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第21回日本IBM科学賞 物理部門

受賞者紹介

佐々木 裕次 (ささき ゆうじ)

昭和37年6月3日生まれ
財団法人 高輝度光科学研究センター 主幹研究員
佐々木 裕次氏
昭和 61年 東北大学工学部卒業
昭和 63年 東北大学大学院工学研究科
修士課程修了
平成 3年 東北大学大学院工学研究科
博士課程修了、工学博士取得
平成 3年 株式会社 日立製作所 基礎研究所 研究員
平成 10年 科学技術振興事業団 個人研究推進事業 さきがけ研究21
「素過程と連携」 領域研究員(兼務)
平成 12年 財団法人 高輝度光科学研究センター 放射光研究所 実験部門
副主幹研究員
平成 13年 大阪大学 蛋白質研究所 蛋白質機能評価研究部門
客員教授(兼務)
平成 13年 科学技術振興事業団 戦略的基礎研究推進事業
「たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム」
領域研究代表者(兼務)
平成 18年 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業
「生命現象の解明と応用に資する新しい計測分析基盤技術」
領域研究代表者(兼務)
専門: 生物物理学、分析科学、放射光科学

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贈賞の理由

X線1分子追跡法の考案とその融合領域への応用

X線計測法は、従来、結晶や多分子からの、静的で構造を平均化した散乱情報を抽出するた めの有力なツールとして用いられてきた。しかし、生体高分子については、機能発現に1分子の集合体が関与することから、その解明には1分子の動的な挙動の情報が重要になる。 このため、通常はX線計測よりも可視光蛍光を利用した方法が使われるが、その精度は数 ナノメートル(10-9m)であり、10ナノメートル寸法の生体分子の情報を抽出するには限界 があった。佐々木氏は、従来のX線計測の常識から脱却し、1分子の内部運動を時間的には ミリ秒、空間的にはピコメートル(10-12m)という、驚異的な精度で計測できるX線1分子 追跡法を考案し、これを用いて、DNA分子の内部揺らぎ、機能性分子の分子内運動の計測に 成功した。これらの業績は、構造計測技術の開発、生物物理学の研究のいずれにおいても 革新的な進展をもたらした。

佐々木氏のX線1分子追跡法の原理は、単純ではあるが極めて巧みなもので、具体的には、 数10ナノメートル程度の微結晶を分子にその運動機能を損なわないように取り付け、分子 の動きに連動する微結晶に照射した強力なX線のラウエ回折斑点を時分割追跡する。佐々 木氏は、この手法を長さ6ナノメートルのDNA1分子に適用して水溶液中のブラウン運動を 追跡し、ピコメートルの精度で分子内揺らぎの時間変化を捉えることに成功した。また、 光を吸収してプロトンポンプとして機能する膜タンパク質の動的挙動を追跡し、数マイク ロ秒の光照射で分子が0.1ナノメートル程度の構造変化を起こす様子を見事に捉えた。こ れにより、難しいとされていた「機能している分子の構造変化計測(in-vivo計測)」に新 しい道が開かれた。

佐々木氏はまた、同手法をX線放射圧の計測に応用し、アクチン繊維やタンパク質分子な どの軟らかい分子のブラウン運動にアトニュートン(10-18N)という超微弱なX線放射圧が 作用していることを発見した。これは、微弱な原子間力の働きを原理とするAFM でピコニ ュートン(10-12N)の力が有用になるのと比べると、その6桁も小さい力を計測したことに なる。このような力場を制御できれば、タンパク質分子や高分子等の新しい表面構造解析 法、ソフトに分子を捕まえる技術、など様々な応用の道が開けると期待される。 以上のように、佐々木氏は、独創的なアイデアと技術開発によって、X線による生体分子計 測に大きなブレークスルーをもたらした。その成果は、広域材料科学への応用や新原理の 計測技術の開発にも大きなインパクトを与えている。佐々木氏のこれらの業績は、日本IBM科学賞に相応しいと認められる。


※所属先・役職・年齢は2007年8月15日現在
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