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"新たなグローバル展開や企業の社会的責任への対応がさらなる変革の鍵”
世界経済の成長とともに、自動車生産は拡大し続けています。自動車業界には、品質性能の高い自動車を作るだけでなく、環境安全に優れた自動車、さらに環境安全を考慮した自動車交通システムを実現する社会的な役割が求められています。
日本の自動車業界でも、各メーカーが電気自動車など環境安全に対する技術開発投資を積極的に展開してきました。しかし、企業ごとの取り組みだけでは、自動車交通システム全体のイノベーションを実現するのは難しいといえるでしょう。
自動車業界はいま、大きな転換期を迎えようとしています。過去10年間、自動車業界では合従連衡が活発に行われましたが、今後10年間でさらに大きな変革が起こるかもしれません。現在、2020年の自動車業界の将来展望についてリサーチを進めている日本IBMの安井さん、日高さんに話を聞きました。

日本IBM 理事
自動車産業エグゼクティブ
安井 和彦
——未来の交通システムを考えるうえで、自動車業界のイノベーションが重要だと思われますが、日本の自動車業界が抱えている課題は何でしょうか?
安井 自動車業界は、これまでは自動車メーカーを中心とした階層型の産業構造のもとで発展を遂げてきました。そしてこの数年、あらたなグローバル展開の中で、環境保護や社会への貢献、行動規範の遵守など企業の社会的責任(CSR)への確実な対応が求められてきています。これらへの対応には、自動車メーカーだけでは限界があります。2005年にスタートした自動車リサイクル・システムを実現したように、産業界全体で統一された社会インフラのもとで企業や業界の枠を越えてビジネスを展開することが必要になってくるのではないでしょうか。このためのビジネス基盤としては、標準化やルールの統一、ビジネス・プロセスの連携、情報の共有化がキーワードになると思います。また、CO2の排出量削減に対応する、いわば”グリーンな”サプライ・チェーンの実現や都市と輸送のあり方など環境保護を前提としたイノベーションが重要になるでしょう。
——自動車業界の階層構造が変化する可能性があるのですか?
安井 自動車業界に限らず、ネットワーク社会においては、企業そのものの構造が大きく変わっていくという予測があります。これからのビジネス活動は、共通の目標や同じ価値観を持つ企業やエキスパートとのコラボレーションで成り立つというものです。自動車業界も、ディーラーや部品メーカー、物流会社などさまざまな企業で形成されていますが、今後は、ノウハウや技術力などで強みを持った企業やエキスパートがグローバル・レベルで一つの情報を共有して、知恵やノウハウ、経験を出し合いながら環境や安全、品質に対する高度なつくりこみがなされていくことになると思います。
——日本の交通システムの現状についてはいかがですか?
安井 交通インフラが整備されれば確かに利便性は高まりますが、それに伴って道路や港の混雑は限界にきています。世界中で生産性や生活の質、環境に大きな犠牲を強いられています。これの解決策として、進化したテクノロジーを活用した統合的なアプローチが必要だとされています。現在の交通システムは、鉄道は鉄道会社毎に、バスはバス会社毎に多様な運用形態が縦割りに個々に管理されているのが現状ですが、「オープン化」「標準化」を図って、地域や国全体の交通システムを相互に連携させることで、環境対応や効率の視点で移動や輸送の最適化が図れるでしょう。SuicaやPASMOはその先駆けと言えるかもしれません。いずれにしても、近い将来の社会や生活がどうなっているのか、そこでの移動や輸送への要件が何かによって、車そのものや交通システムのあり方も変わっていくはずです。
——環境問題への取り組みはいかがですか?
安井 自動車業界にとって、最大のテーマの一つが環境問題です。日本だけでも7500万台もの車が保有され、毎年500万台の数の車が廃棄されていくわけですから、今後は自動車のライフサイクルの終端すなわち再利用、回収、廃棄などを考慮しながら車を設計することがますます重要になっていくと思います。すでに日本の自動車業界では世界に誇れるリサイクル・システムが動いていますが、今後は地球資源の有効活用のために最終処理の量を減らし、有価物を増やすためのさらなる拡張が求められるのかもしれません。物流分野でも時間やコストだけではなく、CO2排出量や燃料の使用量などの条件を反映して地球環境を配慮した最適物流を実現することが求められるようになるでしょう。

インタビューアー:
経済ジャーナリスト 千葉利宏
——自動車そのものもITS(高度交通情報システム)化が進みますが、それによってどのようなイノベーションが起こる可能性がありますか?
安井 今後、自動車は“走るコンピューター”となって世界中に散らばっていくわけですから、単なる交通手段だけではなく、地域社会さらには地球環境にとっての一大社会インフラになっていくと考えられます。車一台一台が小規模発電を放出することにより、余剰電力として提供できるかもしれません。また、車の加速状況や運転状況から燃費を食う道路や危険な道路を特定することができるでしょう。さらに、それぞれの地域にある車が地震などの災害時のセンサー役と成り得るのです。すでに、ワイパーがセンサーとなり雨の降り出しを検知するという仕組みなどを新たなサービス・ビジネスにする動きも出ています。自動車業界にとどまらず、産業界全体で標準化、統一化が実現すれば、車がさまざまな役割を果たす可能性を持っています。そうなると自動車業界を中心に他の業界との連携がますます進んでいくかもしれませんね。
——お話を伺うと、自動車業界も大きな転換期を迎えているようですね。
安井 自動車業界は、これまでもビジネス環境の変化に対応しながら、絶え間ない改善改革を続けてきておりますが、今新たなグローバル展開や企業の社会的責任への対応がさらなる変革のドライバーになっているといえます。電子制御機器や燃料資源などでの新たな企業の自動車業界への参入は、ビジネス構造の変化の現れでもあります。最近では、電子電機業界や金融業界から、自動車業界の将来展望についての意見を求められることがあります。IBMでは、2020年の自動車業界を取り巻く社会環境がどのようになっているのか、未来がどの方向に進もうとしているのかについて、世界のオピニオン・リーダーや有識者の方々とディスカッションを始めています。
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サービス / ソリューション
掲載日:2008年5月12日
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