日本IBM科学賞 第17回(2003年)受賞者
受賞者紹介
加藤 隆史(かとう たかし)
昭和34年4月22日生まれ
東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻 教授
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昭和58年
東京大学工学部合成化学科卒業
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昭和63年
東京大学工学系研究科合成化学専門課程 博士課程修了・学位取得(工学博士)
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昭和63年
米国コーネル大学化学科・博士研究員
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平成元年
東京大学工学部合成化学科・助手
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平成3年
東京大学生産技術研究所・講師
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平成5年
東京大学生産技術研究所・助教授
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平成8年
東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻・助教授
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平成11年
東京大学大学院新領域創成科学研究科 助教授
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平成12年
東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻・教授
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【専門】
高分子化学、分子組織化の化学
贈賞の理由
分子の組織化・階層化による高分子機能の発現に関する研究
加藤氏の専門分野である高分子化学は、分子の共有結合を基本とする大きな構造物質の合成化学として発展してきた。これに対して同氏は、低分子の集合によって高分子の設計・構築が可能であるとの新しい考え方を提唱し、高分子化学の新潮流を生み出し、高い評価を得ている。
すなわち加藤氏は、「非共有結合相互作用」を利用して低分子の集合構造を巧みに利用し、機能性高分子が構築できることを、世界に先駆けて提示した。この概念により、一群の液晶材料・複合材料・超分子ポリマーなどの機能性高分子材料を創製した。その本質は、従来あまり注目されていなかった弱い分子間相互作用を積極的に利用したことにある。具体的には、水素結合などの非共有結合を用いて、分子を子供のブロックの玩具のように組み立て、自在に材料を集合・自己組織化させていくものである。現在のナノテクノロジーのストラテジーの一つであるボトムアップ型の分子組み立ての先駆けとも言うべき面白い着想といえよう。従来の高分子化学を「静的な高機能化」と呼ぶならば、加藤氏の提唱した高分子材料設計法は、「動的な高機能化」である。
このような新しい着想のもと、同氏はそれらの成果を、115編のオリジナル論文、80編の総説・解説に発表している。24件にわたる特許なども取得している。加藤氏の業績を以下に具体的にまとめる。
同氏は、1989年、異種の分子を水素結合で定量的に接続し、液晶に代表される機能高分子構造が構築できることを世界で初めて示した。これは、自己組織化による最初の超分子液晶であった。さらに同氏は、この概念を発展させ、複数の相互作用部位を有する多官能性分子を用いて、可逆的に構造変化をするなどの特徴を有する超分子液晶ポリマーを構築した。
同氏の示した従来のポリマーと異なる分子設計は、刺激・環境に柔軟に対応する動的構造変化を有する機能性材料の創製といった、新しい機能性高分子化学の潮流を生みだし、これにより、同氏は90年代をリードした。
さらに、加藤氏は、異種分子からなる階層的・複合的な不均一構造の、材料設計における重要性に着目し、低次元イオン伝導材料や無機・有機複合材料などを作製して、その有用性を実証した。これらは、表示素子や2次元イオン輸送素子など実用に向けた開発研究として、企業で行われている。
以上、加藤氏の示した「複数の分子の複合化による機能分子創製」の概念は、材料化学の新しい視点を示すとともに、高分子化学に大きな影響をおよぼす学問的基盤を与えるものと、高く評価できる。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
