
近年のグローバル化の波は世界をフラット化し、日々急激な変化を続ける環境の中、私たちは経済的、技術的、社会的な結びつきを強めつつあります。そして今、フラット化の先にある新しい時代が幕を開けようとしています。技術の発展により、私たちはほぼすべての物や仕組みをデジタル化し、相互に接続することで、社会や経済活動、そして地球も、より効率的で洗練されたものになることが可能な時代を迎えているのです。
それと同時に、地球上には、いまだ解決できていない多数の問題があります。例えば、交通渋滞による日本全国の損失時間は年間約38億時間に上り、金額に換算するとおよそ12兆円ともなり、GDPの2%以上に相当します。※1また、世界の水消費量は1900年からの100年間に6倍になり、人口増加の倍のスピードで増え続けています。※2
これらは、次の世代のために私たちが解決しなくてはならない課題のほんの一部にすぎません。IBMは、世の中の非効率や無駄を削減し、新しい時代の可能性を確実に未来へつなげることを目標として、2008年11月、「A Smarter Planet」と名づけたコーポレート・ビジョンを発表しました。 これは、私たちの大切な地球を守りながら、Smarter、つまり「より賢い」地球への進化を支援するという考え方です。
なぜ今、そのことが可能なのでしょうか?
第一に、世界は機能化(Instrumented)されてきているからです。
2010年までにはヒト1人につき10億個ものトランジスターが存在し、1個あたりの費用は1,000万分の1円以下という世界が現実のものとなります。サプライ・チェーン、医療ネットワーク、都市、そして河川などの自然環境も含むあらゆるものにセンサーやICチップなどが組み込まれ、状態がリアルタイムで計測、感知、観測できるようになります。
第二に、世界は相互接続(Interconnected)され、ますます深くつながってきているからです。
間もなく20億もの人が、インターネットを介してつながりを持つようになります。また機能化されたシステムや機器による、新しい形の連携も可能となります。車、電化製品、カメラ、道路、パイプラインはもとより、医薬品や家畜類なども含めてこれらの相互作用により生まれる情報量は、史上空前のものとなるでしょう。
第三に、すべての物がインテリジェント化(Intelligent)していくからです。
強力なコンピューター・システムと「クラウド・コンピューティング」が、インターネットや携帯電話、PCなどのユーザー端末の使用により発生する大量のデータの統合、プロセス、モデリング、予測、分析の迅速な処理を可能にします。
IBMの提唱する新しいビジョン

世界のあらゆるものを機能化して、相互接続し、その連携によって生じたデータを分析して得た知見を活用し、さらに効率的で対応力を持つ仕組みを作ることによって、ビジネスや社会、ひいては地球に進化をもたらすことができる。
あらゆるものから収集した膨大なデータを分析し、そこから得られる革新的な洞察を活用すれば、非効率の可視化や将来的なリスクの予見が正確かつ迅速に行えるようになる。私たちは、そんな未来予想図を描いています。
IBMは、先進的な技術や知見を広く社会に提供すると同時に、幅広い組織や団体、個人との協業を通じ、それぞれの強みを活かしながら、地球全体の「スマート化」に向けて活動を進めています。
具体例を挙げれば、スウェーデンのストックホルム市では、交通ラッシュ時間帯に渋滞地域に出入りする車に「渋滞課金システム」による税を課すことによって、「スマート」な交通システムを展開しています。無線認証(RFID)技術や自動文字検出機器を駆使し、車の流れを阻害することなく、交通量に応じた変動的な課金を実現しています。結果として渋滞が20%緩和されただけでなく、排気ガスも12%削減され、公共交通機関の利用率も高まりました。
日本でも、2008年に京都大学と共同で、数百万台の車の動きを一台一台のレベルまで再現する大規模交通シミュレーターを開発しました。その活用により、今後、渋滞だけでなく燃油使用量や二酸化炭素排出量も削減できる「スマート」な交通社会実現への貢献が可能になると考えます。
他にも、マルタ共和国では電力・水道事業会社と協業し、高性能の電子メーター機器と最新ITアプリケーションの統合によるスマート・グリッド・ユーティリティー導入プロジェクトを推進しています。これにより、遠隔からのモニタリング・管理、メーターの読み込み、電力の消費状況に応じた課金などが可能となり、また利用者はインターネットで日々の消費パターンを把握し、電力や水を無駄なく使用できるようになります。
世界中で行っているこのような活動の積み重ねが、ひいては地球規模の進化につながるとIBMは考えます。
※1 出典:国土交通省道路局 平成17年度道路行政の達成度報告書/平成18年度道路行政の業績計画書(2006年6月)
※2 出典:World Meteorological Organization(WMO)Report(1997年9月)
