本文へジャンプ

業界別ソリューション > 流通 > ソリューション(最新業界動向) > 

日本航空におけるITシステムの運用プロセス改革

ITILの導入でシステムの安定性と品質の向上を実現

株式会社 日本航空(以下、JAL)は、グループ全体の売上高が世界第4位を誇る、世界屈指の航空会社です。同社では、近年の旅客数増大と競争激化という業界の環境変化に対応し市場での競争力を強化するため、システム障害によるフライトディレイ(運航遅延)やそれにともなう売り上げの損失を最小限に抑える必要がありました。そこで導入されたのが、ITIL®です。IT運用管理のベストプラクティス集であるITILを適用することで、システム運用の可用性改善、リスク低減、サービス品質向上に大きな効果を得ることができました。




 筆者紹介
黒沢 昌幸 氏の顔写真 株式会社 日本航空
ITサービス企画室 部長
黒沢 昌幸 氏



ITシステムに支えられる航空業界

JALに限らず現在の航空業界は、航空チケットの予約や発券から運航計画や航空機整備にいたるまで、あらゆる側面をITシステムに支えられています。近年ではインターネットの利用の拡大と航空需要の増大が共に著しく、その状況を反映して、すでにJALの航空チケット売上の半分程度をインターネット経由の販売が占めています。航空業界では電子化の歴史が長く、予約システムも発券システムも完全に電子化されており、現在ではフライトプランの作成や乗務員の搭乗スケジュール管理、機体整備など、広く業務の全般にわたってITシステムが支えています。

しかしこれは、逆の見方をするとITシステムへの依存度が高い事を意味しています。JALの試算では、システムが1時間停止したときの損失は数億円にものぼります。システム停止中は航空チケットが販売できないという損失が発生するのはもちろんのこと、運航は各部門の業務が密接に連携しているため、ひとつの部門のシステム停止は運航網に広く影響してしまいます。

システム停止にはいたらない軽微なシステム障害の場合でも、一部の業務遅延が交通渋滞のようにほかの部門に波及してしまうこともあり、その結果、フライトディレイという形で、お客様に直接ご迷惑をおかけしてしまう事態に発展してしまうこともあります。フライトディレイが発生してしまうと、損失ばかりではなく、お客様からの信頼を失うことにもなりかねません。わずか15分間システムが停止しただけでも大きなニュースとなってしまう航空業界において、システムの運用管理はきわめて重要な課題といっていいでしょう。


上に戻る


ITIL導入で運用プロセス改革と可視化を実現

JALでは、従来からシステムの信頼性を高く保つ取り組みをしていましたが、部門ごとにシステムの変更手順や管理手続きが異なっており、情報も部門間で共有されていないという課題がありました。また各システムは、それぞれのシステム管理者でないと障害復旧ができないことも課題でした。システムの変更は、システム負荷が比較的軽い深夜に行うため、変更に起因するシステム停止も深夜に多く発生します。そのため、障害発生時には、障害復旧のためにシステム管理者に連絡をとり、必要な作業の確認を行ったり、対応のための緊急出社を要請することが難しい状況になることがあります。

さらに、自社システムの構成や運用状況、システム変更により発生が想定される影響などのシステムの状態が十分に把握できていないという課題もありました。こういった情報が手に入れば、システム障害発生時の復旧にすばやく対処できるようになるうえ、継続的な改善が可能となり障害自体の発生を回避できることが期待できます。

そこでJALが注目したのが、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)でした。ITILとは、1980年後半に英国の政府機関がIT運用における実際の知識・ノウハウを作成・文書化し、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを集めたフレームワークです。特定のサプライヤーに依存しないオープンな枠組みの中でベストプラクティスが体系化されていることが特徴です。運用プロセス改革の具体的改善策としてITILのフレームワークを適用し、問題管理、変更管理、構成管理に役立て、品質の向上とともにシステム運用状況を可視化しようという取り組みです。

