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第21回日本IBM科学賞 化学部門

受賞者紹介

石原 一彰 (いしはら かずあき)

昭和38年4月26日生まれ
名古屋大学 大学院工学研究科 化学・生物工学専攻 教授
石原 一彰氏
昭和 61年 名古屋大学工学部応用化学科卒業
昭和 63年 名古屋大学大学院工学研究科
応用化学専攻
博士前期課程修了
昭和 63年 米国カリフォルニア大学バークレー校短期研究留学(名古屋大学博士後期課 程在学中)
平成 3年 名古屋大学大学院工学研究科
応用化学専攻博士後期課程修了
工学博士
平成 3年 米国ハーバード大学
博士研究員
平成 4年 名古屋大学工学部物質化学科
助手
平成 9年 名古屋大学難処理人工物研究センター
助教授
平成 14年 名古屋大学大学院工学研究科
生物機能工学専攻
教授
平成 16年 名古屋大学大学院工学研究科
化学・生物工学専攻
教授
専門: 有機合成化学、触媒化学、グリーンケミストリー

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贈賞の理由

酸・塩基複合型高機能触媒の設計と低環境負荷型精密有機合成反応の開拓

地球環境問題が深刻化する中、社会がこれまでと同様に持続的に発展していくには、物質 を環境負荷の小さなプロセスで製造するしくみを開拓しなければならない。すなわち、選 択性や効率が破格に高く、廃棄物を出さず、かつ安全な物質変換反応の開拓が急務である。 反応開発の鍵は、高度な選択性と高い回転能(触媒一分子から得られる目的物の分子数) を有する優れた触媒の設計にかかっている。

石原氏は触媒の設計指針として酵素の活性部位の構造的特徴を手本にした。酵素は反応基 質を取り込むポケットの近傍に空間特異的に配置された複数の酸性・塩基性官能基を有し、 それらの協同作用により穏和な条件下で高効率・高選択的な物質変換反応を実現している。 石原氏は酵素よりもはるかに小さく単純な人工分子を足場に「強酸と弱酸」あるいは「酸 と塩基」を空間特異的に配置し、それらの協同作用を巧みに利用して酵素に匹敵あるいは それらを凌駕する触媒機能を発現させることに成功した。

設計された触媒群には、水素結合、親疎水相互作用、双極子相互作用などの「分子間には たらく力」を高度に制御するための工夫が施されており、反応基質を触媒活性部位近傍に 取り込み、それらを立体的に認識することができる。一連の新触媒群は、エステル結合の 形成など酵素が得意とする反応だけでなく、炭素と炭素の間の結合形成反応や複数の環状 構造の構築など医農薬の製造に一般的に利用可能な反応にも有効であり、所望の物質を高 い選択性と高い反応収率を持って与える。また、人の右手、左手に相当する光学活性な物 質を立体選択的につくりわけることもできる。現行の優れた物質変換触媒の多くは、触媒 活性発現のために金属イオンを含んでいる。これに対して、金属イオンを含まない触媒の 設計指針は、環境負荷の小さな物質製造プロセスの開拓に大きく貢献することが期待され ており、石原氏の研究成果には世界が注目している。

以上のように、石原氏は酵素の作用機作を手本に、「酸と塩基の空間特異的な配置」と「反 応基質の取り込み機能の付加」という単純明快な触媒設計戦略をもとに、物質合成化学の 研究分野に新機軸を打ち立てた。一連の研究成果は基礎科学の発展に大きく貢献するもの であり、日本IBM科学賞を贈るにふさわしいものである。


※所属先・役職・年齢は2007年8月15日現在
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