タブの始まり
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バリューネット事業推進
部長 久保田和孝
RFIDの世界は、いま急速に広がっています。物流や在庫などの管理に利用できるだけでなく、安全・安心、コンプライアンス(法令順守)、環境保護などさまざまな目的にRFIDを活用する動きが始まっています。
「情報」がRFIDによってモノと結びつき、ネットワークで共有化されることで、どのような新しいビジネス・ソリューションが生まれようとしているのか?グローバル・ビジネス・サービス事業(GBS)バリューネット事業推進担当の久保田和孝さんに聞きました。
——RFIDというと、インターネットと並ぶイノベーション技術として一躍注目されましたが、一時期ほどは騒がれていない印象もあります。
久保田 世界最大の小売業者であるウォルマートが商品にRFIDを付けることを納入業者に求めたのが2003年でした。米国防総省も同様の要求を始めたので、世界規模でRFIDが一気に普及するとの期待が高まり、ブームが訪れたのです。しかし、流通取引におけるコスト負担と利益配分の課題のため、両者にとって有益なモデル、つまりWin-Winの関係を構築するまでに時間がかかります。確かに小売業社にとってはRFIDを付けてもらえば欠品を防ぐなど効果があるでしょうが、納入業者してみればコストが増えるだけでメリットが小さい。
インタビューアー:
経済ジャーナリスト 千葉利宏
——それでRFIDに対する期待も一気に冷めてしまったわけですね。
久保田 しかし、冷静になって考えれば1990年代後半のインターネット黎明期と同様に新しい技術の導入時にはよくあることで、RFIDへの過剰な期待と現実のギャップから生じた反動でありRFIDそのものがダメなわけではありません。昨年後半辺りから、RFIDの可能性について地に足の着いた議論が始まっていて、水面下で新しい試みが次々に動き出しています。『ブーム去って、実用始まる』という新しい段階に突入したとの手応えを感じています。
——どのようなソリューションが動き出しているのですか?
久保田 RFIDの国際標準化を推進してきたEPCグローバルでは、これまで3つのユーザー・ワーキング・グループ(IAG ;Industry Action Groups )が活動してきました。一つは、消費財にRFIDを付けて商品管理を行うウォルマート・モデルのIAGです。2つめが医薬品の流通を管理するためのIAGで、米国ではドラッグストアなどで流通している医薬品の8~10%が流通段階でニセ薬にすり替わっていると言われ、それによる死亡事故も頻繁に発生しています。このため医薬品の流通履歴管理を義務付ける法律が成立、2009年1月からいくつかの州で導入が始まります。
——その証明をRFIDで管理しようというわけですね。
久保田 そうです。3つめの貨物輸送のためのIAGでは、特に主な目的としてテロ対策等のセキュリティー強化がフォーカスされています。現在、米国向けコンテナは貨物を積み込む24時間前にコンテナ内の貨物リストを作成して事前提出を義務付けています。しかし、その後でコンテナのドアが開けられたり、ドリルで穴を開けられたりする可能性もあるため、米議会でコンテナの全数検査を将来的に導入することが検討されています。このIAGでは、コンテナが未開封であることの証明にRFIDを使うことで全数検査をパスできる仕組みの構築を目指しています。
——医薬、貨物輸送ともに米国の法規制に対応したものですが…。
久保田 実は8月に4番目のIAGが日本の家電メーカーの提案で活動をスタートしました。欧米の発想はもともと商品一つひとつにRFIDを付けるのではなく、ケース(個装)単位で在庫管理するものですが、日本では購入後の家電製品の安全性が大きな社会問題となり、商品単位に生産から販売、修理、廃棄までライフサイクルで管理する必要性が出てきています。日本のユーザー・ニーズも国際標準に反映しようというわけです。
——ユーザー側からRFIDを利用するニーズが高まっているのですね。
久保田 これらのIAGに共通するキーワードは「安全・安心」です。従来のバーコードでも、多少手間がかかっても在庫管理は可能です。しかし、RFIDによって「モノ」と「情報」が結びつき、その情報がネットワークを通じてやり取りできるようになることで、安全・安心、企業のコンプライアンス(法令順守)、環境保護などの新しい価値を生み出すことができるのです。IBMでは、このようなお客様の価値向上につながる解決策を「バリューネット・ソリューション」と名付けました。

バリューネット事業推進
部長 久保田和孝
——日本企業の取り組みはどうですか?
