・コンダクタンスピークが現れることを理論的に示した。また柏谷博士は実験技術を飛躍的に向上させ、酸化物超伝導体はd-波対ポテンシャルを持つことを確認した。これらの研究により長年謎であった零バイアス・コンダクタンスピークの起源が解明されたが、このピークはd-波対ポテンシャルに限らず、全ての異方的超伝導体において普遍的に期待されることが明らかになった。
また柏谷博士と田仲助教授は、超伝導体/超伝導体界面でのジョセフソン効果においても、零エネルギー状態が大きな影響を与えることを理論的に明らかにしている。その結果、ジョセフソン電流の温度変化は非単調な振舞いをする場合があることが判明した。この様な異常な温度変化も、符号変化する対ポテンシャルを持つ異方的超伝導体を含む接合系に普遍的に期待される効果である。
これまではトンネル効果とは、超伝導体の対ポテンシャルの大きさを観測するものと認識されていたが、これらの研究を通
して位相の効果が直接に現れることが明らかになったことは今後の超伝導研究に対して大きな意義がある。このように、柏谷博士と田仲助教授のトンネル現象についての研究成果
は異方的超伝導体の最も基礎的な性質を解明したもので、超伝導研究の中に重要な足跡を残したと言え、本賞を贈るのに誠にふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
