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シリーズ連載「生産管理入門」(6)

第6回(最終回) 「生産管理とは何か? その6」

タブの始まり

IBMは製造業のお客様に向けて「統合化部品表ソリューション」をご提供しています。本連載では、日本企業のお家芸でもある生産管理および生産管理システムについて、その歴史・考え方をひもときながら6回にわたってご紹介してまいりました。今回がその最終回となります。

筆者紹介
株式会社クラステクノロジー
代表取締役 四倉 幹夫 氏

これからの生産管理システムの考え方

経済にもミクロとマクロがあるように、生産管理システムにもミクロ化とマクロ化の方向性があります。それは管理する方向がミクロ化するのかマクロ化するのかという目的の相違によって方向が異なります。 本章では将来にわたる生産管理システムの発達のベクトルをミクロ化とマクロ化という視点でとらえることにしてみましょう

ミクロ化からとらえた生産管理システム

ミクロ化の意味はより細かいレベルに管理レベルを下げるということです。管理レベルというのは扱うデータのレベルと言い換えてもよいと思います。お金で例えると、国家予算のお金の単位、企業会計のお金の単位、会社員給与のお金の単位、コンビニでの買物のお金の単位、というように管理レベルによってお金の単位は異なります。例えば、国家予算の算出は76兆や80兆円の兆単位で表し、これを80兆7946億4730万2932円と表記するのも可能ですが、兆以下の数字はこのレベルでは意味をなしません。また、コンビニの買物では店舗に億を超える商品を陳列していないので兆や億の単位はありえません。 生産管理の場合、例えば在庫のデータ等もこのような管理レベルによる粒度の違いがあります。

ミクロ的な管理の代表例はMESとPOPです。

MESとは、Manufacturing Execution System:製造実行システムの略で、生産管理システムと生産設備を制御するFAシステムの中間にあり、生産現場の自動化設備と生産管理システムを情報統合し、垂直に管理するためのITシステムです。現場のマシンや設備の情報と生産管理システムを物理的にリアルタイムにリンクさせ(これを“ミッシング・リンク”:失われた環、とも呼びます)、情報をリアルタイムに統合化し、製造ラインの“見える化”を実現化します。MESが発達しているのはドイツですが日本の製造現場ではあまり普及していません。かなり大きな工場でも表計算ソフト止まりというところも多いのが現状です。MESと生産管理が連動していないと情報と指示の誤差が出ます。例えば、基幹系で日別の生産指示を出しても、現場のNCマシンや工作機械の進捗とズレがあると、基幹系の指示データを現場がラインの現場に合わせてすべて作りかえなくてはなりません。工場によっては、1Wの単位で基幹系の生産指示を組み変えているところもありますが、これでは在庫や発注は1Wのレベルでのどんぶり勘定になってしまいますし、仕掛在庫も増えて生産の変動にも弱くなります。それゆえ、MESと基幹生産管理の垂直統合は重要なテーマなのです。

POPとは、Point of Productionの略で、バーコードリーダーやハンディ・ターミナルを用いて自動的に物の数、作業の開始/終了、ロケーションの情報を収集する仕組みの総称です。POPはいわば、生産管理システムの末端にあり、“目”の役割を果たします。

【図1】工場における管理レベルとデータ階層
図1:工場における管理レベルとデータ階層

入庫、出庫、棚卸、ラインの開始/終了、等々の作業現場に配置して、個数、実績、リードタイムを自動的にカウントします。これもミクロな“見える化”を実現する仕組みです。

POPはもともとバーコードを使用して情報を読取りました。スーパーのPOSレジで商品のバーコードを読んで会計する仕組みと同じです。

バーコードは情報の量が限られているため電子かんばんのような情報量の多いものを扱うなど、単純な品目番号以外の付属情報も入れようとすると、桁数(13桁)に限界が出てきます。そこで考え出されたのが2次元バーコードのQRコード(Quick Response Code)です。これも現在は携帯端末等でサイトにアクセスする際に使用されますが、QRコードの場合は、1817(Shift JIS)文字から7089文字(数字のみ)までの情報を格納することができます。

バーコードもQRコードも誤読率が低く非常に精度が高いのですが、入庫数のような情報を入力することはできませんでした。そのため、多くのPOP端末は無線や無線LANを経由してサーバーと通信しなければならず、物と情報は直接リンクしませんでした。

そこで登場したのが、ICチップを組み込んだRFID(Radio Frequency Identification)と呼ばれる電子タグシステムです。

これは電車などに使われる非接触型ICカードと同じ仕組みですのでご存知の方が多いと思います。これを電子かんばんなどに応用すると、数や時間やロケーションのような情報を記述することができるので、情物一致(情報と物が一致)を実現することができます。

