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この「経営者視点と人材育成」シリーズも今回の4回目「リーダーシップの源泉とリーダーシップ世界大会2011」で最終回を迎えます。これまでの連載で気付いたことや2011年に私が実施したことを中心にお伝えしたいと思います。
今回のテーマは2点、最初は「リーダーシップの源泉」についての考察です。伊豆高原の天城で企業のエグゼクティブに向けたセミナーを昨年から実施してきました。そこからお話したいと思います。
次に「リーダーシップ世界大会2011」。これは私自身が準備に2年以上をかけたビッグプロジェクトです。リーダーシップの講師である自分が常々言ってきたことを実際に体験したわけです。それについてお話したいと思います。
リーダーシップの源泉
「リーダーシップの源泉」をテーマに、企業のエグゼクティブを対象としたセッションを天城で今年3回開きました。どのセッションでも、進むにつれ参加者の表情が大きく変化していくのを目の当たりにします。不安そうな顔からたったの一日半で何かを掴まれた顔に変わり、天城の山を元気になって下りていかれる。参加者同士の会話や、やり取りのなかで自ら変容し、自由な発想を醸成していきます。
リーダーシップの源泉を探る大事なキーワードは、敢えて言えば「リフレクション」(内省または自分自身との対話)なんですね。
トップや役員といった人たちは自分との対話の時間が決定的に少ない状況に置かれています。多くの決裁業務や意思決定に多忙で、自分を見つめる時間があまりにも不足しているのです。そういう方々に徹底的に自分を見つめていただく時間を天城でご提供しています。
セッションでは、自分の心のなかに問いかけるとともに参加者とも対話します。対話から新たな「気付き」が生まれてきます。
そのようなとき参加者にお願いしているのは「判断を保留する」ということです。トップの人は意思決定が仕事であり、それが求められています。その役割を保留して内省に集中していただきます。
新しい発想やアイディアは、既存の枠組みのなかからは出てきません。聞き心地のいいことだけを聞いていてはいけないのです。判断を保留して聴くことです。今感じている本音を口にする、人からも本音を言われる、視点を変えたり、異なっているものを受け入れたりすることで、新しい発想やアイディアが生まれてきます。自分もオープンになれるし、相手もオープンになれる。そのようなオープンで安全な場をご提供することを天城のセッションでは大切にしています。
天城の自然に浸る
もうひとつの重要なテーマが、自然環境に浸ることです。自然のなかでは人間の五感が開きます。五感を開くことで自らの枠組みをはずすことができます。無意識のうちに枠組みのなかにいる自分を発見してそれを一度取り払って自分とより対話する。そうして自分のなかにあるより大切なもの、大事なものを浮き彫りにしていくことができます。オフィスでは自分のために時間を使えないエグゼクティブも、自分のいまの立ち位置が見えてきます。
なかには、年齢を理由にもうこれ以上変われないという方もいます。でも天城にこられると見違えるように元気になられる。普段自分のやっていることや信念みたいなものを他人と比較し、自分はじゅうぶんではない、その資格はないと思っている人たちもいます。たとえばカリスマ的な社長がいるとして、あの社長みたいには自分はできるとはとても思えない。期待されていたとしてもとても苦しさを感じてしまいます。社長を真似する必要はない、自分らしくやればいいということに改めて気付いていかれます。それが本物の「自信」の回復です。
自信を回復する
「自信」とは自分を許容することです。失敗したときに落ち込むのがだめなのではなく、落ち込む自分もいい、それもまた大事な時間なのだと受け容れることです。それができると、人の嫌な面を受け容れることはできなくても、少なくとも受け止めることができるようになります。
つまりリーダーシップの源泉は自分の内にある。一生見つからないかもしれない。だから見つけに行くのです。自分の心ですら簡単には見えません。でも自分が持っているものが必ずあってそれを見つけていく。何が答えかではなくそれを見つけていくことが人生であり、リーダーシップであると思います。
