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流通再編成とその課題

付加価値化と生産性の向上

流通再編成の中で生き延びる企業の条件

日本の流通業はグローバル化と消費需要の変化などにより急速に再編成が進むと思われます。こうした再編成の中で生き延びるためには、付加価値の拡大と生産性の向上が大きな課題となります。ここでは、2007年11月28日に行われました『IBM 流通フォール・フォーラム 2007』の基調講演の内容をご紹介し、流通再編成がどのような方向に進み、どのような企業が勝ち、そこでどのような標準化の取り込みが有効になるのかを考えます。


チェーンオペレーションとは

チェーンオペレーションとは、卸売業と小売業の合体です。大手の流通業がどう再編成されていくのかを考える場合には、小売業者が、卸売り機能をどういう形で取り込み、強化していくのかということが大きなポイントとなります。

卸と小売を別々にとらえる向きもありますが、世界の流れは、卸と小売のドッキングだと思います。たとえば、日本のコンビニエンスストア業態の場合、本部が卸機能を、店舗が小売機能を持っており、全体としては卸と小売が合体した形態だともいえるでしょう。

日本では一般に、卸と小売のドッキングが、あまりうまくいっていないのではないかと思います。実は海外のメガリテーラーの中には、卸の部分で利益を出している企業もあります。メガリテーラーの持っているロジスティクス機能を利用して、そこから商品を購入している会社もけっこうあるわけです。同様に、会員制ホールセールクラブから仕入れている会社もあります。海外の大手小売業は、それだけしっかりした卸機能を持っているのです。

現在の日本の小売業は、卸機能を自社内に持つ企業もありますが、逆に卸業がチェーン対応してきていることが、日本の特徴として注目すべきです。たとえば、日雑をみるとほとんどの商品をラインアップする卸が出てきています。食料品を見てもそうです。大手卸業がチェーン対応をしてきていて、小売業はこれを利用しないわけにはいきません。今後、流通業は、卸と小売が連動したシステムを構築し、戦略を練ることが重要になっていくのです。


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流通業に再編が求められる背景とは

新流通産業研究会で気がついたことをいくつかお話ししましょう。

ひとつは、日本の流通業は、一部ではムダな競争をしているのではないかということです。たとえば、夜間営業の問題です。夜間営業が利益に貢献している小売業というのは比較的少ないのですが、他社がやると自分のところも、という具合に、コストや戦略を無視して競争してしまう傾向があります。


IBM 流通フォール・フォーラム 2007 写真

上原教授 講演の様子

もうひとつ、流通業は、将来、サービスプロバイダになっていくだろうということです。一種のサプライチェーンと考えてよいと思いますが、つまり、商品を調達して、これを消費者に届けるまでのあらゆるサービスを効率化し、しかも質を高く届ける、その意味では、流通業はサービスプロバイダになるのではないかということです。これからの流通業で非常に重要なのは、高付加価値化で、利潤を上げるシステムを持つことだと思います。

まちづくり三法の改正で、2007年の11月30日から郊外への出店が規制されます。その本当の目的は、地球環境保全ですから、規制は仕方のないものですし、世界的な流れでもあります。ここで重要になるのは、ダウンタウンの店舗をどういう形で展開していくのかということです。郊外立地とダウンタウン立地とでは、お店のコンセプトが違います。郊外型店舗の特徴は、坪当たりの売上は低くても、従業員ひとり当たりの売上を上げていくことです。逆に、ダウンタウン型店舗では、人件費効率を下げてでも坪効率を上げる必要が出てきます。


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日本の流通業に関わる論点

日本の流通業について考えるとき、話題にすべき点のひとつが生産性はなぜ低いのかということです。これについては、日本では、『システム化、標準化すべきところ』と『ひとが対応すべきところ』の切り分けがうまくいっていないように思います。

日本マーケットの規模限界について述べておきましょう。日本のマーケットは現在人口1億2千万人から、減少しつつあります。今年の7月でアメリカの人口は3億を超えさらに増加しています。アメリカの人口構造と日本の人口構造はまったく違うわけです。ですから、アメリカの単なるモノマネでは、うまくいかないことが多いでしょう。

