ThinkPadのキーボードを語る上で忘れてはならないのが、中央に赤くアクセントを与える「トラックポイント」。1992年に登場した初代ThinkPad700C以来搭載されているポインティングデバイスで、現在の多くのノートPCが採用しているタッチパッドと異なり、移動したい方向にかけた力を感知してポインタを操作するデバイスだ。これは一般的に「ポインティングスティック」と呼ばれ、赤い“棒”の下には4個のひずみセンサーが配置されていて、棒を上下左右に押すことでセンサーにひずみを与えて入力を行う。
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「“動く”ポインタに対して、トラックポイント自体は“動かない”ため、タッチパッドとは大きく操作感が異なります。確かにタッチパッドは指でなぞった軌跡と同じようにポインタが動くため、とっつきやすいかもしれません。でも、トラックポイントも10分も使っていればすぐになれることができます。すると、今度はとても使いやすく感じられるはずです」(トラックポイント開発担当:森秀俊) |
| トラックポイントの独特の操作感は、赤い“棒”を押す力と実際に移動するポインタの関係にある。少し力を入れるとポインタがドット単位で移動し始め、そのまま力を入れ続けるとその移動スピードがスムーズに加速し、さらに大きな力を加えると急激に加速してポインタを高速で移動させることが可能。例えば、画面の端から端といったように移動距離が長い場合でも、ほんの僅か指に力を入れるだけで素早くポインタを移動させることができる。また、僅か直径数ミリのトラックポイントはキーボードの中央に配置できるため、タッチタイピングのホームポジションから手を放すことなくマウスポインタを操作することができるのもメリットだという。 |
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「トラックポイントは登場以来、その使い勝手は着実に進化してきています。2003年には形状の異なる3種類のキャップを本体に同梱し、ユーザーの好みに応じて取り変えることができるようにしました。また、これと同時にトラックポイントの感度を上げ、弱い力でもポインタを動かすことができるようにもしました」(トラックポイント開発担当:森秀俊)

このトラックポイントと絶妙のコンビネーションを組むのが「センターボタン」。このボタンを押しながらトラックポイントを動かすことで、スクロールやポインタ周囲の拡大機能を利用することができる。
「センターボタンの機能は、ポインタの下にあるウインドウすべてに使えるというメリットになかなか気が付いてもらえません。例えばブラウザのウインドウを何枚も立ち上げていて、アクティブでないウインドウの上にポインタを移動してセンターボタンを押せば、アクティブでないままでもスクロールや拡大を行うことができるのです」(トラックポイント開発担当:森秀俊)
こうしたThinkPadの特徴であるトラックポイントではあるが、その一方で企業が導入するような場合、一般的なタッチパッドのユーザーには受け入れられないこともある。そこで、ThinkPadを誰にでも使って欲しいという開発者の思いは、トラックポイントとタッチパッドの両方を搭載したノートPCを誕生させる。それが2002年に登場したThinkPad T30で初めて搭載された「UltraNav」だ。 |
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「UltraNavはこれまでタッチパッドに慣れたユーザーがThinkPadでもそのままの使い勝手で使えるだけでなく、ThinkPadでトラックポイントを使ってきたユーザーにとってもメリットは大きいと思います。“普段のポインタ移動はトラックポイント、1ドット単位のような細かな操作にはタッチパッド”といった使い分けや、設定でタップゾーンに機能を割り当てることで、タッチパッド全体をスクロールエリアにしたり、各種ショートカットとして使ったりすることもできます」(トラックポイント開発担当:森秀俊) |
ThinkPadのキーボードの使い勝手のよさは、トラックポイントやUltraNavのような、デバイスによるものだけに限らない。ノートPCのキーボードという限られたスペースの中に、デスクトップPCに近いキーボードレイアウトを取り入れ、デスクトップ機並みの機能性を持っている。その反面、狭い面積にびっしりと並んだキーを操作する場合、どうしても他のキーに指が当たってタイプミスすることにつながってしまう。そこでThinkPadの開発者はこのタイプミスをなくすために、キーボードのあらゆる箇所に工夫を積み重ねてきた。
| 「ThinkPadのキーのほとんどは周囲を斜めにカットしてあります。一見キーの面積が小さく押しにくいようにも思われますが、実はこれによってタッチタイピングの際に、自然に指がキーの中心を押すことになりタイピングを確実なものにしてくれるのです。また、特に大きくカットされたキーの手前側は、自然とキーの奥側を押すように促し、また、手前側のキーを押した際に爪が奥のキーを不用意に押してしまうことを防ぐ効果があります」(キーボード開発担当:堀内光雄) |
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こうした、他のキーを不用意に押してしまうことに対する対策のひとつとして挙げられるのが、一部のキーとキーの間に仕切りとして配置された「バリア」。「F1」と「Esc」の間や、カーソルキーと「Shift」キーの間(サブノートサイズのXシリーズ)などには、不用意に近接したキーが入力されないように、あえて背の高いバリアを配置してある。 |
また、後列ファンクションキー部の後方に配置されている本体ケース部は、キーと接する面が階段状にカットされている。これは、爪を伸ばしたユーザーがキーを操作したときに、爪がケース側に当らないようにするための配慮だ。さらにキーボード手前のパームレストの表面は、キー側に進むにしたがって緩いカーブを描いてスロープ状に下がっている。一番手前の列のキーは、タッチタイピングのときに親指の側面で操作することが多い。そこで、手前にあるパームレスト表面を斜めに傾斜させることで、指がパームレストに当たらないようになっているのである。
「キーボードの周囲の設計は私の担当ではないのですが、特にパームレストのスロープ部のアールだけは毎回私が決めていました。こうした使い勝手は、実際にPCショップの店頭に並んでいるさまざまなPCを触ったりしてアイデアの正しさの確認をしてきました。新しいキーボードを作る時には毎週のように通っていました」(キーボード開発担当:堀内光雄)
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