久保田 製造業の生産現場では使いまわすタイプのRFIDが利用されています。例えばカンバンそのものを「ICタグ付きリライタブル・シート」(500回以上書換え可能な感熱式シートにタグをつけたもの)に変更することで、運用コスト削減と業務改善を実現しています。このようなハイブリッド・メディアもリコーなど日本企業が開発しています。
——輸送分野は今年5月にアジア・ゲートウェイ構想も策定され、日本企業の動きも活発化しそうです。
久保田 全日空が7月、那覇空港に国際物流拠点を設置すると発表しましたし、2010年の羽田空港の国際線乗り入れに合わせて各社とも輸送量拡大に向けた戦略を進めています。航空便乗り換えが多い欧米では、預け入れ荷物の200個に1個が紛失すると言われ、バーコードのタグが汚れたり破損したりするのも原因の1つでした。これを解決するためにRFIDへの転換が始まっており、日本でも準備が進んでいます。
——日本では、在庫商品や荷物が紛失するとか、ニセ薬が入り込むとかといった問題は少ないように思いますが…。
久保田 厚生労働省では医薬品の管理を効率化するため、現時点ではバーコードの普及を推進していますが、将来的に米国のような問題が発生しないとは言い切れないと思います。団塊世代の大量定年退職で人手不足も企業にとっては大きな問題になってきました。今後、日本の労働環境も変化するでしょう。これまで工場内の危険な区域への立ち入りなどはベテランと若手の2人一組で行っていたのが、今後は1人で行わざるを得なくなると、万一の時には非常に危険です。「アクティブ・タグ」と呼ばれるRFIDを使って安全管理を自動化するソリューションは、日本企業からも注目されています。
——日本IBMとしての今後の取り組みは。
久保田 IBMグループでも以前からRFID事業に取り組み、国際標準に準拠したRFID向けのミドルウェア製品などを提供してきました。しかし、お客様に対してビジネス・バリューを提供していくには製品別、業種別の組織では対応できないと考え、2006年9月に「バリューネット事業推進」という組織を設置しました。RFIDや読み取り装置と提供するパートナー企業と連携して、ソリューション提案活動を展開しています。ここに来て、多くの企業が「2010年」をめざして水面下でRFIDバリューネット構築に向けた取り組みをスタートしており、RFID市場も2~3年後には一気に拡大するのではないでしょうか。
【日本の専門家に聞く 編集後記】
RFIDが、インターネットと同様に社会システムを大きく変革する可能性を秘めていることは間違いないでしょう。電子マネーの普及も急速に進みだしましたが、問題はRFIDをどう使いこなすのか?久保田さんが予言した2010年に、RFIDがどこまでブレイクするかが楽しみです。
(経済ジャーナリスト 千葉利宏)
プロフィール=1958年生まれ、札幌市出身。日本工業新聞(現・フジサンケイビジネスアイ)入社、IT、金融、自動車、建設・住宅・不動産分野を取材。2001年からフリーランスとして活動中。

久保田 和孝
日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業
バリューネット事業推進 部長
(2007年10月現在)
企業間SCMの先駆けであるCRP(Continuous Replenishment Program) の日本初の導入など、流通業、製造業を中心にさまざまな業界におけるe-ビジネス、SCMプロジェクトの立ち上げを担当。SCMソリューション、オンデマンド・ビジネスの営業推進リーダーを経て、2006年より現職。”センス・アンド・レスポンド”と呼ぶ次世代のイベント・ドリブン形ビジネス・ソリューションの立ち上げ・展開を推進。
担当サービス:
- 「進化するRFID:第2回」のご紹介:「Sense &Respond」を重視した「次世代SCM」の観点から、RFIDの可能性についてご紹介します。
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