2007年9月、日経BP社の許可により転載。
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今日のITには、単にオペレーショナルなコストを削減できるかというだけではなく、攻めのビジネスを展開するためのイノベーションをいかに支援できるかが切実な要求として突きつけられています。企業におけるイノベーションを促進する有効な“道具”としてOSSが期待される今、IBM及び各社はそれぞれのストラテジーをもってお客様にバリューを訴求しています。
難しいと思われがちなOSSビジネスにおける差別化。その肝となる各社の「戦略」を最新の講演などから読み解きます。
7月24日 日経BP主催
「OSSプラットフォームセミナー」
日本IBM 先進システム事業部OSS&Linux事業推進
部長 山本明厚 氏
IBMでは、2000年にLinuxやOSSに関する動向を常にリードしていく立場を堅持していくことをいち早く表明。以来、OSSコミュニティの活動に対する継続的な貢献をはじめ、既存システムとの連携・統合の実現に向けた拡張・改善など、OSSに関してさまざまな局面における取り組みを展開してきた。そのねらいは、OSSのもたらすメリットを最大限に活かしながら、さらなる高付加価値を享受できる環境を提案することにほかならない。企業におけるイノベーションを促進する有効な“道具”としてOSSが期待される今、IBMの取り組みに注目が集まる。
今日のITには、単にオペレーショナルなコストを削減できるかというだけではなく、攻めのビジネスを展開するためのイノベーションをいかに支援できるかが切実な要求として突きつけられている。
「IBMでは、先進テクノロジーを生み出すための有効なモデルとしてOSSを捉え、それを企業のイノベーションを支える“道具”として活かしていくため の取り組みを実践しています」と日本IBMの山本氏は同社におけるOSSの位置づけを説明する。
メリットとリスクを見極めた、適材適所の活用が重要なポイント
OSSがユーザーにもたらすメリットとしては、まず誰もが無償でダウンロードして最新テクノロジーを容易に利用できることがあげられる。また企業にとっては、ソフトウエア導入に関わる初期投資を低減できるという点も大きなメリットだろう。その半面、OSSにはコミュニティの持続性に関するリスクや企業によるテクノロジー買収に伴う戦略変更の可能性といったものも危惧される。さらに、ベンダー独自のサポートサービスを利用しているようなケースでは、場合によってはベンダーによるロックインといったリスクも考えられる。
「重要なのは、そうしたメリットやリスクを踏まえ、ユーザー自身がOSSの特性をよく理解したうえで、適材適所に活用していくことです」と山本氏は強調 する。その際に留意すべきポイントとしては、オープン・スタンダード準拠のものを正しく選択し、個々のOSSの成熟度やコミュニティの持続性をきちんと評価すること、そしてOSS採用に関するポリシーを企業レベルで策定し、既存システムとの連携や統合をしっかりと見据えての採用検討を行うべきことがあげられる。

Linux/OSSについての動向を、ベンダーとして常にリードしていく
IBMでは、OSSに関して3つの局面での取り組みを推進している。具体的には、OSSコミュニティにおける技術革新への貢献、既存システムとの連携・統合を実現するための拡張と改善、そしてIBM自身の得意領域におけるOSSの活用およびそれを支えるパートナーとの協業という各局面である。
まずOSSコミュニティへの貢献に関するIBMの主な取り組みとしては、1999年のIBM Linux Technology Center設立に始まり、2002年頃には今日のJava環境における標準的な開発ツールとなっているEclipseをオープンソース・コミュニティに寄贈している。さらに2004年頃にはZend PHPとの協業に取り組むなど、これまでにIBMがOSSコミュニティに貢献してきた例は実に広範囲かつ膨大な件数にのぼる。
「IBMでは、2000年の段階において、LinuxやOSSに関する動向を常にリードしていくことをいち早く表明しました。以来、今日に至るまでその方針に基づく取り組みをさらに強化しながら推進してきているわけです」と山本氏。その結果、今日ではIBMの全プラットフォームがLinuxに対応しており、例えば日本の大手企業においても、これらIBMのLinuxプラットフォームを利用して世界最大級のミッションクリティカルシステムを構築しているという事例も多い。
そのほか、ApacheプロジェクトのJava EEベースのアプリケーションサーバーである「Apache Geronimo」の開発にも、IBMがその「WebSphere」で培った技術をベースに深く関わってきたことはよく知られている。「近く、その最新版となるV2.0のリリースが予定されており、OSSのテクノロジーがすべてリンケージされた内容となっています」と山本氏は紹介する。また、オープンソー ス・スタイルの分散的チーム開発をEclipseベースの開発環境に実現するためのフレームワークを提供する「Jazz」プロジェクトにおいてもIBMは大きな貢献を果たしており、近く同社の提供するRational関連ツールをこのJazz上に統合していくことも予定されている。
OSSのテクノロジーをベースに、より高度な付加価値を提供
一方、既存システムとOSSの連携・統合を実現するためのIBMの取り組みとしてまず注目されるのが、PerlやPHP、Ruby、Pythonといっ た高生産性のスクリプト言語を同社のデータベース製品「DB2」と連携させるための仕組みを用意していることだ。これにより、スクリプトによる俊敏な開発と、DB2の提供する高度なパフォーマンスや信頼性、拡張性を両立できることになる。
また、Eclipse上で既存のWebサービス、RSSなどで個別に提供されている複数のアプリケーションを組み合わせたマッシュアップを実現する「Lotus Expeditor」、さらにはSNSやブログ、Dog-earなどのWeb 2.0技術をスイート化して各人の行動や知識、人脈情報などを統合、情報共有するための環境を実現する「Lotus Connections」なども、IBMがOSSテクノロジーをベースに、より高度な機能や価値を提供していくための典型的な取り組みだといえる。
さらにIBMでは、同社がハイエンド分野で培ってきた仮想化についての豊富なノウハウを活かし、Xenコミュニティへの技術提供をはじめ、OSSベースの仮想化ISVソフト(Virtualiron、Virtuozzo)の推進にいち早く注力している。「仮想化に関しては、IBMの最新型チップ『POWER6』ベースのUNIXサーバー上で、POWER6版のネイティブLinuxを稼働させる仮想化機能を既に提供しており、さらに32ビットのx86Linuxアプリケーションを動作させるための仮想化の仕組みなども準備中で、2007年後半にはリリースされる予定です」と山本氏は紹介する。そのほか、MySQLのAPIからDB2 for i5/OSをストレージエンジンとして利用できる環境の開発も計画されており、MySQLベースのOSSアプリケーションにおいてDB2の高度なスケーラビリティや堅牢性を享受することが可能となる予定だ。
最後に山本氏は「IBMでは、これら一連のテクノロジーや製品の提供により、OSSベースのリッチクライアントを介した企業内外にまたがるコラボレーション環境の実現から、OSSのシステムとミッションクリティカルな基幹システムとの柔軟な連携までをトータルに支援していきたいと考えています」と語った。
