掲載月:2006年12月
2006年3月号の当NEWSで2015年のリテール・バンキングに関するグローバル・メガトレンドと今後の金融機関の課題についてご紹介しました。今回はそれをベースに日本の状況 を加味し、日本の消費者へのアンケート調査結果に基づく考察と提言をまとめましたので、その要旨をご紹介いたします。
郵政民営化と道州制が競争激化を加速
図1 概要図
2015年に向けての5つのメガトレンド(顧客、競争、人財、規制、テクノロジー)の中で、日本で特にインパクトがあると思われるのは、顧客と競争にあると考えられます[図1]。
今後、さらに進展が予想される少子高齢化に伴い、相続による金融資産の世代間移転の拡大と、所得格差の拡大によって、金融資産の偏在が進み、金融機関取引に大きな影響を与えると考えられます。
競争については、経済の広域化や今後導入が想定される道州制に伴い、従来の営業エリアを越えた地域金融機関の再編が進むでしょう。加えて、郵政民営化による“ゆうちょ銀行”の業務拡大に伴い、コーペティション(競争と協業)が進むと考えられます。
また、異業種からの参入や銀行代理店の活用が進むことで、製販分離が進み、日本でも特定の機能等に専門特化したインダストリー・スペシャリストが存在感を増すでしょう。
人財に関しては、これまでの人事戦略の前提が変化してきており、従来のコスト削減のための人員削減とパート化から、成長を支える人材ポートフォリオや人事制度への転換が求められます。また、規制については、欧米同様に今後も負担のさらなる増大が予想され、透明性への要求とコンプライアンス対応のために全社的なアプローチが必要となるでしょう。そして、RFID(非接触IC)と携帯電話に代表されるモバイルテクノロジー、SOAやWeb2.0などのテクノロジーの進展によって従来提供できなかった価値を提供できるようになると思われます。
顧客は今後、金融機関取引を分散する意向が高い
今回、顧客トレンドの検証のために、日本の消費者に、取引金融機関の満足度、今後の分散・集約意向などに関するアンケート調査を実施しました。その結果、
- 伝統的かつ規模の大きな金融機関ほど満足度が低く、顧客の立場に立った対応が不十分と認識されていることが分かりました。一方、ネット銀行やATM手数料無料を掲げるなど独自性を持った銀行等の満足度が高い傾向が出ました。
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図2 概要図
今後の金融取引については、顧客全体の60%が運用・ローン取引を分散する意向にあることが分かりました。一方、これらの顧客の中では、現在分散している決済取引を今後集中するとした顧客が全体の13%存在しています。今後、運用・ローン取引は分散するが、分散している決済は集中するといった動きが一部で起こると思われます[図2]。 - 運用・ローン取引は、年齢が高くなればなるほど、また保有金融資産が多くなればなるほど、自分が欲しい商品やサービスを利用するために、より金融機関を使い分ける傾向にあります。
- これまで、伝統的な銀行を中心に利用していた顧客にとって、担当者の応対といった「人的対応」が、その銀行への満足度を決定する大きな要素でした。しかし、今後分散意向のある顧客は、「人的対応」に加えて、品揃えやセキュリティーといった「商品性」が満足度に大きな影響を与え、かつ商品性の評価が低いという結果が出ています。
多くの金融機関が優良顧客の囲い込みを図り、クロスセルを試みていますが、このような顧客の意向をみると、顧客の立場に立った「親身な対応」と「商品性」の評価を向上させることによって、顧客満足度を引き上げ、取引の分散防止と自行への取引集中を促進することが必要と思われます。
今後の成長のためにはイノベーションが必要
図3 概要図
上記のような業界を取り巻くトレンドが顕著になり、競争が激化するにつれ、銀行は4つの戦略エリアでイノベーションにフォーカスした成長戦略の実践を迫られると考えられます。
[図3]は、横軸に市場/チャネルを、縦軸に商品をとった2×2の4象限でイノベーションによる成長機会を表しています。
- 左下の象限は、「顧客密着と市場浸透」のイノベーションです。現行ビジネスの潜在性をフル活用し、顧客ロイヤルティ向上を図るものです。具体的には、イベント・ベースド・マーケティングやブランチ・イノベーションが挙げられます。」
- 左上の象限は、「商品/サービス」のイノベーションです。テクノロジーや顧客ニーズの変化が急速な場合に最も有意義なものであり、統合口座や新しい住宅ローン商品などが考えられます。
- 右下の象限は、「新しい市場とチャネル」のイノベーションです。既存市場が飽和しており、未開発のセグメントが新興している時に最も価値があります。新しい顧客セグメントやチャネルの対応のための他業態とのアライアンスなどが例示されます。
- そして右上の象限は、「多角化」のイノベーションです。新商品と新市場に同時に拡大するもので、顧客の行動パターンやテクノロジーの変化が異なる市場である場合に有効です。具体的には、小口ペイメント市場への対応が挙げられます。
2015年までに、知識のある顧客の要望、激化する競争、継続するイノベーションに対応するために、銀行は特化することが必要となるでしょう。そして、トップ業績の銀行は社内での卓越性と社外とのパートナーシップを通じてクラス最高の顧客価値を提供できる特化したコンポーネントから形作られるでしょう。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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