<ご参考資料>
2001年5月22日
PIXIE DUST
記憶密度4倍、最大容量400GBのHDDが実現へ
−新素材「ルテニウム」による多層磁気コーティング技術を採用−
[米国カリフォルニア州サンノゼ 5月21日(現地時間)発]
IBM (本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:ルイス・V・ガースナー)は21日(現地時間)、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)のデータ記憶密度を従来の
4倍にまで拡張できる、全く新しい磁気コーティング技術を世界で初めて実用化したことを発表しました。
過去10年間、HDDのデータ記憶密度は、18ヵ月ごとに2倍になるという驚異的なペースで増加してきました。特に、1997年以降は、集積回路に関する「ムーアの法則」
をはるかに上回る12ヶ月ごとに2倍というペースです。しかし、ディスク上の磁気領域が小さくなり過ぎると、一般的な製品の耐用年数であっても磁化方向を維持できない、す
なわち記録されたデータが消失する可能性があると指摘されていました。
この現象は、「スーパーパラマグネティック効果 (superparamagnetic effect)」と呼ばれ、以前から、6.45平方センチ(1平方インチ)あたり
の密度が200〜400億ビット(20〜40ギガビット)に達すると発生すると予測されており、現在の製品の面密度はほぼこの値となっています。
本日の発表は、このデータ・ストレージ産業における最大の障壁を克服する画期的な技術です。この技術の鍵となるのは、2つの磁性層にはさまれた厚さが原子3個分のルテニウ
ム (ruthenium) の層です。ルテニウムとは白金に似た貴金属で、ほんのわずかな数の原子によって劇的な効果が得られることから、IBMの科学者は、このルテニ
ウム層を「ピクシー・ダスト(pixie dust: 妖精のホコリ」というニックネームをつけています。
専門的には「反強磁性結合(AFC: antiferromagnetically-coupled)メディア」と呼ばれるこの新しい多層コーティングによって、
2003年までには、HDDの1平方インチあたりのディスク領域に、1,000億ビット(100ギガビット)のデータを格納できるようになると考えられています。現在、
1平方インチあたり最大25.7ギガビットの面密度を持つAFCメディアが、IBMのノートPC用HDD製品「TravelstarTM」に搭載されてすでに出荷されています。IBMは、将来的に全HDD製品ラインにAFCメディアを採用する予定です。
AFCメディアによる面密度の増加は、急速に増大している消費者向けデジタル・データ(音楽、写真、プレゼンテーション、およびビデオ)の記録方式を単純化するとともに、
少消費電力で小型のHDDを志向する業界傾向の加速化や、高機能な新デジタル・メディア・アプリケーションの開発促進などにつながると予想されます。
100ギガビットの密度は、かつてはスーパーパラマグネティック効果のために実現不可能と考えられていました。この問題に対する解決法の一つは、磁化方向の変化に対する耐
性がより高い、新たな磁性合金を開発することですが、新合金にデータを記録することは困難です。
AFCメディアはこの問題を解決するための新技術です。AFCメディアでは、非常に薄いルテニウムの層によって、隣接する磁性層の磁化が反転することが特徴です。磁化方向
が逆になることによって、多層構造全体の厚さが磁気的には実際より薄くなります。このため、小さく高密度なビットを簡単にAFCメディアに書き込むことができる一方で、メ
ディア全体としての厚さによって磁化が維持されるのです。
AFCメディアでは、2年以内に、100ギガビットの面密度によって以下のキャパシティが達成されると考えられます。
- デスクトップPC用HDD -- 400ギガバイト(GB)
これは、本に換算すると約40万冊分の情報、DVDでは84枚、CD600枚に相当します。 - ノートブックPC用HDD -- 200 GB
- IBM製1インチ・マイクロドライブ -- 6 GB
これは、PDA等の携帯端末用の画像圧縮方式「MPEG-4」を利用すれば、ビデオ13時間分(映画約8本分)に相当します。
IBMは、反強磁性結合構造の研究、開発、および製造を世界に先駆けて行っています。反強磁性結合構造には、素材の電子と磁界との間の「スピントロニック」な相互作用に起
因する注目すべき特性があります。1990年にIBMの科学者が、ルテニウム原子の薄い層が非磁性スペーサー層要素に隣接する強磁層間に強力な逆平行結合を作り出すことを
発見しました。この構造は「GMRヘッド」と呼ばれ、1997年にIBMによって投入された初のディスク・ドライブ用巨大磁気抵抗読み取りエレメントに使用されました。現
在では、ほとんどすべてのディスク・ドライブでGMRヘッドが使用されています。
■カリー・マンス (Currie Munce:IBMストレージ・テクノロジー部門アドバンスド・ハード・ディスク・ドライブ・テクノロジー担当ディレクター兼IBMア
ルマデン・リサーチ・センターのストレージ・システム/テクノロジー担当ディレクター) のコメント
「AFCメディアは、スーパーパラマグネティック効果に起因する高密度データの劣化を回避するために、ディスク・ドライブの設計においてもたらされた、初めての大幅な方針
転換です。私たちは、AFCメディアの動作の複雑な物理現象を深く理解することによって、業界で初めてAFCメディアを製品として出荷することに成功しました。現在は、こ
の技術をさらに拡張して、1平方インチあたり100ギガビット以上の磁気記録を実現するための研究を行っています。」
なお、本年3月27日に米国で発表したIBMのノートPC用2.5型HDD Travelstar製品では、AFCメディアを採用しています。
Travelstar 48GH -- 容量48 GB、5,400 rpm、最大面密度21.7ギガビット/平方インチ
Travelstar 30GN -- 30/20 GB、4,200 rpm、最大面密度25.7/23.2ギガビット/平方インチ
Travelstar 15GN -- 15/10/6GB、4,200rpm、最大面密度25.7/21.2/21.2ギガビット/平方インチ
以上

IBM、TravelstarはIBM Corporationの商標。
IBMコーポレーション : http://www.ibm.com/
IBM Hard disk drives : http://www.ibm.com/stora
ge/hardsoft/diskdrdl.htm
IBM Research :
http://www.ibm.com/research