天城セッションでは、自分がなりたいものをイメージするワークが有ります。たとえば私なら「屋久島の縄文杉」のイメージです。七千年以上の命をもち、人がその下に訪れては何がしかを感じ帰っていく。そういう存在でいたい。自分のところに来た人が、心を開いて想いや悩みを表に出し何かに気付いて帰る。そんな自分のイメージがあります。自分をイメージすることで自分にとっての大事なものがそこにあることに気付きます。
最初自分のイメージが見つからない人もいます。参加者同士で会話していくとやがてぴったりのイメージが見つかります。
天城セッションに来られた方に安心・安全な場を作ってさしあげ、そのなかでリーダーシップの源泉を見つけていただきたい。自分を突き動かす疼きを感じていただきたい、自分の在り方(Being)を内省していただきたい。そのような想いからセッションに臨ませていただいています。
リーダーシップ世界大会2011
次に二番目のテーマです。今年11月に「リーダーシップ世界大会2011」(注)を開催しました。
グローバルな視点でリーダーシップについて話し合う安全な場を作り出したい。自分自身がいままでの枠をはずしてフラットになったとき、この世に命を授かったのはどのような意味があるのか? 自分は何をしたいのか? 心のなかにある疼きは何か?それらを形にしたいと思い、リーダー達が世界から集まる大会を日本で開催しました。
「リーダーシップ」という言葉を聞くと、「私に関係ない」とか「偉い人の話?」という反応があります。この言葉を魅力的に感じる人と保守的に感じる人がいることがこの大会を通してよくわかりました。リーダーシップは国のリーダーや企業のリーダーなど特定の人に必要なもの。リーダーシップをそんな古いイメージで捉える人もまだ多いのです。わたし自身は、リーダーシップとはその人の人生観、生き様、使命など一人ひとりの人生の役割そのものと考えています。
「リーダーシップとは何か?」と問うたとき、「ポジション」(地位や職位)と答える人はいません。企業研修のなかでも、どういうときにリーダーシップがあると感じたかを尋ねると「あのひとは部長だから」とは誰も言いません。いろいろな言葉がでてきてそれらをまとめると「人間力」、「判断力」、「包容力」、「人材育成」などの言葉に集約されていきます。また未開の地を切り開いていく勇気や行動力も必要です。経営層や管理者にだけリーダーシップがあればいいという概念ではもはやこのネット社会を生き抜いていけない現実が有ります。一般社員にもリーダーシップが求められています。いまはその大きな転換期にあるように思います。
自分を縛る枠を取り払う
いま日本では役職についている人への批評や発言ばかりに終始する傾向が強い。日本人一人ひとりが変わる必要があることにピンときていない。閉塞感がある。世の中を変えていく大事なもの、それをリーダーシップというのならそれは誰にでもあるものと捉えています。わたし自身も、子供のころから自分に枠をはめておりそれをずっと守って生きてきました。そして人との関わりのなかであるときから苦しさを覚えるようになりました。そのときコーチングを受けながら内省を進めていくと、子供のときの強烈な体験がもとでできた感情への枠組みがずっと心のなかにあり、大人になってもずっとその枠組みに縛られていたことに気付きました。その枠をとる努力をしてみたら心も体も自由になりました。そしてまったく予想すらしなかった屋久杉のイメージが出てきたり、自分がやりたいことをやってみようという想いが出てきたりしました。
これは自分だけに起きていることではない。世界の人に問いかけてみよう。そんな想いから「リーダーシップ世界大会」を仲間に呼びかけました。以前の自分ならそんなことをできるとは思わなかったし行動もしていなかった。「リーダーシップ世界大会」という発想もなかった。でも今回は疑うことなくそれができたのです。
