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インテリジェントなエネルギー

持続可能なエネルギーと地球環境の未来に向けて

川井さんの写真
通信・メディア・公益サービス
事業部 公益営業部 ソリュー
ション部長 川井 秀之
エネルギーのなかで最も使い勝手の良い電気は、さまざまな方法で得ることができます。電力会社の発電所だけに頼るのではなく、企業の工場やごみ焼却施設、さらに太陽光発電システムを設置すれば家庭でも電気をつくることができます。
「電力自由化」は、電気をできるだけ効率的に発電、利用するために、世界各国で取り組みが始まっています。日本でも1995年から段階的な電力自由化がスタートしました。
私たちの身の回りでも、オール電化住宅や家庭用コージェネレーションなど電気を利用する環境に変化が出てきましたが、日本ではまだ家庭向けの電力自由化は実現していません。
果たして家庭での電力自由化によって、どのようなことが実現できるのでしょうか?すでに電力自由化が完了している欧米での事例などを交えながら、日本IBMの通信・メディア・公益サービス事業部 公益営業部 ソリューション部長の川井秀之さんに話を聞きました。

——IBMと電力・エネルギーは、これまであまり結び付かない印象がありますが…。
川井 日本ではほとんど知られていませんが、電力自由化が進んでいる欧米では電力・ガス会社に対して、IBMはさまざまなソリューションを提供しているのです。送配電システムの効率的に運営する「インテリジェント・ユーティリティー・ネットワーク(IUN)」を構築するために、欧米では電気メーターに双方向通信機能とパソコン機能を組み込んだ「スマート・メーター」もIBMが供給しています。これがそうです。

スマート・メーターの写真
欧米でIBMが供給しているス
マート・メーター
——IBMが電気メーターというのは驚きです。電力自由化は、日本でも取り組んできましたが、欧米と比べるといかがですか?
川井 日本では1995年4月に電力会社に電力を売ることができる独立系発電事業者(IPP)の参入から、電力自由化がスタートしました。2000年3月には電力会社のネットワークを使って顧客に電力を売ることができる特定規模電力事業者(PPS)の新規参入が認められ、まず大規模工場やオフィスなど2000kW以上の「特別高圧(特高)」と呼ばれる需要先への供給が自由化されました。2005年4月から、中小規模の工場やクリーニング店など50kW以上の「高圧」にも範囲が拡大されましたが、電力消費の3割を占める「低圧・小口」と呼ばれる一般家庭の自由化は見送られています。欧米では一般家庭でも電力・ガス会社を選べるようになっています。

電力自由化の変遷

川井さんの写真
スマート・メーターの説明をす
る川井さん
——欧米では電力自由化後、電力会社はどのような対策を講じていますか?
川井 象徴的な変化は、電力供給の効率化を目的としたスマート・メーターの設置でしょう。日本では1か月に1度、機械式メーターを検針するだけですが、スマート・メーターには双方向の通信機能があるので、欧州のある電力会社では15分に1度、データを取得して利用状況をモニターしています。どの時間帯にどれぐらい電力が使用されているのかをリアルタイムに把握することで、電力会社では発電量を効率的に制御できるメリットがあります。日本でも電話料金は利用者が携帯電話などでチェックできますが、欧米では電力使用量もウェブから照会できるサービスが提供されています。

——利用者にとっては、うれしいサービスですね。
川井 1か月に1回、後から電力使用量を通知されても、なかなか省エネは難しいものですが、リアルタイムに分かれば、利用者の意識にも変化が生じます。どの時間にいくら電力を使ったかが分かれば、時間帯別の料金設定が可能になり、ピーク時電力量の削減にも有効です。さらにスマート・メーターを使えば、家庭内の電気配線を使ったPLC(高速電力線通信)でアプライアンス(コンセントにつないで使用する家電や電気製品の総称)ごとの電力使用量も計測できます。

——日本でも高速道路のETC(自動料金収受システム)導入を契機に時間帯別料金を設定して渋滞緩和に役立てようという動きがありますが、同じ発想ですね。
川井 カナダのオタワでは、スマート・メーターを使って、電気料金をピーク時間帯は高く、それ以外は安く設定した実験を7か月実施したところ、6~25%の省エネになったとの成果が得られました。このときは利用実績を1か月に1回、紙で通知するやり方でしたが、利用者の75%の人は、省エネに有効なプログラムであると評価しました。リアルタイムで使用量が判れば、もっと効果が出るでしょう。

——日本でも温暖化防止では家庭部門での温室効果ガス削減が大きな課題です。
川井 家庭部門における温暖化防止対策は、省エネ家電の導入などが検討されていますが、スマート・メーターも有効な対策の一つになると思います。現在の日本では、住む場所の電力・ガス会社と契約して、送られてくる電気も同じとして料金を支払っていますが、電力にも二酸化炭素の排出量が多い火力発電所でつくられた電力もあれば、原子力発電所、水力発電所で作られた電力もあります。また太陽光、風力、バイオマスなどの「グリーン・エネルギー(再生可能なエネルギー)」もあります。スマート・メーターを使って、いま利用している電力がどう作られ、二酸化炭素の排出量がいくらかが分かれば、利用者の意識も大きく変わるのではないでしょうか?