それから、日本の立地限界も明らかになりつつあります。今後、郊外立地が規制される一方で、人口の減少が進みます。そうすると、過疎化が始まります。過疎化とは、社会的活動が不可能になるほど人口が減ることです。その意味から、今後は、日本の立地限界を考えた戦略を展開する必要があるでしょう。


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日本から東アジアへ

日本から東アジアへ、マーケットは広がっていきます。中国の消費需要はすでに日本を超えていて、今後もその差は広がっていくでしょう。中国は、北京、上海などの巨大都市を除くと、あとは小さな市場だと思われているかもしれませんが、それは違います。6百万人、1千万人という規模の都市が、たくさんあるのです。そのあたりを見据えた戦略が重要かもしれません。それから今後は、インドも重要なマーケットになると考えています。

中国では、ウォルマートなどグローバルリテーラーが進出して大きな地域経済効果を上げています。小売よりも、卸機能の効果が大きいようです。彼らは一度に20店舗ぐらい出店できます。それに対して、日本の小売業は、まず上海に店舗を作り、成功したら2号店を北京に出店するという、百貨店方式の展開です。これは、卸売機能を作るシステムが弱いからです。彼らとの差は開いてしまうような気がします。


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国際チェーンオペレーションの台頭

日本のチェーンオペレーションの特徴として、グローバル化しているのは調達だけだという点が挙げられます。国際チェーンオペレーションで重要なのは、出店と調達の相乗効果だと指摘しておきましょう。

今後求められるのは、国際チェーンオペレーションに対応するために、卸機能の充実を指向し、グローバル戦略として標準化を行うことでしょう。プロセスを標準化して、結果を多様化することで高付加価値のサービスを提供できるようになるのです。いまは、日本の流通は、物流で差別化しようとしています。他社が1日に3便なら、自分のところも3便にする、といったムダな競争も起きています。いっそのこと、物流は共有してしまったほうがよいのかもしれません。


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流通再編はどう進むか

日本では、小売と卸が分断されていることから、今後は卸の寡占化も進むと思われます。たとえば、日雑や食料品では卸はすでにかなり寡占化しています。

一方、物販とレストランの融合、コンビニエンスストアとスーパーの類似化、ドラッグストアの食品取り扱いなど、業態の融合や新業態の創出も進むでしょう。一般に、消費者が情報を集めるようになるとサービスと物販は一体化してきます。つまり、レストランでおいしいメニューがあれば、そのレシピにあった食材も、そのレストランが扱うことを望まれるようになるわけです。これは、背後にあるシステムをどう充実するかで実現可能です。業態の融合と新業態がでてくるようなシステムが、すでに世界では作り込まれています。

需要の質の変化への適応も、流通再編の方向性を左右するでしょう。需要の変化は、大きく3つが挙げられます。ファミリーユースからパーソナルユースへ、男女協働社会、商品の価格と質のパフォーマンスを求めるPQハンターと呼ばれる消費者の出現の3つです。

最後に、ネット店舗についても考えておきましょう。ネット店舗のよいところは3つあります。ひとつは、豊富な品揃えを実現できること、もうひとつが、いつでも開いていて買い忘れをしてもすぐ対応できること、もうひとつが、お店を変化させることが容易にできることです。実店舗では、品揃えやレイアウト変更はある程度可能ですが、内装を変えるようなことは、容易にはできません。しかし、ネット店舗なら、コストもあまりかけずに、一挙に変えるようなことが可能です。こういったネット店舗が流通再編の流れに関わる可能性も否定できません。


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 筆者紹介
上原 征彦 氏の顔写真 明治大学大学院
グローバル・ビジネス研究科 教授
上原 征彦 氏

1968年、日本勧業銀行(現みずほ銀行)入行。70年流通経済研究所研究員、75年同主任研究員。79年明治学院大学経済学部専任講師、80年同教授。87年ペンシルバニア大学客員教授。04年より現職。食料・農業・農村審議会、会長(07年7月4日まで)、産業構造審議会・流通部会長、サービス部会長。流通論およびマーケティング戦略論をおもな研究領域とする。おもな著書に『手にとるように流通のことがわかる本』(かんき出版、04年1月)、『マーケティング戦略論』(有斐閣、00年7月)などがある。


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