準備は2009年にスタートしました。最初の呼びかけに応じてくれた人は2人でした。それから少しずつ増えて6人が中心となって進めていきました。まず既存の概念を打破り新しいコンセプトを作り上げるところからスタートしました。メンバー一人ひとりの疼きは何か、その種をしっかりと熾そうとしました。というのも中心にいるひとりのコンセプトやビジョンだけではメンバー一人ひとりの火種を大きくすることはできなかったのです。メンバーには何かしたいという疼きはあるけれど、どこに向かっていきたいという納得できる共通のゴールがなかったのです。
疼きを大切にする
「なぜ自分は関わるのか?」「自分は何に疼いているのか?」はメンバー一人ひとりそれぞれ異なります。その火をきっちり熾すことに半年近くかけました。そこでメンバー一人ひとりが持っているビジョンや概念などを出し合い新たに共通なビジョンやコンセプトを創るということに注力したのです。
そういうことをやって火をしっかり熾した。企画が少しずつ整い始めたころに3.11の東日本大震災に見舞われました。そこでもう一度、一からビジョンやコンセプトを見直しました。大震災はまさに一人ひとりの生き様が問われる試練だと考えました。そしてだんだん中心にある火が、一人ひとりの心のなかにおおきく燃え出し、具体的な行動へと加速していきました。大会のプログラムやホームページ、パンフレットなどをメンバーの手で造っていきました。(メンバー全員がボランティアで参加していました。)
基調講演や分科会のスピーカーも大会の主旨に賛同してくださった素晴らしい方々にお願いすることができました。
大会のコンセプトは、「全員参加型リーダーシップへの旅」(あなたのユニークさが未来を創りだす)にまとまっていきました。
そしていよいよ大会まで4カ月になろうという時点になると、中心となるメンバーが必要なタイミングで次々と手をあげて参加してくれました。プロモーションに情熱を注ぐ人がメンバーになったり、プロジェクト管理をするメンバーが加わったり、当日の受付や誘導、ムービー作成など大会に共感し、それぞれの得意分野でアイディアを振るうコアメンバーが一気に増加しました。それまでのコアメンバーの力と相俟って大きな推進力が生まれました。大会のサポーターも増えていきました。たったひとりの想いを口に出したことからはじまり、そこに疼きを感じる人達が集まりとてつもない大きな動きへと変容していく、このプロセスこそがこれからの企業にも求められていく重要なことを示唆しているように思います。
ビジョンやコンセプトに向かっているけれど、実際何が起こるか予測しにくい。準備のプロセスそのもので行き先が決まる。準備の内容が不十分だとやりたかったことが実現できないこともあります。準備しているプロセスそのものが結果を生み出す。行き着くところはプロセスの結果です。プロセスの段階で人間の気持ちや知恵がじゅうぶん入っているかどうかが大事なことです。準備したことが実際に起きるのだと心の底から実感しました。
また「リーダーシップ」には外向きのパワーが必要なように思いますが、実は常に必要というわけではないということもわかったのです。必要ないというのはやや極端な表現ですが、心に火を熾すことが大事で、火を熾すには自分をオープンにして自分の大事なものを語ること。自分が疼いていることはこういうものです、是非知って欲しいと言うことだと思ったのです。企業を通して関わっている人だけでも、プライベートに関わっている人だけでもない、企業もプライベートもない、想いを共有してくださる人にシームレスに伝えようとすることが大切なことだと思ったのです。マーケティングでいえば「プッシュ型」ではなく「プル型」です。これはすごく大事なことだと思います。
チームの本質とは-全員参加型リーダーシップ
この大会を実施するにはやはり苦しいことや心配ごとはありました。何人来てくれるのか? 採算は大丈夫か? と。でも自分だけで抱え込まずコアメンバーで共有しました。すると不安を打ち消す色々なアイディアが出てきたのです。まさに渡り鳥の編隊のように、ある事象についてはトップを走っている人が別の事象では少し下がり、別の人がトップを切る。そういうダイナミズムを平気で受け入れる。それが大事です。企業でも同じです。人にはそれぞれ得意、不得意がある。得意な人が引っ張る。その人が息切れしたらたぶん別のフェーズに入っているのです。
