日本IBM科学賞第15回(2001年)受賞者
受賞者紹介
金井 浩(かない・ひろし)
昭和33年11月29日生まれ
東北大学大学院工学研究科 電子工学専攻 教授

昭和 56年
東北大学工学部通信工学科卒業
昭和 58年
東北大学大学院工学研究科
電気及通信工学専攻修士課程修了昭和 61年
東北大学大学院工学研究科
電気及通信工学専攻博士課程修了
(工学博士)昭和 61年
東北大学大学情報処理教育センター
助手平成 元年
東北大学工学部電気工学科・助手
平成 2年
東北大学工学部電気工学科・講師
平成 4年
東北大学工学部電気工学科・助教授
平成 13年
東北大学大学院工学研究科
電子工学専攻・教授専門:
医用超音波工学
贈賞の理由
心臓壁に関する高感度超音波計測の研究
心筋梗塞・動脈硬化等の循環器疾患では、疾患病変部の経時的観察や、投薬評価など適切な治療法の選択において、心臓壁を構成する心筋の1拍内での収縮弛緩特性や動脈壁の硬さに関する局所組織性状を高い空間分解能で計測することが必須となる。また、疾病を早期段階で検出できる高い計測精度と非侵襲的な反復適用可能性も重要となる。しかし、従来の手法や超音波エコー、CT、MRI等の装置はこのような非侵襲的診断に必要な高い空間・時間分解能を有していない。
金井教授はこれらの課題を解決するために、心筋の1拍内での収縮弛緩によって発生する心筋の僅かな厚み変化と、1拍内での血圧変化に伴って動脈の壁に発生する数ミクロンという僅かな厚み変化(微小歪)を、体表から送信した超音波の位相を巧妙に用いて高精度に計測し、心筋機能や動脈壁の弾性特性を局所ごとに評価できる手法を世界に先駆けて開発することに成功した。これによって、心臓疾患や動脈硬化症の臨床診断法に関する新しい研究領域が開拓されたことは高く評価される。また、金井教授の開発した新しい手法を用いることによって、心臓壁上に数百Hzまでの高い周波数をもつ数ミクロンオーダーの微小振幅の振動があることが初めて見出されたことは、心臓生理学の領域の研究にも多大のインパクトを与え、その意義は極めて大きい。これらの成果は世界の主要医療診断装置メーカーの診断装置にも採用され、循環器疾患への臨床実績も積まれている。
金井教授の開発した手法は、今後とも心筋機能の局所診断や動脈硬化の診断等に広く利用され、病変部位の内部組成を体表から電子的に染色する生体マイクロスコープの実現や、形態学的には動脈硬化病変のない極めて早期段階での動脈硬化の診断にも道を開く可能性をもっているなど、その社会的な意義も極めて大きい。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
