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IBM Next 5 in 5 第2弾 : 環境 編

「今後5年間に生活を一変させる5つのイノベーション」第2弾 ITが実現する、CO2排出量の「見える化」 企業も個人も地球環境に貢献

"地球環境対策の鍵は環境負荷の「見える化」"

地球環境問題が、企業のビジネス活動や私たちの暮らしにも、さまざまな影響を及ぼすようになってきました。欧州を中心に広がるCO2の排出権取引のように、CO2排出などの環境負荷がリスクとして経済の仕組みの中に組み込まれるようになってきたからです。

鍵を握るのは、環境負荷の「見える化」です。温室効果ガスなどの環境負荷は直接、目に見えないものだけに「見える化」が果たす役割は大きく、可能な限り状況をリアルタイムに把握するためにはITによるイノベーションが不可欠でしょう。

温室効果ガス削減の「見える化」は今後、どのように進んでいくのでしょうか? 排出権取引など環境ビジネスが企業経営にどのような影響を及ぼすようになるのでしょうか? IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社の駒形さんと、日本IBMの川井さんに話を聞きました。


駒形さんの写真
IBMビジネスコンサルティング サービ
ス株式会社 企業変革コンサルティン
グサービス アソシエイト・パートナー
駒形 佳幸

——今年4月から京都議定書の第一約束期間に入りました。日本での環境問題への取り組みに変化は出てきているでしょうか?

駒形 明らかに違ってきたのは日本政府の取り組み姿勢です。これまではCO2など温室効果ガスの削減について業種別に自主目標を設定して協力を得ることで取り組んできたわけですが、それだけでは十分な効果が得られないことが明らかになってきました。

欧州を中心に排出権取引でキャップ・アンド・トレード方式(注1)の仕組みが実際に機能し始めたことで、今年(2008年)になって福田康夫首相が同方式の導入検討を表明しました。これまで同方式に消極的だった日本が方針転換を示した意義は大きいといえます。

2007年のドイツ・ハイリゲンダム・サミット(主要国首脳会議)では、安倍晋三前首相が温室効果ガスを2050年までに50%削減をめざす「クールアース(美しい地球)50」を提唱しましたが、イギリスでは2000年の段階で、2050年に60%削減という目標を打ち出しています。そのような中、今年7月に開催される北海道洞爺湖サミットで日本がどこまでリーダーシップを発揮できるかは、環境問題への姿勢が問われる踏み絵といえるかもしれません。

現実には京都議定書に批准していない米国がシカゴに排出権取引の市場を開設しており、中国やインドでもビジネス・チャンスととらえて国を挙げて取り組もうとしています。北海道洞爺湖サミットでどうプレゼンスを発揮するかだけでなく、日本として環境ビジネスの分野でどのような戦略を展開していくかを練っていく必要があるでしょう。

(注1)キャップ・アンド・トレード方式:政府が温室効果ガスの総排出量を定め、それを各企業や工場などに排出枠(キャップ)として配分し、各企業などの間で排出枠の一部を取引(トレード)することを認める。排出枠を定めないベースライン・クレジット方式もある。

——産業部門では温室効果ガス削減が進んでいると言われてきましたが、実際はどうでしょうか。

駒形 確かに産業部門では自主目標の設定などによりそれなりの効果を発揮してきましたが、民生部門、業務部門では増え続けており、現段階では野放し状態に近いといえます。部門間のバランスを考慮すると、早晩、何らかの対策を講じざる得なくなると思われます。

企業では、CO2の排出量が企業活動の評価基準となりつつあります。私は勝手に「CO2本位制」と呼んでいますが、生産工程から物流までサプライ・チェーンの全工程を含めて企業のCO2排出量を測定・評価しようという流れがありますし、製品が消費者に使用される段階でもCO2が一つの評価軸となってきています。例えばBMWでは車の燃費に加え、1キロあたりのCO2排出量を算出して公表し始めており、将来車の性能の優劣が「CO2性能」で測られることになるかもしれません。

企業と同様に個人がカーボン・オフセット(注2)を行うことに意義を見出すようにすることが重要です。例えば個人でもCO2削減量を蓄積すると、それに応じて医療費控除のように税金が還付されるといったインセンティブが必要ではないでしょうか。
日本は基本的に補助金行政が中心ですが、欧州ではイギリスのように太陽光発電など再生可能エネルギーを2015年までに15%にすることを義務付けて、電力会社などの源流から転換を促す政策を推進しているという違いがあります。日本政府は義務付けには慎重ですね。

(注2)カーボン・オフセット:企業や自治体、個人など社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的に削減努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量を、他の場所で実現した削減・吸収量(クレジット)を購入したり、実際に活動したりすることで排出量の全部または一部を埋め合わせすること。

——個人レベルでの温室効果ガス削減を、義務付けなしに進めることはできるでしょうか?

