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第20回日本IBM科学賞(2006)

物理部門受賞者

受賞者紹介

香取 秀俊 (かとり ひでとし)
昭和39年9月27日生まれ
東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 助教授


香取 秀俊氏の顔写真

  1. 昭和 63年

    東京大学工学部物理工学科卒業

  2. 平成 2年

    東京大学大学院工学系研究科
    物理工学専攻
    修士課程修了

  3. 平成 3年

    東京大学大学院工学系研究科
    物理工学専攻
    博士課程中途退学

  4. 平成 3年

    東京大学工学部・教務職員(のち助手)

  5. 平成 6年

    東京大学大学院 論文博士(工学)取得

  6. 平成 6年

    ドイツ,マックスプランク量子光学研究所・客員研究員

  7. 平成 9年

    科学技術振興事業団
    五神協同励起プロジェクト・基礎グループリーダー

  8. 平成 11年

    東京大学工学部附属総合試験所
    協調工学部門・助教授

  9. 平成 14年

    科学技術振興事業団・さきがけ研究・研究員兼務

  10. 平成 16年

    東京大学大学院工学系研究科
    物理工学専攻・助教授

  11. 平成 17年

    科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業・研究代表者

  12. 専門:

    量子エレクトロニクス

贈賞の理由

超高精度原子時計を実現する「光格子時計」の開発

原子スペクトル計測の極限的精度追求は、量子力学の誕生以来、現代物理学の構築と発展に大きく貢献してきた。また、この追求の成果として実現される高精度の原子時計は、GPSや超高速大容量通信ネットワークのタイミング制御技術など、現代生活を支える技術の基盤を与えるものである。香取秀俊氏は独創的な発想と高度の実験技術を駆使した研究により、従来の手法を大きく凌駕する新しい原子時計のスキーム「光格子時計」の手法を創案・実証し、全世界の標準研究所を巻き込む新しい研究の流れを作り出した。

原子スペクトルの高精度測定を可能にするには、極低温への冷却による運動の抑制、トラップに用いる外場の影響の除去、多数の原子からの信号の同時測定によるS/N比の向上などの諸条件を実現しなければならない。香取氏は、これらすべての側面を同時に満たす方法を開発・確立した。
香取氏はまず、遷移強度の弱い異重項間遷移を用いて、ストロンチウム原子を従来に比べて3桁低いサブマイクロケルビン領域まで冷却することに成功した。さらに、原子スペクトルへの外場の影響に関して、中性ストロンチウム原子において、遷移前後の二つの準位への外場による摂動の影響がちょうど等しく、これらの準位の間の遷移スペクトルへの影響が相殺するような光トラップが構成可能であることを示した。こうして、レーザーによりトラップされた中性原子において、自由空間に静止した孤立原子と同じスペクトルが測定可能になった。

光格子時計とは、上記の方法を用いて多数の原子を格子状にトラップし、自由空間の孤立原子に極めて近い状態で遷移スペクトルを測定する方法である。すでにこの手法の有効性は広く認知され、これまで標準研究で世界を強力に牽引してきたすべての主要な研究所が、この手法を踏襲した原子時計構築の実験を進めている。現在、香取氏はこの手法を用いて、原子時計の精度を現在の15桁から18桁へ引き上げる研究に取り組んでいる。これが実現すれば、微細構造定数の経時変化の検証や時間標準の改訂など、物理学全体に影響を与える大きな成果につながると期待される。

このように香取氏の業績は、独創性、基礎応用両面での波及効果、他の研究グループに与えたインパクトどれをとっても原子物理学、量子エレクトロニクス、極限物理計測の分野でここ10数年間の成果として世界的なレベルで傑出しており、日本IBM科学賞受賞に相応しいものである。

※所属先・役職・年齢は2006年8月15日現在

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