渡り鳥の編隊は野生ですが「チーム」です。一羽一羽の知恵と渡り鳥の編隊としての知恵の両方で成り立っているようにみえます。特に編隊の知恵が大事です。チームワークといっても単なる仲良しチームではないのです。妥協することを重んじることではなくとことん我を追及するということ。ほかの人が何を言おうが私は何をしたい、とテーブルに載せることが大切です。エゴくらい出してもいい。それくらい自分を探ってみることが重要です。
我がぶつかり合うと、色々なことが起こります。内なるエネルギーが外に出てぶつかり合うようにみえるけれども、違いを理解してゴールに向かって協同し合い新たな道を創る。これこそが究極のチームワークの姿であろうと思っています。
大会では、実際にとてつもないことが起きたのです。自分のユニークさをとことん追及するワークショップを行いました。エネルギーが満載です。全員がユニークさにこだわり自分を出している。想像以上のことが、すごいことが起きたのです。人間のもつ可能性は無限、ユニークさを出し合ったときの究極の姿を見たといっても過言ではありませんでした。まさに全員参加型リーダーシップの真の姿を見ることができました。
最終回に寄せて-自分の生き方を見つけ行動することがリーダーシップ
シリーズ最終回の今回は具体的な話となりました。シリーズ3回目までの話を実際に私が具現化し、体験を通して立証したことをお話してきました。「リーダーシップ」という言葉にネガティブな人の中にも、全員参加型リーダーシップを体験したあとには180度発想が変わった人もいました。「リーダーシップって大嫌いだったけれども、自分のユニークさを大事にすることだとわかり、それはとりもなおさず、自分を素直に受け容れることですね」と話してくださった方もいます。
リーダーシップをこのように理解している方はまだ世の中では少ない状況です。今の閉塞感を打ち破るには一人ひとりの疼きを行動に出すことがとても重要と思っています。だから「全員参加型のリーダーシップ」を広めたいと私は心から思っています。リーダーシップという言葉は米国発ですが、日本語でいい言葉があれば変えてもいいとも思います。日本人がもっている人間力をリーダーシップというなら、それを世に知らしめてしかも世界の人と共有して新しい未来を作っていきたいと思います。
日本人だからできる。世界をリードできる。日本人は、「日本人は駄目だ・・・」という発想をしがちです。そこも日本人らしさですが、駄目だと思ったらそれをアピールするくらいのずうずうしさも欲しいところです。大きな意味では日本人としていま自分が在る意味は何だろう。それを世界に問いかけよう。いま日本人で生まれたことの意味は何で、どう世界に伝えるか。
自分の生き方がいま問われています。その生き様そのものがリーダーシップの源泉です。リーダーシップはよそにあってそれを持ってくるのではなく、自分のなかにあり、自分が疼くことが大切です。自分が疼く対象を見つけるのがリーダーシップの源泉です。そしてその疼きにそって行動し続けることです。そのためにも流れる時間のなかで毎日振り返り(内省)の時間をもって自らの内なる声を聴き続けていただきたいと願っています。
講師紹介
【渡部 誠(わたべ まこと)】
1973年日本IBMに入社。銀行、証券担当のSE、管理職を経て役員補佐、ゼネラルビジネス企画、PC事業、マーケティングを経験し、 2006年から日本IBM人財ソリューション講師。
リーダー育成研修、経営職・管理者研修を中心に人材育成研修コースを担当。パーソナルコーチングおよびビジネスコーチングも担当。
同じリーダーシッププログラム修了生の仲間たちと一緒にリーダー育成の活動も行なっています。
2011年11月には「リーダーシップ世界大会2011を東京で開催しました。
リーダーシップ世界大会2011
日本アイ・ビー・エム(株)、日本アイ・ビー・エム人財ソリューション(株)が主催した大会ではありません。
筆者 渡部 誠が主催者の一人として関わった大会です。
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