<試作回数とコストの削減>
『板ばね』の解析では、内部応力がビジュアルに表現されることで、どの部分がウィークポイントなのかを予測でき、内部応力の集中を回避した設計を実現できました。その結果、従来は試作品による耐久試験で問題が発生してから改善していた不具合を設計段階で吸収し、試作の製作・修正回数を削減、量産までの期間を大幅短縮しました。さらに、試作に費やしていたコストの削減も実現しました。「解析設定や解析結果のデータをモデルの中に組み込むことにより、従来よりもさらに複雑な形状の板ばねを容易に設計できるようになり、設計の自由度が向上しました。また、ジェネレーティブ・アセンブリー・ストラクチャル・アナリシス2(GAS)のユーザーフレンドリーな操作性によって、設計者が干渉チェックや内部応力計算を容易にシミュレーションすることができます。結果もビジュアルに確認できるため、問題が発生しそうな箇所を予測して設計プロセスの中であらかじめ対策を講じることができるようになりました」。(ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー eビークルカンパニー ASC事業部 田中壮彦氏)
<他部門への波及>
eビークルカンパニーでは従来、解析プロセスは専門の部署が担当しており、解析結果が出るまでに約一週間を要していたため、修正が発生するたび週単位に進捗が遅れが生ずる、という状況にありました。
解析データをCATIAモデルに組み込むという手法は、現在eビークルカンパニー内の他部門にも展開され、広く活用されています。「CATIA V5の解析ソリューションにより、『解析もできる設計者』が増え、設計者が扱える解析分野が今後さらに広がっていくと予測されます。そうなると全社的にも設計プロセス自体を見直す必要が生じ、そのための取り組みに力を入れているところです。」(田中氏)。
「解析結果の精度も以前に比べてかなり向上しており、CATIAの解析結果と実測値に大幅なズレが生じることがなくなってきていることも、今回の成果を上げた要因の1つと考えます。以前は解析結果と実測値を照合しながら設計していました。現在は静解析に関しては、シミュレーションだけで設計し、試作は1回で済むパターンが増えてきています。」(ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー eビークルカンパニー ASC事業部 チーフメカニカルエンジニア 千ヶ崎 浩行氏)。
この成果が上がったベースとして、解析のための基礎データ整備があげられます。まず、解析精度と解析時間の精査を行いました。さまざまな設定(メッシュサイズなど)で解析を実行して多くのデータを収集し、計算時間と精度が両立するような解析設定の見極めを行い、それを設計者の誰もが利用できるように指標化しました。
さらに、設計段階で頻繁に使用される材料について、実物を試作して実験を行い、材料物性値を検証しました。検証結果と解析シミュレーション結果をもとに両者の相関を分析し、実験とシミュレーションとの誤差を吸収できるように、材料物性値に補正をかけたデータを作成しました。この材料物性値データは、ある程度正確な相関が取れることが確認され、実際のシミュレーションに適用されています。
このような基礎データを整備したことにより、初期段階で精度の高い解析サイクルを回すことができるようになり、設計の評価と不具合改善をフロントローディングし、試作評価プロセスでの不具合削減とトータルな設計期間短縮を実現しました。 |