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シリーズ連載「生産管理入門」(1)

第1回 「生産管理とは何か? その1」

タブの始まり

IBMは製造業のお客様に向けて「統合化部品表ソリューション」をご提供しています。本連載では、日本企業のお家芸でもある生産管理および生産管理システムについて、その歴史・考え方をひもときながら6回にわたってご紹介していく予定です。

筆者紹介
株式会社クラステクノロジー
代表取締役 四倉 幹夫 氏

生産管理とは何か? その1

生産管理とは何か?と問われて一言半句で答えを返すのはなかなか難しいと思います。それは、人間とは何か?正義とは何か?というような命題のように茫洋とした領域の仕事のあり方を指す言葉だからです。
単純に言ってしまえば、“生産を管理する”すなわち、“工場の生産を滞りなく運営する”ということになりますが、もう少し具体的に説明するならば、“生産管理”は、工場(製造現場)のP(Plan)、D(Do)、C(Check)、A(Action)のライフサイクルを運営することと言えます。すなわち、生産計画を立て(P)、それを実行し(D)、実績を収集し(C)、必要な改善を実施していく(A)ライフサイクルを継続的に運営していくための仕事のやり方である(手法)と定義することができます。その中の計画を立てる(Plan)ということの内訳に、受注やフォーキャストや生産計画立案や出荷指示などが内包され、実行する(Do)の内訳に購買や入出庫や製造指示などの仕事が内包されます。

片や“生産管理システム”はこれら人手でこなすには膨大な伝票や差立て(製造指示書)や事務処理の山を、コンピューターのような道具を駆使して効率よく推進するために開発された仕組みです。初期のころは現実の製造現場の生産管理の仕事の写像としてシステム化されました。それ故、古いタイプ(まだ全てが新しいわけではありませんが)の“生産管理システム”は現場の写像としてシステム化され、扱うデータも現物(在物)のデータだけでした。ですから、在庫などの情報も、現場の写像として運用され、今倉庫にある100個という情報しかデータベースに持っておらず、昨日の50個(過去のデータ)や3日後の120個(未来のデータ)という時系列のデータを管理していませんでしたし、MRP(資材所要量計算)で使用する在庫も手持ち在庫(On Hands)と漠然と管理していて、その所在(空間情報)も部品倉庫、ライン倉庫、中国工場、北米工場のようにいくつあるかということも管理してきませんでした。もっとも、1970~90年代の汎用機の能力では1工場分のMRP(資材所要量計算)のバッチ処理がマシンの能力不足からひと晩で終了できないこともあったため、次の日の朝のオンライン処理が始まるまでに完了させることができず、翌日のオンライン処理がストップすることが頻繁に起こり、情報処理部門はそのたびに大問題になって(というのはオンラインが動かないと入庫も出庫も止まってしまうからです。)四苦八苦しておりました。とても現代の最先端の生産管理システムが稼動するようなインフラではなかったのです。

アプリケーションを設計するSEにとって、生産管理システムは、他のアプリケーション(例えば、経理システムや人事システムや金融システムのような)と比べてとっつきにくい、分かりにくいという意見をよく聞きます。その1つの原因が、守備範囲がとても広いという点が挙げられます。生産管理システムの中には、受注管理、生産計画、販売管理、購買管理、在庫管理、加工組立管理、原価管理、資材所要量計算、買掛管理、工程管理などのありとあらゆるアプリケーションが内在していますし、もっと広義にとらえると、設計図(CAD)、図面管理、部品表管理、試作管理、設計変更管理、ワークフローもその守備範囲に含みます。しかも各サブシステムはそれぞれが独立した業務アプリケーションなのです。

このために、生産管理システムは非常にとっつきづらく分かりにくいものとなっているのです。しかもその仕組みも一様ではありません。古典的な2ビン法から、追番生産、製番生産、かんばん生産、MRP生産、半見込半受注(ハイブリッド)生産、リアルタイム生産、等々、さまざまな生産のスタイルに合わせて生産管理システムも異なります。それ故、生産管理システムは取り組みづらいと思われています。
その上、設計の知識(電気系CAD、機構系CAD等々)や部品表の知識や、在庫管理の知識など覚えなくてはいけない要素技術がたくさんあるのです。
系統立ててすべてを網羅して説明することは至難の技ですが、なるべく平易にその全体像を解説してみたいと思います。
以下にその歴史と背景を踏襲しながら概要を説明したいと思います。

コンピューター以前の生産管理

生産管理はコンピューターが登場する以前にも存在しました。
ものをつくる現場を管理する仕組みですから、コンピューターに頼らなくても可能なものはあります。
原始的には生産計画を立てて、部品を発注して、製造指示を出して、実績を収集できれば立派な生産管理なので、どちらかと言えば工場の事務処理の連続でしかないのです。ですから事務処理の女性がせっせと伝票を切れば事足りるわけです。

