日本IBM科学賞 第18回(2004年)受賞者
受賞者紹介
田原 太平(たはら たへい)
昭和36年5月20日生まれ
独立行政法人理化学研究所中央研究所田原分子分光研究室 主任研究員
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昭和59年
東京大学理学部化学科卒業
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昭和61年
東京大学大学院理学系研究科
化学専門課程修士課程修了 -
平成元年
東京大学大学院理学系研究科
化学専門課程博士課程修了(理学博士) -
平成元年
東京大学理学部化学教室・助手
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平成2年
神奈川科学技術アカデミー
極限分子計測プロジェクト・研究員 -
平成7年
岡崎国立共同研究機構
分子科学研究所・助教授 -
平成13年
理化学研究所・主任研究員
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【専門】
分子科学、凝縮相の分子分光
贈賞の理由
新しい時間分解分光法の開発と凝縮相超高速分子現象の解明
田原太平氏は、独自の発想に基づいて、ピコ秒2次元マルチプレクスコヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)分光、フェムト秒インパルシブラマン分光、フェムト秒紫外ポンプ・可視プローブ吸収分光などの超高速時間分解分光装置を設計、製作し、従来不可能であった新しい実験に挑戦した。基本的な分子系を厳選してこれらの手法を適用し、従来の常識を覆す新しい知見を得るとともに、それらを適切な理論に基づいて解釈することによって、化学反応に含まれる素過程に関する我々の理解を深化させた。
10フェムト秒時間分解吸収分光により、光解離反応において解離が進行する方向の変位に対応する基準振動がコヒーレントに励起されることを見出し、多原子分子の反応における反応座標の概念に実験的裏づけを与えた。光誘起2重プロトン移動反応、光異性化反応、光水素引抜き反応などの過程に存在する中間体を種々の時間分解分光により調べ、これらの反応機構について根本的に重要な多くの知見を得た。また、液体水中に過渡的に生成する水和電子をピコ秒時間分解ラマン分光によって調べ、電子の運動が水分子の振動と強く結合していることを初めて明らかにした。この発見は、固体中の電子・格子相互作用、分子中の振電相互作用に相当する相互作用が、水和電子でも存在することを意味し、連続媒体中に補足された電子という従来の水和電子に対する概念を根底から覆した。
以上の業績はいずれも、化学反応の素過程において重要な役割を果たす短寿命種の構造とダイナミクスの詳細を、精緻な物理化学的手法によって明らかにしたものである。換言すれば、化学の基本命題である「化学反応機構の理解」に向けた確実な一歩を印したものであり、基礎科学の観点から極めて高く評価される。よって、田原氏の業績は、日本IBM科学賞を贈るにふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