RFIDの難点は、誤読率が1%と高いことですが、最先端の電子かんばんではほぼ100%に近い精度が出ているそうです。ちなみに、電車用ICカードも情報を読み取れないことが時々ありますが、各駅の窓口で対応できるため誤読が発生しても運用に耐えられるのです。

ミクロ化が“見える化”だとすれば、マクロ化は“予測”および“シミュレーション”になります。

需要予測のソリューションが一時期流行しましたが、第5章で書いたように、プログラムの予測では漸増漸減はとらまえられても、急増急減はとらまえられません。そこで考え出されたのが現在の在庫の変動をもとに未来をシミュレーションする仕組みです。

ここでは弊社の提供するシミュレーション・システムの立体MRP(Cubic-MRP)を紹介してこの回での解説とします。

立体MRP(Cubic-MRP)

自動車会社は部品メーカーに3ヶ月先や半年先のフォーキャスト・データを開示していますが、当然予測のデータなので、手元に来たときには変動していて数ヶ月先の需要予測に基づいて所要量や負荷を計算する仕組みはありませんでした。せいぜい需要予測をする位のものでしたが、この計算も科学的根拠に乏しく、とても信用するに足るものではありませんでしたし、工場の全在庫に関して計算することもできませんでした。では、長期生産計画や需要予測のデータから未来の生産を予測する方法はないのでしょうか?その答えの一つがこれから説明する立体MRP(Cubic-MRP)という仕組みです。

【図2】立体MRP(Cubic-MRP)
図2:立体MRP(Cubic-MRP)

一般のMRPでは1年後、2年後の生産をシミュレーションしたければ2年のタイム・バケットでMRPを計算すればよいと思うかもしれませんが、通常のバケット(長めで1ヶ月)でも数時間かかる処理を1年分計算するとなると計算時間も膨大でマシンのリソースも耐えられません。仮に計算が完了したとしても膨大にはき出された発注オーダーや製造オーダーを分析することはほぼ不可能です。

立体MRPはそのために図2のように通常のバケット期間(この場合は1ヵ月)のMRPを未来へ向かって1ヵ月ずつ連続して流すという計算を行います。これは遠くに向かってボールを投げるのと同じことで、前回のMRPの計算結果を再利用して次回のMRPを計算してゆくという仕組みです。原理的には単純なものなので、あとはシステム要件だけを揃えれば実現可能なシステムです。

立体MRPのシステム要件

立体MRPは時間軸を駆使したMRP計算ですから、在庫マスタは時間軸をもって管理されなければなりません。

在庫(未来在庫)を過去から未来に向かって時間軸を持って管理すると、データの更新が膨大に感じますが、明日以降の在庫の更新は即時に行う必要はないので夜間にディレード・バッチでも流せばよいのです。立体MRPで計算した発注オーダーや製造オーダーはそのまま未来の在庫として更新され、次のサイクルのMRP計算で手持在庫(未来の手持在庫)として再利用されます。

【図3】未来在庫更新の仕組み
図3:未来在庫更新の仕組み

【図4】未来在庫の更新
図4:未来在庫の更新

統合化部品表も時系列でできていますから、1ヵ月先の部品表や2ヶ月先の品目などは未来の時間軸で更新していればMRPで使用することが可能となります。

また、MPS(基準日程計画)が必要なので立体MRPをまわす期間(1年のタイム・バケットの場合は2年分(24回))だとか、1週間のタイム・バケットの場合は1年分(48回))のフォーキャスト生産計画を設定することも必要です。

自動車のように、N月、N+1月、N+2月と内示、内々示、確定が出るような業種の場合は、受注/フォーキャスト・データをそのままMPSに反映させ、毎回立体MRPを発進させればその予測期間内の資材所領量計算はすべて計算されます。

【図5】立体MRP計算(Cubic-MRP)
図5:立体MRP計算(Cubic-MRP)


最後に

本連載を通して様々な生産管理システムのパターンをご紹介してきましたが、このシステムのモデルはクラステクノロジー社の「ECObjects」というプロダクトをもとにしています。
これまであまり知られていなかったことですが、多彩な生産管理システムを同じシステムの中で共存させるためには、それらのデータの大元である部品表が重要な役割を果たします。
部品表は多様な生産管理システムを導き出すための重要な基礎インフラなのです。本連載が皆様の明日の生産管理システムを考える上で一助となれば幸いです。

また、ECObjectsを使った製造業向けサービス・ソリューションをお探しなら、IASCにご相談ください。

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