
第6回 空飛ぶ初物との遭遇
過日沖縄北部のやんばるへ初めて行きました。
やんばるが漢字で書くと山原であることをごく最近まで知らなかった私です。
旅行の目的は野鳥の撮影です。
おそらくご存知の方は多いと思いますが、やんばるにはヤンバルクイナをはじめ、珍しい鳥が何種類か生息しています。
狙うは勿論国の天然記念物ヤンバルクイナ。
それと絶滅危惧種で国の特別天然記念物ノグチゲラ。
ノグチゲラは沖縄県の県鳥となっているようです。
あとはアカショウビンという鳥。
ノグチゲラはキツツキの仲間です。
アカショウビンは真っ赤なカワセミだとお考え下さい。
とても素敵な鳥で、アカショウビンだけの写真集も出ています。
那覇からレンタカーを借りてやんばるまで3時間ほど。
交通量は少なく、高速道路を快適に飛ばすことができますが、高速道路はやんばるの大分手前の許田というところで終わってしまいます。
そこからは名護市経由で北上し、やんばるを目指します。
那覇を18時過ぎに出発したので、名護を通過するころには既に20時30分近くになっていました。
沖縄は東京より1000kmも西に位置しますので、日暮れも30分近く遅いですが、さすがにこの時間はほぼ真っ暗でした。
名護で夕食に島豚を食し、やんばるを目指します。
海岸沿いに走る国道58号線を北上し、1時間ほどで宿泊予定の国頭に到着しました。
国頭と書いてくにがみと読むようです。
そこの貸し別荘を予約しておいたのです。
吹き抜けの階段に3部屋もあり、楽に6人ほどは泊まれるようなところでした。
あとで調べると、それ以外にも何件か旅館や民宿があり、食事も付かず、ただとにかく広い部屋(家?)に一人で宿泊しているのはいささかもったいないことをしたと思いましたが、あとの祭りです。
自分でマットレスを引っ張り出し、布団を敷いて寝ました。
さて5月30日の土曜日です。
なんと起床5時。
6時から地元国頭の自然推進保護団体が行っているバードウォッチング・ツアーに参加するためです。
前日コンビニで買ったおにぎりなどをそそくさと食べ、車で5分ほど走り、待ち合わせ場所になっている道の駅へと向かいました。
駐車場にはそれらしきおじさまが一人。
車を降りて声を掛けるとやはりその通り。
インタープリターとの肩書きを持つO氏。
お年は65歳ほどでしょうか。
インタープリターとは通訳ですが、やんばるの自然を紹介・解説し、人に伝えるという意味なのでしょう。
なかなかいい肩書きだと感心しました。
O氏の車に乗り換え、小雨ぱらつく中を、いよいよやんばるの本丸へ乗り出します。
社中であれこれ自然に関して話をし、勉強になりました。
ちょっとわき道にそれて数分走った時、前方15mほどのところを黒い影が走り、道路からブッシュのなかへ掛け入るのが見えました。
えっ? まさか、あれが・・・。
時間にして0.5秒にもならなかったと思います。
そう、ヤンバルクイナとの生まれて初めての遭遇でした。
おー、見ることができて良かったぁ・・・・
でもこんな遭遇じゃ写真を撮るもへったくれもないなぁ・・・
そんな印象が残った初遭遇でした。
その後もドライブを続け、ヤンバルクイナを捜し求めます。
なんかイメージが違いました。
私は、めぼしい場所まで車で移動し、それから獣道のようなところに分け入り、ヤンバルクイナを探すものと思っていました。
それがなんとそこそこ整備された道路を、車で移動しながら探すとは・・・。
これでは目撃できてもほんの一瞬でとても撮影などできないなぁ・・・と思っていました。
しばらくしてまた一羽を目撃。
当然のごとく一瞬でした。
まあ、写真が取れなくても、これは大変貴重な経験と、自分に言い聞かせていました。

人生初撮影のヤンバルクイナ
そしてまたしばらく走ったところ、道路の反対側のブッシュに2羽発見!
30mほど通り過ぎ、そして車を止めて観察。
こちらが静かにしていると、徐々に警戒心が解け、ブッシュの切れ目から出てきました。
これはまたとない撮影チャンス!
バンのスライド・ドアからするりと抜け、車体をブランドに使いシャッターを切りました。
やった!
初めての撮影です。
他の野生動物もそうですが、意外と車自体は警戒されません。
動物たちは人間の姿をして動くものをとても警戒するのです。
ヤンバルクイナも例外ではありませんでした。
路肩に積もった松葉などの落ち葉をしきりに突付き、餌になるムシを探しているとのこと。
かなりリラックスしていました。
一応そこそこの写真が何コマか撮れたと思ったので、近づくために車の陰から徐々にすべり出ました。
しかし残念ながら2-3m進んだところでヤンバルクイナはブッシュの中に消えて行きました。