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インタビューアー:
経済ジャーナリスト 千葉利宏
——日本にも、使いたい電力を自由に選べる環境は必要でしょうか?
川井 ここに電力の利用に関する興味深い調査結果があります。IBMが、日本を含む主要国の一般家庭の利用者を対象に調査したところ「エネルギー会社を自由に選べるか?」との質問で、日本は最下位でした。一方で「エネルギー会社を代えたいと思うか?」との質問では「はい」の割合が他の国に比べて高く、「現在の電気料金よりも5%高くてもグリーン・エネルギーを使いたいか?」の質問でもかなり多くの人が「使いたい」と答えました。日本人もグリーン・エネルギーへの関心は高く、その意識を具体的な行動に移せるような環境は必要でしょう。
欧米では、冷蔵庫の脇にいま使用している電力が表示されるパネルを取り付けたり、ピーク時を避けてエアコンなど機器の稼動を外出先からコントロールできるようにしたりする試みが始まっています。こうした技術はエンジニアリングと言うよりもITの領域であり、IBMはスマート・メーターを導入する欧米のプロジェクトの約8割に関わってきました。

——送配電ネットワークのIT化は不可欠ですか?
川井 日本でも、2006年5月に策定した「新・国家エネルギー戦略」で、再生可能なグリーン・エネルギーの利用拡大を打ち出しました。これまでは発電所で電気をつくり、家庭に送電するという単純なネットワークで済みましたが、今後はそれぞれの地域や家庭でグリーン・エネルギーを発電し、余った電力が送配電ネットワークに入ってくるようになると、メッシュ型の複雑な管理をする必要が出てきます。ここでも「インテリジェント・ユーティリティー・ネットワーク(IUN)」のような効率的な管理が不可欠ですし、そこから新しい競争が始まることになるでしょう。欧米では、エネルギーも将来的にはメディアのように一方的に受け取るだけではなく、ブログみたいに自ら発信する「You Tube」ならぬ「You Energy」になるだろうと言われています。

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インタビューアー:
通信・メディア・公益サービス
事業部 公益営業部 ソリュー
ション部長 川井 秀之
——電力の安定供給も重要ですが、環境の観点から対策を講じる必要がありそうですね。
川井 実際にどれぐらい効果があるのかを、特区を設定して試してみてもよいのではないでしょうか。一足飛びに完全自由化が難しいとしても、エネルギー利用の「見える化」を進め、環境にどのように貢献しているのかが分かるようになれば、家庭部門における温室効果ガス削減への取り組みも積極化するでしょう。日本のようにエネルギー源の98%を輸入に頼っている国では、利用者側の意識付けで需要をコントロールする「デマンド・サイド・マネージメント(DSM)」によって設備投資する電力会社もWin、利用者も省エネに貢献できてWin、そして環境にもWinという関係が構築できると思います。

——猛暑だった昨年のように、電力需要は年々増加していますし、原油価格の高騰も続いています。電力会社にとっても電力供給の効率化は必要だと思いますが…。
川井 米国の電力会社には、巨額の投資をして発電所を建設するよりも、効率化により利益を生み出す考え方があります。そこでスマート・メーターや「インテリジェント・ユーティリティー・ネットワーク」が活用されています。日本においても「オール電化」や燃料電池、蓄電技術の進歩、「プラグイン・ハイブリッド・カー(コンセントで充電できる電気自動車)」の対応のためにスマート・メーターや「インテリジェント・ユーティリティー・ネットワーク」の導入が検討されると思います。また、電力・ガス会社のみでなくPPS(特定規模電力事業者)による「高圧マンション」などの新しいサービス、商社などによる排出権市場への取り組みなどが考えられており、今後、スマート・メーターを導入して「見える化」に取り組む活発な動きが出てくることを期待しています。

【編集後記】
宇宙から撮影された地球を見ると、日本列島全体が光を放ってくっきりと浮かび上がる。その映像を見る限り、日本は世界で最も豊かに電力を消費している国かもしれない。電力の安定供給も重要ではあるが、そろそろ認識を変えるべき時期だろう。
(経済ジャーナリスト 千葉利宏)

プロフィール=1958年生まれ、札幌市出身。日本工業新聞(現・フジサンケイビジネスアイ)入社、IT、金融、自動車、建設・住宅・不動産分野を取材。2001年からフリーランスとして活動中。

  • 川井さんの写真

    川井 秀之

    日本アイ・ビー・エム株式会社
    通信・メディア・公益サービス事業部
    公益営業部 ソリューション部長
    (2008年2月現在)


製造業、流通業におけるEDI(企業間取引)のシステム開発やネットワーク・アウトソース、電子商取引などのソリューション開発のリーダーを経て、2005年より現職。電力ガス業へのインテリジェント・ユーティリティー・ネットワーク(IUN)やアドバンスト・メーター・マネジメント(AMM)の推進を担当。

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