日本IBM科学賞 第19回(2005年)受賞者
受賞者紹介
川崎 雅司(かわさき まさし)
昭和36年12月15日生まれ
東北大学金属材料研究所 教授
産業技術総合研究所 強相関電子技術研究センター チーム長
物質・材料研究機構 コンビナトリアル材料科学技術プロジェクト グループリーダ
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昭和59年
東京大学工学部合成化学科卒業
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平成元年
東京大学大学院工学系研究科
化学エネルギー工学専攻博士修了(工学博士)
日本学術振興会特別研究員・日立製作所中央研究所在駐
IBMワトソン研究所博士研究員 -
平成3年
東京工業大学工業材料研究所
応用セラミックス研究所・助手 -
平成4年
新技術事業団個人研究推進事業
さきがけ研究21・研究員兼務 -
平成8年
ドイツKFAユーリッヒ中央研究所・客員研究員
日本学術振興会・未来開拓研究・プロジェクトリーダ -
平成9年
東京工業大学大学院総合理工学研究科・助教授
アトムテクノロジー研究体(JRCAT)・アドバイザー兼務 -
平成11年
無機材質研究所・質材料研究機構
コンビナトリアル材料科学技術プロジェクト(COMET)
グループリーダ兼務 -
平成13年
東北大学金属材料研究所・教授
産業技術総合研究所強相関電子技術研究センター・チーム長兼務 -
平成14年
科学研究費補助金・学術創成研究・代表者
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【専門】
薄膜電子材料科学、コンビナトリアル工学
贈賞の理由
酸化物エピタキシーの精密化と集積化による新電子機能の開拓
金属の酸化物は、多結晶性の膜が作られて、透明導電膜などとして広く使われてきたが、銅の酸化物を用いた高温超伝導体の出現を契機として、その組織や構造をより精密に制御することが重要となってきた。その結果、単結晶の良質な酸化物薄膜を精密に形成するエピタキシーの技術が著しく進展するとともに、金属酸化物をエレクトロニクス材料としてより積極的に活用する試みが活発に行われ、「酸化物エレクトロニクス」と呼ばれる新分野が開かれつつある。川崎雅司氏は、高温超伝導体酸化物の薄膜化に関する研究を契機として、酸化物エピタキシーの精密化と高度化に取り組み、原子レベルで膜厚制御が可能なレーザ分子線エピタキシーの研究を推進してきた。特に、高温超伝導体、マンガン酸化物、酸化亜鉛等の結晶成長技術を格段に進歩させるとともに、これらの酸化物の持つ新たな電子機能を発掘・発展させることに成功した。これら成果は、酸化物エレクトロニクスの基盤を築く重要な業績として高く評価される。
酸化物エピタキシーに関する成果の一つに、コンビナトリアル手法を用いた材料開発がある。川崎氏は、レーザビーム加熱による分子線エピタキシーに独自の工夫を加え、異なる組成や構造を持つ膜を、異なる基板温度や成長速度で、一枚の基板上に同時に形成し、その物性を系統的に調べることにより、所望の電子機能や性質を実現するための最適な条件を効率よく探し出すことを可能にした。この手法を駆使し、新しい強磁性酸化物であるコバルトドープチタン酸化物を合成するなど一連の酸化物材料を実現し、その機能開拓に大きな貢献をなした。特筆すべき成果は、これまで再現性のなかった酸化亜鉛結晶へのP形ドーピングを確実なものとしたことである。川崎氏は、レーザ分子線エピタキシーを用いてN型酸化亜鉛結晶の高純度化の研究を推進するとともに、P型ドーパントを最適な400℃で導入し、続いて欠陥の少ない結晶が得られる1000℃での膜の成長を行う、新しいドーピング手法を開発した。このように基板温度を交互に上下させる手法によって、世界で初めてP型の酸化亜鉛の再現性のある成長を可能とするとともに、PN接合を形成して青色発光の観測にも成功した。この成果は酸化亜鉛が窒化ガリウムに比肩する青色発光用材料として発展する可能性を持つことを示すものである。短波長発光素子の材料選択に大きな変革をもたらす重要な業績である。さらに川崎氏は、強相関エレクトロニクスの分野で重要な、マンガン酸化物においても原子スケールでの界面制御により、優れた特性を得ることにも成功している。
以上のように川崎氏は、独自の発想により酸化物エピタキシーの精密化と高度化を推進し、P形酸化亜鉛など形成が極めて困難であった一連の酸化物材料やその応用素子を実現させることにより、酸化物エレクトロニクスの開拓と展開に先導的貢献をなしており、その業績は日本IBM科学賞受賞にふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
