自然界では、DNA二重らせんや蛋白の会合構造など、分子間に働く弱い結合を媒介として、最も安定な構造に自発的に集合する。この分子集合により生成する、精巧に一次配列の施された生体構造は、「プログラム分子集合」として着目されている。 藤田教授は、弱い結合でありながら、結合生成に明確な方向性を持つ配位結合を活用することで、人工系における高度なプログラム分子集合を達成した。 藤田教授は金属イオンの活性点を過度に保護し、90度の結合角を持った接続単位をつくることで、極めて単純な構造の架橋配位子から、多彩な収束構造を定量的に自己集合させることに成功した。この着想を、正方形分子や正八面体分子の自己集合という形で具現化した。正方形分子は弱い結合で相互作用しながら自然に正方形構造に落ち着き、ナノメートルスケールにも到達する環状骨格が構築できることを示した。目的の構造を小成分にプログラムし、分子を自発的に集合させるという新たな着想による独創性の高い研究成果である。さらにこの着想を発展させ、多面体分子では、三次元的に閉じたカプセル構造、チューブ構造、ボウル構造など自在に自己集合させ、この手法が高い汎用性を有することを示した。 また、人工的に生み出された三次元構造は、巨大な分子内孤立空間を有する。藤田教授はこの孤立空間を利用し、分子の物性転換や物質転換を実現し、小成分の合理設計→プログラム分子集合→機能発現という生体系類似システムを実現化した。藤田教授の構築した三次元かご型分子は、その内部空孔に特定有機分子が複数個取り込むという形で分子認識機能を発現する。この孤立空間に取り込まれた不安定分子は安定化し、さらに孤立空間内で酸化反応・環状付加反応・異性化反応等の物質転換を触媒的に促進するなど特徴的な機能の発現に成功、分子内孤立空間が人工的な特異場であることを示した。 以上のように、藤田教授の研究業績は分子集合の研究において、新領域の開拓に大きく貢献する独創的なものであり、本賞を贈るにふさわしいものである。
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