草原で撮影できたヤンバルクイナ
次の撮影機会は、もっと細い道に入った草原で訪れました。
さすがにO氏は詳しく、どのあたりにどの個体が活動しているのか、大体は把握されているようでした。
ここでも車の陰からパチパチ。
先ほどと異なり緑の中で撮影できたのでラッキーでした。
それ以降も何度か目撃し、O氏によればこれほど見ることができたのはかなり珍しいとのこと。
この広大なやんばるの森に推定1000羽が生息しているらしい。
そのうち6-7羽を見ることができたのは、確率的にも相当な幸運なのでしょう。
ヤンバルクイナは飛べません。
天敵がいない環境で長期間生息してきたので羽根が退化しています。
そしておもしろいことに、新種として正式に特定されたのは1981年という最近です。
地元の人は昔からこんな鳥がいるのは当然ご存知でしたが、いつも見るのでそれほど希少な、ましてや新種であるとは誰も思い当たらなかったということです。
絶滅危惧種に分類されています。

これも天然記念物のアカヒゲ(♀)
その後、比地大滝の手前にあるキャンプ場へ移動し、ノグチゲラ他を探しました。
これも天然記念物であるアカヒゲという鳥を何度か撮影することができましたが、残念ながらノグチゲラもアカショビンも、声はすれど姿は・・・という状況でした。
O氏からは、ヤモリ、カエル、トンボ、カタツムリや各種植物に関する解説を受け、とても満足しました。
ヤモリやリュウキュウハグロトンボは撮影もできました。
大変気持ちの良い森林浴もでき、かつ写真の成果もあり、そして勉強にもなった。
これで料金5000円とは、野生が大好きな私には十分にペイする4時間でした。

リラックスする犬@奥集落
その後、沖縄本島最北端の辺戸(へど)岬や、琉球の古民家が残る奥という集落などを撮影し、30日は心地よい疲労とともに暮れました。
さて、31日日曜日。
この日はすでに梅雨入りしたとは思えない清々しい快晴。
前日の就寝時には、よーし、明日も早起きして自分でヤンバルクイナを探すぞ!と思っていたのですが、結構疲れもあり早起きできず。
そこで前日現地のTVで見たF22撮影に嘉手納に向かいました。
F22は最新鋭ステルス戦闘機です。
日本が購入する、いやさせないともめているので、知っている方もおられるかもしれません。
通常は日本には配備されていませんが、訓練あるいはプレゼンス誇示のために飛来するようです。
今回は2回目。
土曜日に4機飛来し、日曜日には更に8機が来るとのこと。
(結果的には合計8機になったようですが・・・)
やんばるへ向かった道を逆にたどり、2時間弱で嘉手納基地に到着しました。
目指すは嘉手納基地のほぼすべてを見渡せる道の駅かでな。
なんとも不思議なところに道の駅があるものだとは思いますが、4階建てのビルという特殊な道の駅の展望デッキにさっそく登りました。
なるほどたしかに基地がほとんど見渡せました。
3700mの滑走路2本が左右に走り、その向こうに各種格納庫と駐機されているF15,F16,AV-8やC-17など各種輸送機などが見えました。
右手には、先ごろ日本の海上自衛隊がソマリア海賊対策に送り出した対潜哨戒機P-3Cオライオンが6機駐機しています。
嘉手納には単一の航空団としては合衆国空軍最大となる第18航空団がありますが、これらのオライオンは合衆国海軍所属です。
垂直離着陸機AV-8はおそらく海兵隊所属だと思います。
展望デッキのベスト・ポジションは、仕切りで区切られ、なんと報道関係者のみとなっていました。
これはこれから飛来する8機のF-22のために集まったカメラマンのためのものです。
いつ来るとも判らないF-22を待つのは、仕事とは言えなかなかつらいでしょうが、近くのベンチには暇そうなプロカメラマンが多数いました。
さて、お目当てのF-22はどこかに・・・。
おっ、いました、いました。
一番左端にいます。
勝手な想像ですが、これを見に来る人も多いでしょうから、サービスに1機置いてあるのだと思います。

陽炎にゆらめくステルス機 F-22
しかし道の駅からは直線で2km以上向こうです。
500mm相当の望遠で撮影しましたが、機体は霞と陽炎の向こうです。
しかし初めて見るF-22。
いかにもステルスという形状です。
そこそこのカメラを持っており、かつプロらしくないので、素人さんには安心なんでしょう。
何人かの人がF-22はどこにあるのでしょうか? と聞いてきます。
勿論丁寧にお教えさせていただきました。
その後 展望デッキで小一時間ほどリラックスし、那覇空港に向かい帰京しまいた。
極めて短い時間でしたが、ヤンバルクイナとアカヒゲという天然記念物を撮影でき、そしてこれも「空飛ぶ初物」であるF-22を撮影することができた、内容の濃い1.5日でした。