駒形 そこを解決するのは非常に難しいポイントです。現在、個人におけるCO2削減の取り組みはボランティア・ベースです。例えば飛行機燃料が排出するCO2 の一部を、カーボン・オフセットとして販売するケースも出てきていますが、搭乗者全員一律に売るのではなく、希望者だけに購入してもらっています。さらに排出量全てをカーボン・オフセットで賄おうとすると1人当たりの負担が数万円というレベルになるので10%程度に留めざるを得ないのが現状です。

——個人レベルでのCO2削減に関係する注目すべき動きは見られますか?

川井 今年に入って注目されるニュースとして、住宅用蓄電池を開発する動きが活発化していることが挙げられます。従来は、太陽光発電システムを導入しても、余った電気は電力会社に売るだけでしたが、住宅用蓄電池があれば曇りの日や夜間にも電気を利用できるようなります。さらに各家庭の蓄電池を自治体や地域エリアでまとまってネットワーク化すれば、電気を相互に融通することもできます。全体のネットワークを制御して最適化を実現するにはITが必要不可欠になると考えています。

川井さんの写真
日本IBM 通信・メディア・公益サービ
ス事業部 公益営業部 ソリューショ
ン部長 川井 秀之

昨年の東京モーターショー 2007でも話題となりましたが、家庭用の電気コンセントから充電できるプラグイン・ハイブリッド・カーを利用しようという動きも出ています。海外ではプラグイン・ハイブリッド・カーの蓄電池に充電するだけでなく、逆に足りないときは駐車している自動車から電気を持ってくるというアイデアが出てきています。年間の自動車の走行時間を1日単位にしてみると1日1時間程度しか走行しておらず、大半は駐車しているというデータがあります。日本の自動車保有台数約5,000万台が全てプラグイン・ハイブリッド・カーなどになれば、その電力を利用したり販売したりするというような自動車業界での新しいビジネスになる可能性もあるでしょう。こうした話がこれから花盛りになっていくのではないでしょうか。

川井 家庭での電気使用では、カナダのオンタリオ州で変動型電気料金が導入されて、利用者に意識付けする試みが始まっています。毎月の電気使用量のお知らせで、どの時間帯に多く使っているかを「見える化」するだけで6%削減、火力発電所をどんどん使っている昼間の電力料金をペナルティーとして高くすることで25%削減、電気使用の削減に対するインセンティブを設定することで18%削減という結果が得られています。
Ideas from IBMのインタビューで以前にも紹介しましたが、通信機能を搭載した家庭用電気メーター「スマート・メーター」を設置すれば、今は高い時間帯なのか安い時間帯なのか、今使用している電気がどのくらいのCO2を発生させるのかを表示することも可能です。すでに海外では家庭内のコンセントに差し込み、PLC(電力線通信)を使ってランプの色で電気料金帯を表示する装置が実用化されています。先ほどの住宅用蓄電池と「見える化」を組み合わせることで、CO2排出を最小限にする仕組みもできるかもしれません。

——個人レベルでのCO2削減の鍵は何でしょうか

川井 まずは、個人の意識を変えること。次にCO2削減のニーズを作っていくこと。現在はボランティア・ベースで取り組んでいますが、産業界とも連携しながら排出権取引の地域版を進めることが必要ではないでしょうか。京都府では「京都エコポイントシステム」(注3)という仕組みを導入する検討を進めています。今まで見えなかったニーズを明確にして、規制緩和と既得権へ対応していくことです。これらが日本人の気質に合えば、上手く機能し始めるのではないでしょうか?蓄電割引や太陽光発電の補助などは海外でも実施されているもので、CO2削減に取り組むことで、いかに個人の生活が良くなるかを示せるかどうかが鍵を握っていると思います。

(注3)京都エコポイントシステム:家庭におけるCO2削減分を企業が買い取り、企業が進めている目標にカウントできるようにする制度。家庭ではCO2削減量に応じてポイントが付与されて、地域の商店街で買い物に利用できる。

掲載日:2008年5月26日

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