2006年6月29日
<ご参考資料>
IBM®とジョージア工科大学がシリコンの動作速度記録を更新
超低温の半導体チップが絶対零度近くで1秒間に5,000億サイクルで動作
[米国ニューヨーク州ソマーズおよびアトランタ 2006年6月20日(現地時間)発]
IBMとジョージア工科大学は20日(現地時間)、セ氏マイナス268度(華氏マイナス451度、4.5ケルビン)の極低温まで「冷却」することにより、500GHz(1秒当たり5,000億サイクル)以上の周波数で動作可能な、初のシリコン・ベースの半導体チップを、両者の共同研究チームが開発したと発表しました。このような極低温は、自然界では外宇宙でなければ存在しませんが、地球上では液体ヘリウムのような寒剤を用いることで人工的に実現可能です。(自然界で可能な最も低い温度である絶対零度は、セ氏マイナス273.15度、華氏マイナス459.67度で発生します)
参考のために比較すると、500GHzというのは、通常約2GHzで動作する現在の携帯電話に対して、250倍以上高速ということになります。コンピューター上のシミュレーションから、この半導体チップで用いられているシリコン・ゲルマニウム(SiGe)技術は、最終的に室温でもより高速(1テラHz弱=1,000GHz)な動作周波数も実現することが見込まれています。
IBMとジョージア工科大の共同研究チームによるこの実験は、極低温でより高速な動作を示すシリコン・ゲルマニウム(SiGe)デバイスの極限速度を研究するプロジェクトの一環として実施されています。研究に使用されたチップは、200mmウエハー上でIBMが作製した第4世代SiGe技術の試作品によるものです。室温では約350GHzで動作します。
ジョージア工科大学の電気・コンピューター工学部(School of Electrical and Computer Engineering)のバイヤーズ教授(Byers
Professors)であり、グローバル技術開発センター(Global Engineering Development Center:GEDC)の研究者であるジョン・D・クレスラー(John
D. Cressler)は次のように述べています。「ジョージア工科大とIBMは史上初めて、大型ウエハーとシリコン互換低コスト製造技術を活用した商用シリコン・ベースの技術によって、1秒間に5,000億サイクルの高速動作が達成可能であることを示したのです。この作業は、シリコン・ゲルマニウム・ナノテク技術を駆使して実現できる可能性の上限を新たに定義し直すものです。」
IBMシステムズ&テクノロジー・グループのバイス・プレジデント兼チーフ・テクノロジストであるバーニー・マイヤーソン(Bernie Meyerson)は次のように語っています。「ジョージア工科大とIBMによるこの画期的な共同研究は、シリコン・ベースの半導体の性能限界を再定義するものです。IBMは、学会および業界のパートナーと緊密に協力し、新世代の高性能、高エネルギー効率のマイクロプロセッサーを実現する知見とイノベーションの提供に力を入れています。」
SiGeは、文字通り現代のあらゆるマイクロチップを支える原材料であるシリコンの電気特性をゲルマニウムによって強化することにより、チップの動作効率の向上をはかるプロセス技術です。SiGeは、携帯電話など先端通信デバイスに実装される半導体チップの性能を向上させ、消費電力を低減します。IBMは1989年に初のSiGe技術を発表し、1998年10月には業界初の標準量産SiGeチップを発表しています。以降、IBMが出荷したSiGeチップは数億個に及んでいます。
超高周波シリコン・ゲルマニウム回路は、商用通信システム、防衛エレクトロニクス、宇宙開発、リモート・センシングなどで実用化される可能性を秘めています。従来の低コスト技術による製造が可能なシリコン・ベースの技術でこのような超高速を実現することにより、大量生産用途への道が開けます。これまで、このように高レベルなトランジスターの性能を達成したのは、より高コストなIII-V族化合物半導体で製造した集積回路だけでした。
シリコン・ゲルマニウム・デバイス、さらにはこれから構築することのできる回路の性質をより良く理解することで、将来必要となる改善への重要な鍵が得られることになります。
クレスラーは次のように説明しています。「私たちは、単純な理論から想定されるよりも高速化する可能性があり、最終的にはデバイスをさらに高速化できるような、超低温下のデバイスの効果を観察しました。こうした先進のトランジスターの基本的な原理を理解することで、次世代のシリコン・ベース集積回路をさらに改善することにつながる知識を得ることができるのです。」
シリコン・ゲルマニウム技術は、エレクトロニクス業界にとって大きな関心の対象となってきました。この技術により、標準的な大量生産に適したシリコン・ベースの製造プロセスと互換性がある製造技術を活用して、トランジスターの性能を大幅に改善することが可能になるためです。原子レベルでシリコン・ウエハーにゲルマニウムを導入することで、技術者はシリコンの長所の多くをそのままに、性能を大幅に向上させることができるのです。
研究チームにはクレスラーに加えて、ジョージア工科大博士課程の学生であるラムクマール・クリシバサン(Ramkumar Krithivasan)とユアン・ルー(Yuan
Lu)、韓国・ソウルの高麗大学のジェイ・スン・リェー(Jae-Sun Rieh、元IBM)、そしてニューヨーク州イースト・フィッシュキルのIBMマイクロエレクトロニクスのマーワン・カーター(Marwan
Khater)、デビッド・アールグレン(David Ahlgren)、グレッグ・フリーマン(Greg Freeman)が含まれています。今回の結果は、IEEE
Electron Device Letters誌の7月号で報告されます。この研究は、IBM、NASA、ジョージア工科大GEDCが後援しています。
以上
IBMは、IBM Corporationの商標。
その他の社名、製品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
<ホームページ>
日本IBMトップページ:http://www.ibm.com/jp/
プレスリリース:http://www.ibm.com/press/jp/
