過去10年で交通のIT化が一気に加速しました。自動車にはカー・ナビゲーション・システムやETC(自動料金支払いシステム)端末が搭載され、電車・バスでは電子マネー利用が拡大、空港でもICパスポートの導入やチケットレス化が始まっています。IT化は、交通のボトルネック緩和にかなり効果を発揮しています。しかし、大都市圏の交通渋滞、深刻化する環境問題、高齢者の安全問題と、取り組むべき課題は少なくありません。これからの交通輸送イノベーションはどのように進むのでしょうか。IBMでは、GIO (Global Innovation Outlook)の年次会議で、世界各国の専門家を集めて交通問題の革新的な解決策を議論してレポートをまとめました。 ここでは、高度化した自動車、機能的な道路、効率的な輸送システム、高速かつエネルギー効率の良い公共交通システムの4つを紹介します。さらに「日本の専門家に聞く」として、日本IBMの理事 自動車産業エグゼクティブの安井和彦さんと、ソフトウェア事業ラショナル事業部開発部部長の望木(もぎ)純一さんに、自動車を中心とした交通輸送イノベーションの最新動向を聞きました。
自家用車の需要が、特に新興経済国において増加していることは気がかりな問題です。たとえば、中国 には現在 2000 万台の車があります。中国は既に、温室効果ガスの排出で、世界のワースト 1 である米国に僅差で2 位となっています。中国が 1 億 4000 万台の車を持つと予想される 2020 年のことを想像してみてください ! これに対して、3 つの解決策が明らかになってきています。
環境にやさしい自動車 低コストの代替エネルギー車を開発製造する会社には、政府から奨励金が提供されるようになるかもしれません。このことは特に新興経済国において、経済面と環境面の両方から支援することになるでしょう。中国やインドは、自家用車の膨大な需要を満たすだけでなく、高収益性が見込めて、開発の進んでいない「環境に優しい」自動車市場において、世界のリーダーになれるかもしれません。
カー・シェアリング これは多くの国の都市部で既に増加傾向にあります。レンタル・ビデオやスポーツ・クラブのように、市内のいろいろな場所から車を「借りる」登録をします。会員は必要な時にいつでもどこでも車を使用できます。同時に、道路を走る車が少なくなるので、すべての人にメリットがあります。
インテリジェント・カー 現代の車は、機械であると同時にコンピューターのようになりつつあります。近い将来、センサーが車の動作をモニターして、修理が必要になったらあなたに (あるいは修理店に) 知らせるようになるかもしれません。インテリジェント・エンジンが、走行状況に応じて燃料源を切り替えるかもしれません。そして自己修復力のあるソフトウェアが、システム障害を診断して、その障害が発生する前に修復を行うようになるかもしれません。この機能によって新しいタイプの自動車「事故」を未然に防ぐことが可能になります。実際、次世代の機能を持つ車を維持したり事故から守るために、まったく別の新しい産業が生まれることも考えられます。