
JALでは、従来からシステムの信頼性を高く保つ取り組みをしていましたが、部門ごとにシステムの変更手順や管理手続きが異なっており、情報も部門間で共有されていないという課題がありました。また各システムは、それぞれのシステム管理者でないと障害復旧ができないことも課題でした。システムの変更は、システム負荷が比較的軽い深夜に行うため、変更に起因するシステム停止も深夜に多く発生します。そのため、障害発生時には、障害復旧のためにシステム管理者に連絡をとり、必要な作業の確認を行ったり、対応のための緊急出社を要請することが難しい状況になることがあります。
さらに、自社システムの構成や運用状況、システム変更により発生が想定される影響などのシステムの状態が十分に把握できていないという課題もありました。こういった情報が手に入れば、システム障害発生時の復旧にすばやく対処できるようになるうえ、継続的な改善が可能となり障害自体の発生を回避できることが期待できます。
そこでJALが注目したのが、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)でした。ITILとは、1980年後半に英国の政府機関がIT運用における実際の知識・ノウハウを作成・文書化し、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを集めたフレームワークです。特定のサプライヤーに依存しないオープンな枠組みの中でベストプラクティスが体系化されていることが特徴です。運用プロセス改革の具体的改善策としてITILのフレームワークを適用し、問題管理、変更管理、構成管理に役立て、品質の向上とともにシステム運用状況を可視化しようという取り組みです。
ITIL導入の対象となったのは、さまざまな部門が所有あるいは共有するサーバー、合計約1,500台と、かなりの規模でした。ITIL導入プロジェクトは、株式会社JALインフォテックとIBM グローバル・テクノロジー・サービスが中心となって進められ、まず"サービスデスク・インシデント"、"問題・変更・リリース"、"構成管理"の3つに大別して計画を立案するところから開始されました。その後、各領域についてプロセスの構築とプロセス改善を実行する事で、結果としてシステム障害の発生回数を減らし、停止時間を全体として大幅に削減することができたのです。ITIL導入初年度のシステムの障害回数はITIL導入以前と比較して、58%減、サービスの中断は39%減、停止時間は80%減となり、その後も障害発生率は低下を続けています。

図1. JALにおけるITIL適用の目的



当プロジェクトの一環として、あわせてシステム障害発生時に、発生状況、影響度などの最新情報を、CIO(最高情報責任者)を含む、社内200人あまりのキーパーソンの携帯電話にメールが送られる仕組みを導入しました。その結果、常に関係者がシステム障害の最新の状況を把握できるようになりました。
ITIL導入によって得られる情報は、IT関連部門だけでなく、JALの事業運営全体にとっても重要な意味を持っています。システムの運用状況が詳細にわかるようになったため、システムがいかに重要であるかを経営陣が正しく把握し、統制できるようになったのも、今回のプロジェクトの大きな成果です。
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