IBMの最新テクノロジーを活用して、世界規模の課題の解決への支援や、アクセシビリティ向上のため取り組んでいます。
ワールド・コミュニティー・グリッド(World Community Grid)
ワールド・コミュニティー・グリッド(WCG)は、先端技術であるグリッド・テクノロジーを活用して、IBMが人道的な課題解決のために世界規模で取り組んでいる社
会貢献プログラムです。
WCGは、個人や企業が所有するコンピューターのアイドリング時の処理能力を結集して、グリッド・コンピューティングの先端技術により、「仮想スーパーコンピューター」を構築します。これを用いて、世界規模の医療や環境の課題、また、社会的に難しい課題を解決するための研究を支援する活動です。
2004年11月のプログラム発表以来、世界中で約44万人、約122万台のコンピューターが登録され、これまで
- 小児がん治療薬開発
- 効率的な太陽電池開発
- 栄養価の高い米を世界に
- FightAIDS@Home
- 筋ジストロフィー治療
- インフルエンザ抗ウィルス剤検査
- アフリカ気候モデリング
- ヒトたんぱく質解析
- がん克服支援
- デング熱治療薬開発
など、14件の研究プロジェクトに演算処理能力を提供しています。
WCGはインターネットに接続可能なパソコンの使用者であれば誰でも参加でき、IBMは全世界的にこのプロ
グラムへの参加を呼びかけています。
※ ワールド・コミュニティー・グリッドへの参加はホームページでご登録の上、ソフトウェアをインストールしてください。
ワールド・コミュニティー・グリッドは、誰でも、どこからでも参加できる社会貢献活動です。
事例1 展示用パソコンを活用した環境貢献活動
日本IBMは、2008年夏、東京都の秋葉原電気街振興会およびNPO法人「産学連携推進機構」と協力し、秋葉原の家電量販店の展示用パソコンの処理能力を、WCGを利用する研究活動に寄付するキャンペーン「アキバ型環境貢献活動:活エネ・キャンペーン@アキバ」を実施しました。
キャンペーンの期間中、店頭の展示用パソコンにWCGのソフトウェアを導入し、米国ワシントン大学の研究活動「栄養価の高い米を世界に(Nutritious Rice for the World)」プロジェクトに参加しました。短期間のキャンペーンにもかかわらず、節電が難しい分野のエネルギーを、WCGを通じて社会的に重要な研究の演算能力として活用できることが実証されました。
事例2 ファイト!小児がんプロジェクト

ワールド・コミュニティー・グリッド
実行中のPC画面2009年3月、千葉県がんセンターおよび千葉大学による「ファイト!小児がんプロジェクト(Help Fight Childhood Cancer Project)」※がWCGの研究プロジェクトとしてスタートしました。
これはアジア太平洋地域において初めてWCGのプロジェクトとして採用されたものです。WCGが提供する膨大な処理能力を活用することにより、薬剤の候補となる約300万個の化合物を組み合わせるシミュレーションに要する時間が大幅に短縮され、2年で完了する予定です。
※小児がんの一種である神経芽腫の新しい治療薬を開発することを目的としたプロジェクト
アクセシビリティ

Easy Web Browsingの画面イメージアクセシビリティとは、障がいのある方や高齢の方を含むすべての人々が情報に容易にアクセスできるようにすることです。IBMは、アクセシビリティ技術に関し、基礎研究から実用化した技術の提供までを長年にわたって一貫して行っています。提供する製品、サービス、ソリューションへの標準的なアクセシビリティの実装を推進し、あわせて国・企業・市民団体とともに、アクセシビリティの普及啓発のための活動へ積極的に参画しています。
日本IBMでの活動のうち四つをご紹介します。
Easy Web Browsing V2.0
PCに不慣れな方、高齢の方、読むことに困難のある方が、快適にウェブ・サイトを閲覧できるように支援するソフトウェアです。ウェブページの読みづらい個所にマウス・ポインタを合わせるだけで文字が拡大表示され、合成音声で読み上げられます。他に配色変更、ふりがな表示、12ヵ国語読み上げなどの機能を提供します。
近年は学習障がい者支援機能の開発にも力を入れています。
字幕編集システムの研究開発

字幕編集の流れ
ネットワーク上の動画コンテンツが急増している現在、WCAG2.0※やJIS X 8341-3などの規格や標準は、情報保障の観点から動画への字幕付与を求めています。ただ、多くの課題のため字幕はあまり普及していないのが現状です。
本プロジェクトは、音声認識技術とさまざまな字幕編集技術によって、字幕の生成を短時間に行うことを目標に、海外のIBM基礎研究所と共同で進めています。多様な人たちが、それぞれのスキルや役割に応じて字幕編集作業を協業できるようなコラボレーション・システムを研究しています。
※WCAG2.0:Web Content Accessibility Guideline2.0の略。W3C(World Wide Web Consortium)が2008年12月に勧告した国際的なウェブ・アクセシビリティの実質的な標準。
アクセシビリティ・フォーラム2008の開催

アクセシビリティ・フォーラムの様子日本IBMは2008年11月、「教育におけるアクセシビリティ」をテーマに、フォーラムを開催しました。
フォーラムでは技術革新によってむしろ不利益を被る可能性のある聴覚に障がいのある学生と、発達障害者支援法の施行や脳科学の進展により関心が高まる学習障がいに焦点をあて、活動の具体例や今後の取り組むべき課題について、専門家から講演をいただきました。
フォーラムには150名を超える方々が参加され、この分野に対する関心の高さが示されました。
ソーシャル・アクセシビリティ・プロジェクト

ソーシャル・アクセシビリティの仕組み
視覚に障がいのある方がインターネットにアクセスする場合に、「画像に読み上げ用のテキストがついていない」「本文の場所がわからない」といった問題に日常的に遭遇します。ソーシャル・アクセシビリティは、このような問題を視覚に障がいがある方とボランティアがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で協力して解決することができる新しい実験サービスです
(図参照)。
2008年7月のサービス公開以来、多くのユーザーやボランティアの方々、さらにはサイト作成者や大学、障がい者支援組織の方々のご協力を得て研究を進めています。
本プロジェクトについては、下記URLをご参照ください。
【Voice】アクセシビリティ
すべての人がITを利用できる世界を目指して
私は障がいを持つ人を含めたすべての人々がITを利用できるようにするため、入社以来、アクセシビリティを研究してきました。1997年に、視覚障がいを持つ人のための音声WebブラウザーであるIBM ホームページリーダーの研究・開発・製品化に携わったことがきっかけとなり、活動の範囲が日本から世界へと広がりました。
アクセシビリティ研究においては、ユーザーの声が最も重要です。そのため、研究成果は製品のみならず、オープンソースやサービスとしても公開しています。
これまでの研究成果を評価していただき、情報処理学会から平成20年度喜安記念業績賞をいただきました。また2008年には、世界のIBM研究機関の中で、東京基礎研究所がアクセシビリティ研究の正式なリーダーとなりました。
現在注目しているのは、先進国における高齢者と、発展途上国における非識字者の支援です。世界中に数十億人存在している非識字者については、音声情報が重要となるという点で、これまでの視覚障がい者支援に関する研究成果を活かすことができます。今後もインドをはじめとした各国の研究所や大学と協力して、新しい支援技術群の研究開発を行っていきたいと思います。
IBMフェロー
東京基礎研究所
アクセシビリティ・リサーチ 担当
浅川 智恵子
