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激動する航空業界における事業革新の成功に向けて

旅客・空港視点

厳しい環境を生き抜くためのビジネスモデルとは?

航空業界各社では、長年にわたる利益率の低迷や格安航空会社の参入、燃油価格の高騰などにより、利益構造の見直しやビジネスモデルの革新が必要とされています。一方で、押し寄せるグローバル化の波への対応から航空運賃の自由化や空港のオープン化が促進され、日本の航空業界は、いままでにない激動の時代を迎えています。ここでは、台頭する格安航空会社の戦略を踏まえ、厳しい環境を生き抜くためのビジネスモデルと、その基盤作りについて、IBMのグローバル事例とともにご説明します。


航空業界の動向

この40年間の米国航空会社の利益率を調べてみると、ボーイング747(ジャンボジェット)就航を機に大衆化が進んだことで大きく下がり、上がり下がりはあるものの、その後も全体としては緩やかに下がってきているのがわかります。


図1. 過去40年間の米国航空会社における利益率の変動状況

図1

しかし現在はというと、LCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)のおかげで利益率は回復している状況にあります。2006年の代表的なLCC各社の利益率は、次のようになっています。


  • ライアンエアー(アイルランド) : 21.1%
  • エアアジア(マレーシア) : 12.8%
  • サウスウエスト(アメリカ) : 10.3%
  • ヴァージンブルー(オーストラリア) : 8.8%
  • イージージェット(イギリス) : 7.3%

これらLCCの特徴は、利益率の高いビジネスモデルを採用していることにあります。たとえば、1995年に就航した代表的なLCCであるイギリスのイージージェットの資料によると、同社には次のような特徴があるとされています。


  1. 新品の単一機材で運航
  2. 混雑の少ない空港を利用
  3. 直販のみ
  4. 片道だけの料金設定

新品ですから整備コストが少なく、単一機材ということで整備部品の種類も少なくてすみます。さらにパイロットの資格も1つでいいことから、ペアリングやスケジューリングが楽になり、運用効率が高くなります(1. 新品の単一機材で運航)。また、着陸してから次の離陸までの時間(ターンアラウンドタイム)を短くすることができ、機材の稼働率を高くする、空港の使用料を抑える、上空での待機時間を短くすることで燃料費を抑える、などの効果をもたらします(2. 混雑の少ない空港を利用)。

現在イージージェットのチケットの90%以上がWebサイトで販売されています。これにより、販売手数料がかからない、という効果があります(3. 直販のみ)。また、料金はきめ細かく設定されており、路線だけでなく、チケット予約がフライトに近くなるほど高くなるような仕組みを導入しています(4. 片道だけの料金設定)。

これらの特徴は、LCC各社にほぼ共通です。さらに、ボーイング737-300型で比較すると従来型の大手航空会社では110席程度の座席数に対しイージージェットでは150席と、そこでも利益率に大きな差が生まれます。

このLCC台頭の流れは、規制緩和の早かったアメリカから進み、ヨーロッパ、アジアへと広がっています。2003年と2006年でLCCのマーケットシェアを調べると、次のようになっています。


  • 北米 : 25% → 45%
  • ヨーロッパ : 11% → 35%
  • アジア : 2% → 11%

LCCが台頭した要因には、規制緩和ともう1つ、インターネットの普及が挙げられます。アジアでも規制緩和とインターネットの普及が進めば、現在のヨーロッパ、アメリカの数字を追いかけるような広がりを見せるに違いありません。日本では現在、羽田空港の再拡張事業が行われており、2010年10月には発着容量が現在の1.4倍になる予定です。日本でも、これをきっかけにLCCがシェアを伸ばすだろうと予想されています。

では、利用者の立場で考えた場合、LCCの台頭にはどういう意味があるのでしょうか。そこには、利用者の行動パターンの二極化という背景が重要な意味を持っています。ニーズは、従来型の平均的なサービスに平均的な価格設定から、安価なもの、高価だが優れたサービスの二極化されたサービスに移っています。


図2. 利用者の行動パターンの二極化

図2

さらに、この問題を複雑にしているのは、同じひとりの人であっても、たとえば単独での帰省には格安のチケットを求めるのに、家族での海外旅行にはビジネスクラスを使うといった二極化された両方の行動を取る場合があるということです。