ところが人件費が安い時代はそうやって人手手作業で一向に構わないのですが、人件費や人手によるミスや見込み違いなどがあって予定した製品がうまく作れなかったり、余分な在庫が増えたり顧客の納期に間に合わないということが起きてしまったのです。
何せ何千点何万点もの部品を伝票をいちいち書きながら調達するのですから、ムリムダはなかなか撲滅できません。そこで昔の人たちは知恵を絞ってこの複雑な事務処理をなんとか効率よく進めようとアイデアを出しました。

追番生産

工場の歴史=生産管理の歴史ですから、1960年代に商用汎用機が登場する以前にも生産管理の仕組みはありました。
その昔は手計算で資材所要量計算(MRP)も行っていたのです。その中でも特に有名なのが、ゼロ戦の生産をしていた中島飛行機の追番方式でした。これは後にコンピューターでシステム化されて、SNS(Sequence Numbering System)とも呼ばれますが、この製造の単位を追番(最終製品の累計生産数による通し番号の単位)とか号機(1号機、2号機のように飛行機の生産から由来しています)または背番号とも呼びます。これは1台(1機)ごとに追番という番号を採番して完成品ができるたびにその1台分の出庫伝票や発注伝票や外作伝票を自動的に作成し、これから投入する追番を付加して手配する生産管理の仕組みです。
コンピューターのない時代に何万点もの部品を1つも欠品することなく手配し、かつ余分な在庫を持たない合理的な仕組みでした。通常、完成品の数量と追番は一致します。この追番に対して各工程の着手指示、進捗管理、現品管理を行います。

ところが、この仕組みには弱点があって(どんなシステムにも弱点はありますが)、1品種でかつ設計変更が頻繁に発生しない製品を連続的に作り続けるラインでしか適用できないのです。

製番システム

製番システムは日本固有といってもいい生産方式で古くからあり、また現在でも個別受注生産や1品物の生産では主流の生産管理方式です。そしてこれは外国人が見たときに最も理解しにくい生産管理でもあります。歴史的に古いのでコンピューターが登場する前からありますが、今でもシステム化されて日本中の製造現場を支えています。
製番は製造番号の略ですが、工注(工事注文番号の略)と呼ぶ会社もありますし、日立系列の工場では作番と呼んだりもします。

さて、製番とは何か?製番は単なる番号ではありません。製造現場にとってはお客様そのものを示す番号なのです。それ故、同じ品目でも製番(お客様)によって若干仕様が異なったり、工程が異なったり、ものそのものが異なったりする場合があります。
それはもともと同じ品目であっても長い間顧客仕様で現場が調整していたりして変化した姿なので決してルール違反とか悪いことではありません。よくMRPを納入したいというソフト会社が同じ品目番号なのに製番ごとに中身が違うのはおかしいと主張したりするケースがありますが、それはMRPをまわすのに不都合なだけで、通常は製番+品番でユニークに管理できればよいのです。従って、外国のERPパッケージは真の意味で製番の概念はありません。また、工場間をまたがってアセンブリする品目もありますから、ある製番の下に別の製番で作られた品目がぶら下がってもよいのです。製番に対応した部品表はこれらの要件を満たしていなくてはなりません。製番システムでは出庫伝票、発注伝票、入庫伝票、生産指示書、から原価計算書に至るまですべて同一の製番が付加されています。
すべてのアクティビティーは製番をもとに動いているのです。

製番システムは個別受注品によく使われる生産管理ですが、一方では図面中心主義の生産方式でもありました。1品物で設計された図面に従って購買し、製造指示を出すのです。もちろん現場には生の図面から配布されました。
製番システムではすべての情報は製番でひも付けされます。部品もすべて製番でひも付けされて管理され、MRPの見込生産のように他の製品に転用されることはありません。また、原価も製番で管理するので個別原価(Job Order Costing)やABC原価管理(Activity Based Costing)の適用が容易で、製品1個ごとに完成した原価を正確に算出することができます。 最近では80~90%を量産見込で半製品とかユニットとして作り置きしておき、10~20%をフルカスタマイズ、受注生産で生産する半見込半受注生産としてもこの生産方式は活用されています。


次回はかんばん生産(TPS)についてご紹介していきます。


統合化部品表ソリューションのご紹介

統合化部品表ソリューションは、エンジニアリング・チェーン・マネジメントという新しい理論に基づいて構築・設計された総合製造ソリューションです。株式会社クラステクノロジーのECObjectsをベースに、製造業における受注・試作・購買・生産の全プロセスを、情報共有と情報配信を推進してシームレスに結合します。詳しくは、統合化部品表ソリューション(ECObjects)を参照してください。

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