ITIL導入の対象となったのは、さまざまな部門が所有あるいは共有するサーバー、合計約1,500台と、かなりの規模でした。ITIL導入プロジェクトは、株式会社JALインフォテックとIBM グローバル・テクノロジー・サービスが中心となって進められ、まず"サービスデスク・インシデント"、"問題・変更・リリース"、"構成管理"の3つに大別して計画を立案するところから開始されました。その後、各領域についてプロセスの構築とプロセス改善を実行する事で、結果としてシステム障害の発生回数を減らし、停止時間を全体として大幅に削減することができたのです。ITIL導入初年度のシステムの障害回数はITIL導入以前と比較して、58%減、サービスの中断は39%減、停止時間は80%減となり、その後も障害発生率は低下を続けています。


図1. JALにおけるITIL適用の目的

図1

当プロジェクトの一環として、あわせてシステム障害発生時に、発生状況、影響度などの最新情報を、CIO(最高情報責任者)を含む、社内200人あまりのキーパーソンの携帯電話にメールが送られる仕組みを導入しました。その結果、常に関係者がシステム障害の最新の状況を把握できるようになりました。

ITIL導入によって得られる情報は、IT関連部門だけでなく、JALの事業運営全体にとっても重要な意味を持っています。システムの運用状況が詳細にわかるようになったため、システムがいかに重要であるかを経営陣が正しく把握し、統制できるようになったのも、今回のプロジェクトの大きな成果です。


上に戻る


システムの信頼性向上により定時運航を推進

JALでは、先進技術を率先して活用し、システムの可用性改善を積極的に進め、業務の改善、リスク低減、サービス品質レベルの向上を推進してきました。JALにとってシステムの安定稼働は、航空機を予定どおり安全に目的地まで運航することと同等の重要性を持っています。今回のITIL導入により、システムの停止回数もその障害レベルも大幅に引き下げることに成功しました。これはコスト削減効果だけでなく、リスクを引き下げ、お客様の信頼に応える航空会社であり続けることにも貢献できると考えています。


図2. 影響度の高い障害の累計発生件数の推移

図2

今回のプロジェクトに関し、日本航空 サービス企画室・部長の黒沢昌幸氏は、次のように語っています。
「ITIL導入により、システムの運用状況が具体的な数字をもって可視化、把握できるようになりました。また、システムの監視と管理を充実させることが当社事業にとってどれほど重要であるか、経営陣にもはっきりと認識してもらうことができました。」

JALは日本の航空業界に先駆けてITILを導入しましたが、その影響はJALの競争力の維持・強化にとどまらず、他社もシステム運用の改善施策により一層力を入れるようになりました。「こうした動きが広まれば、定時運航率も高くなり航空輸送システム全体がスムーズに動くようになることで、個別の航空会社だけでなく航空業界全体、ひいてはお客様にも大きなメリットが生まれるでしょう。」と黒沢氏は予想しています。

ITIL導入により、JALのシステムは信頼性、復元力、可用性の大幅な向上を実現しました。こうして当初の目的を達成したJALは、さらにサーバー統合とSOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)導入の2つの高い目標を設定しています。いずれも費用対効果が期待できること、システム性能を高めつつ障害発生率を減らすことが期待できるとJALは考えています。


上に戻る


お客様情報

お客様名: 株式会社 日本航空インターナショナル
所在地: 〒140-0002 東京都品川区東品川二丁目4番11号 JALビル
URL: http://www.jal.co.jp/
事業概要: 世界33カ国・地域213空港、274路線にわたる定期航空運送事業および不定期航空運送事業、航空機整備事業ならびにこれに附帯または関連する事業を展開している。

上に戻る


関連記事

ITIL関連サービスを体系化、Tivoli製品による実装サービスを開始(ニュース)詳細はこちら

上に戻る



本記事中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。

IBM、IBMロゴは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
ITILは英国Office of Government Commerceの登録商標および共同体登録商標であって、米国特許商標庁にて登録されている。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。

上に戻る

フォームでお問い合わせ

まずはお気軽にご相談ください。

入力フォーム 入力フォーム

会員向けサイト

 

会員 / メルマガ登録
お客様専用会員制サイト「Easy Access」のご紹介




RSS

RSSトピックス配信
流通業のお客様向けにトピックスや特集記事のRSS配信を行っています