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二極化に対応したビジネスモデルの考察

航空業界における、二極化するニーズに対応するビジネスモデルについて考えてみると、至れり尽くせりのサービスで価格以上の価値を提供するブランド重視モデル(以下、Bモデル)、シンプルサービスで究極的にはサービスしない低コストモデル(以下、Lモデル)、その中間に位置する成長重視モデル(以下、Gモデル)の3つに分けられます。


図3. お客様嗜好からのビジネスモデル考察

図3

この3つのモデルを、<路線/サービス開発>、<CRM顧客管理>、<チャネル開発>、<お客様サービス>、<運航・整備・空港オペレーション>というコア・ビジネスに分けて、そのケーパビリティを考えます。たとえばBモデルでは、会社の重役クラスが重要な顧客となりますから、特別法人契約のようなチャネルの開発が必要になります。


図4. 航空業界におけるコア・ビジネス・ケーパビリティ

図4
図4. 航空業界におけるコア・ビジネス・ケーパビリティを拡大する

そして、これらケーパビリティを確保するための仕組み(共通基盤)には、次のようなものがあると考えられます。

  1. セルフサービス・機械化
  2. プロセス・管理の効率化
  3. 複合連携オペレーションの自動化
  4. CRM戦略実現の仕組み
  5. 戦略立案の仕組み

1 は主にLモデルの<CRM顧客管理>、<チャネル開発>、<お客様サービス>と<運航・整備・空港オペレーション>に、2 と3 はBモデルとGモデルの<お客様サービス>と<運航・整備・空港オペレーション>に必要な仕組みです。4 は主にBモデルとGモデルの<CRM顧客管理>と<チャネル開発>に、5 は全モデルの<路線/サービス開発>に必要となります。


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IBMのグローバル事例紹介

ここからは、先ほどの5つの仕組み(共通基盤)に分けて、IBMの事例をご紹介します。

  1. 「セルフサービス・機械化」についてです。
    セルフサービス・機械化を中心とした空港オペレーションの事例としては、CUSS(Common Use Self-Service)キオスク:共用自動チェックイン機や生体認証などがすでに運用されています。
  2. 「プロセス・管理の効率化」では、機材の故障などフライト直前の状況変化に最適化エンジンによって対応したり、その変更を関連するスタッフの携帯電話やPDAに送信したりするソリューションが稼働しています。
  3. 「複合連携オペレーションの自動化」の例として、いわゆる手ぶらサービスを考えてみましょう。自宅を出る前に、宅配業者に荷物を渡しておくと、旅行先のホテルでその荷物を受け取ることができるようなサービスです。これには、各ポイントでRFIDタグを読み込み、履歴管理を行い情報提供するような仕組みが有効となるでしょう。
  4. 「CRM戦略実現の仕組み」としては、IBMの戦略的アライアンスパートナーであるインフォア社のCRMパッケージソリューションをご紹介します。このソリューションを導入することで、旅行代理店やWebサイト、コールセンター、Eメールなど、ユーザーがどのチャネルにアクセスしても首尾一貫した質の高いサービスが提供できるようになります。すでに、アメリカン航空、スイス国際航空などに導入実績があります。
  5. 「戦略立案の仕組み」も、同じく戦略的アライアンスパートナーであるセイバー社のパッケージ「AirFlite」をご紹介します。これは、多くの航空会社で使用され業界をリードするソリューションで、統合された戦略的な計画およびフライトスケジュールの作成を支援するものです。

LCC台頭の流れは、必ずアジア、そして日本にも広がります。この、激動する航空業界で事業革新を成功させるためには、Bモデル、Gモデル、Lモデルというビジネスモデルの選択と、それにともなうケーパビリティの確保が重要となるでしょう。IBMのソリューションは、そのための仕組み作り、共通基盤作りを支援いたします。


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 筆者紹介
向山 一郎の顔写真 日本アイ・ビー・エム株式会社
流通サービス事業部
航空運輸旅行インダストリーソリューション
ビジネス・ソリューション・プロフェッショナル
向山 一郎




本記事中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。

IBM、IBMロゴは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。

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