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第20回日本IBM科学賞(2006)

コンピューターサイエンス部門受賞者

受賞者紹介

五十嵐 淳 (いがらし あつし)
昭和48年1月16日生まれ
京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 助教授


五十嵐 淳氏の顔写真

  1. 平成 7年

    東京大学理学部卒業

  2. 平成 9年

    東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻 修士課程修了

  3. 平成 9年

    東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻 博士課程進学

  4. 平成 9年

    日本学術振興会特別研究員

  5. 平成 10年

    インディアナ大学計算機科学科・客員研究員
    ペンシルヴァニア大学計算機情報科学科・客員研究員(大学院在学中に留学~12年まで)

  6. 平成12年

    東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程修了(博士(理学))

  7. 平成 12年

    東京大学大学院総合文化研究科・助手

  8. 平成 14年

    京都大学大学院情報学研究科・講師

  9. 平成 18年

    京都大学大学院情報学研究科・助教授

  10. 専門:

    情報科学、プログラミング言語、型理論

贈賞の理由

オブジェクト指向言語のための型理論

五十嵐氏は、オブジェクト指向プログラミング言語の基礎理論を展開するための枠組みを確立するとともに、現在最も広く用いられているプログラミング言語の一つである Java 言語の設計および実装の根幹に大きな影響を与える重要な理論的成果を挙げた。

オブジェクト指向プログラミング言語は、データ抽象などの大規模ソフトウェア開発に適した機構を備えており、その重要性は今や広く認識されている。その理論的基礎についても、型理論をはじめとして、以前から多くの研究がなされてきた。しかしながら、理論研究における計算モデルと Java などの現実のプログラミング言語の設計との間には大きな乖離があり、現実の言語の設計や処理系の実装の改良に直接結び付くような理論 研究は未成熟の状態にあった。

五十嵐氏は、現実の言語 Java を出発点としてその機能の本質を残し、極力単純化した計算モデル Featherweight Java を構築するという斬新かつ独創的なアプローチをとることにより、オブジェクト指向言語の基礎理論を展開することに成功した。この計算モデル Featherweight Java は、現在、オブジェクト指向言語の理論研究の基礎として国内外の研究者に広く受け入れられている。

プログラムの再利用はソフトウェア開発に不可欠であるが、五十嵐氏は、これを実現するための仕組みである型総称性の機構を理論的に考察し、variant parametric types という新しい概念を提示した。この概念は、理論研究者のみならず Java 言語の設計者からも注目され、2004年10月にリリースされた Java 5 のワイルドカードという機能として採用され実装された。この機能は Java 言語の重要な改良として認識され、多くのライ ブラリコードがこの機能を使って書き直され、広く活用されている。

以上のように、五十嵐氏の業績は、理論的奥深さと実用的有用性とを兼ね備えた独創的なものであり、その貢献は学術的分野の研究者のみならず、 Java 言語設計者などのソフトウェアの設計・開発者からも国際的に広く認められている。これはコンピューターサイエンスにおける理論研究の一つの理想形であり、日本IBM科学賞を贈るにふさわしいものである。

※所属先・役職・年齢は2006年8月15日現在

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