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第21回日本IBM科学賞エレクトロニクス部門

受賞者紹介

湯浅 新治 (ゆあさ しんじ)
昭和43年11月29日生まれ
産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門 研究グループ長


湯浅 新治氏の顔写真

  1. 平成 3年

    慶応義塾大学理工学部物理学科卒業

  2. 平成 5年

    慶応義塾大学大学院理工学研究科
    修士課程物理学専攻修了

  3. 平成 8年 3月

    慶応義塾大学大学院理工学研究科
    博士課程物理学専攻修了
    博士(理学)

  4. 平成 8年

    工業技術院 電子技術総合研究所
    研究官

  5. 平成 13年

    産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門
    主任研究員

  6. 平成 16年

    産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門
    研究グループ長

  7. 平成 14~19年

    学技術振興事業団 さきがけ研究員を兼任

  8. 平成 17年~

    筑波大学大学院数理物質科学研究科
    連携大学院助教授を兼任

  9. 専門:

    物性物理学、磁気工学、スピントロニクス

贈賞の理由

トンネル磁気抵抗効果とその応用に関する研究

トンネル磁気抵抗効果とは、二つの強磁性体電極と薄いトンネル絶縁膜からなる素子に おいて磁場を加えると、強磁性体の相対的磁化方向が変化し、これにともなって素子抵抗 が変化する現象である。この現象は1975年に低温で見出されたが、1995年には、 金属多層膜の巨大磁気抵抗効果を上回る磁気抵抗比が、室温で達成されたため、大きな関 心を集めることとなった。この効果を広く利用するには、磁場を加えることによる抵抗変 化率を一段と高めることが不可欠であった。2001年に、鉄やコバルトなどの単結晶強 磁性体電極の間に、単結晶酸化マグネシウムの絶縁膜を挟みこんだ素子では、電子状態の 対称性がトンネル現象に支配的に寄与するため、特定の面方向で極めて大きな磁気抵抗比 が得られることが、理論的に指摘された。これにより、世界各所で酸化マグネシウムを障 壁とする単結晶磁気トンネル接合の研究が活発に行われることになった。

湯浅新治氏は、単結晶強磁性電極を有する磁気トンネル接合の可能性に早くから着目し 研究に取り組み、まず2000年には、アモルファス酸化アルミニウム絶縁膜を用いた磁 気トンネル接合の磁気抵抗比が、単結晶電極の面方位に大きく依存することを見出した。 これは、アモルファス膜中をトンネルする電子は、その波数が乱雑化されるため電極の状 態密度のみで磁気抵抗比が決定されるとする、従来のモデルが不十分であることを明確に 示す結果である。さらに氏は、単結晶の強磁性体/非磁性体金属構造を形成することによ り、非磁性体金属の膜厚に対して磁気抵抗比が振動することを示し、金属中のスピン偏極 した共鳴準位の形成をトンネル磁気抵抗効果により初めて観測している。

氏はこれらの研究を基盤として、鉄/酸化マグネシウム/鉄の単結晶磁気トンネル接合 の研究に取り組み、2004年に、従来のアモルファス絶縁膜を用いた素子よりも高い磁 気抵抗比が、単結晶磁気トンネル接合で得られることを初めて実験的に示した。その後、 湯浅氏を含む内外の研究者による一連の研究が急進展し、この系における極めて高い磁気 抵抗比は技術的にも確立された。この結果現在では、ハードディスクヘッドのセンサーとし て実用化が始まっており、将来は磁気ランダムアクセスメモリーにも使われると期待されて いる。湯浅氏の成果は、絶縁膜のバンド構造を反映したトンネル現象を、磁性金属と絶縁 体の組み合わせで実験的に実現した点において、基礎学術的にも意義深い。

以上のように湯浅新治氏のトンネル磁気抵抗効果に関する研究は、応用上高いインパク トを有する成果を挙げたばかりでなく、基礎学術的にも意義深く、本賞を贈るにふさわし いものである。

※所属先・役職・年齢は2007年8月15日現在

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