2007年12月7日
世界の人事責任者が直面している課題についての調査
−日本では雇用の柔軟性を重視。人事の評価指標と分析技術の導入が課題−
IBMビジネスコンサルティング サービス株式会社(本社・東京都千代田区、社長・椎木茂 以下IBCS)は7日、IBMが世界の主要業界の人事責任者を対象に行った調査結果「IBM
Global Human Capital Study 2008」を発表しました。今日のビジネス環境の変化に対して、企業が人財(注)の競争力をより高めるための変革をどのように行っているかについて調査、分析したものです。
調査は、2007年3月から5月にかけて、世界40ケ国(対象地域は、北米・中南米、欧州・中東・アフリカ、日本およびそれ以外のアジア太平洋地域)の計400人以上の企業の人事責任者を対象に主にインタビュー形式で行いました。日本では約40社の人事責任者にインタビューを行いました。この結果、世界の企業が重要課題と認識している人財戦略上のテーマは以下の4つに集約されることが明らかになりました。
1. 変化への適応力の向上
- 激変するグローバル市場を勝ち抜くためには、変化に俊敏に対応できる人財が必要である。しかし、変化に対する人財について「適応能力は非常に高い」と回答した企業は全体の14%に過ぎない。また、日本において「適応能力は非常に高い」と回答する企業はなかった。
- 適応力が高い企業は、「将来必要となるスキルの予測」、「専門知識を持つ人財の適正な配置」、「従業員相互のコラボレーション環境の整備」を実現している。一方、コラボレーションを阻害する要因は、各種ツールなどのテクノロジーの欠如ではなく、縦割り構造や従業員の多忙といった組織的な要因が大きい。
- 日本では、重要なスキルや専門知識を持つ人財を特定する場合、職務履歴データベースに頼る傾向が高い(世界:39%、日本:70%)。
2. リーダー不足の解消 −将来の成長の危機−
- 全体の約75%の企業が、リーダーシップ能力の開発を人財育成における最優先課題として挙げている。
- アジア太平洋地域(日本を除く)を拠点とする企業の約半数が、リーダー不足を最重要課題と挙げている(全体の47%)。地域の急激な成長と、経験豊富なリーダーが当初から少なかったという状況が相まって、リーダー不足が急速に顕在化している。
- 製造業では、新しい市場・地域へ参入することをビジネス上の最優先課題としているため、リーダー人財の不足に対して大きな懸念を抱いている(全体の45%)。
- 先進的な企業では、従来の人事部門による教育プログラムの提供だけでなく、事業部門と一体となって次世代リーダー候補を選出し、育成を支援する環境、風土作りを行っている。
3. 有能な人財の獲得・保持
- 将来のビジネス・ニーズに応える人財の迅速な育成や、ビジネス戦略へのスキルの適合が大きな課題となっている。
- 多くの企業がOJT(実地トレーニング)やクラスルーム型研修を育成の効果的手段と考えている。しかし、これからは変化するビジネス・ニーズに応えるためのスキル速成手段としては難しいと認識している。特に、日本においては、Webを介した仮想クラスルーム型研修などのテクノロジーを活用した教育方法やメンタリング(アドバイス役の設置)の導入があまり進んでいない。
- 離職率が上昇傾向にあると回答する企業が全体の半数近くに達するにも関わらず、人財の惹きつけと保持への課題認識は低い。
- 人財の惹きつけには企業のブランド力の高さが重要な要因であり、その保持のためには新しい仕事、やりがいのある仕事、およびキャリアアップ機会の明確化が重要な課題となっている。
- 労働人口の高齢化と経済成長によって労働力の流動性が高まる中で、優秀な人財の確保のためには、人財ライフサイクル全般を注視し、社内人財の育成とともに、人財の惹きつけと保持にも注力する必要がある。
4. 人財分析を通じた成長の促進
- 人財に関する意思決定を行う場合、人財に関するデータや情報を十分に活用しきれていない。
- データ活用の最も大きな障壁は、人事システムの完成度の低さなど、システムに関連する課題であり、評価指標の未整備やデータ分析の経験不足がこれに続いている。
- ビジネス戦略を支え、成長を促進するためには、人事部門は定量化されたデータ・情報に基づいた人財戦略の立案、意思決定を強化する必要がある。
また、日本企業に対する調査の結果、顕著な特徴は以下のとおりでした。
日本企業は雇用の柔軟性を高める必要性を認識している
- 労働人口構成の変化や激化する市場競争、変化するビジネス環境に対応するため、過去2年間で労働形態の多様化が大幅に進行している。派遣/臨時従業員の活用(世界全体で47%に対し、日本は78%)や退職した社員の再雇用(世界全体で26%に対し、日本は76%)などが進んでいる。
個人と会社の価値観の調和が、有望な人財を惹きつけ、保持するために重要
- 日本では人財の惹きつけ、保持には「会社と個人の価値観が一致していること」、「やりがいのある仕事があること」が特に重要な要素となっている。
人事の評価指標の活用や人財分析のスキル開発に課題があると認識している
- 日本では、人財の活用度を評価するにあたり、一人当たりのコスト・利益・売上など財務指標とは関連づけている。しかし、従業員の定着率/離職率や従業員満足度などは、人財活用度の評価指標としては十分に活用されていない。
- 日本では、人財データを活用するための改善方法として、データの品質向上を最も重要視しており(世界: 48%、日本:62%)、分析ツールなどのテクノロジーの活用、人事部スタッフの分析スキル向上については、次の段階での改善と位置づけている。
この調査で明らかになった人事責任者の抱える課題をふまえ、IBCSは、自社で培った実績、技術をビジネスへの深い洞察と統合して、お客様のビジネス変革の成功を支援します。特に、人事施策の観点では、激化する市場競争やビジネスのグローバル化、労働人口の減少といった変化の中にある今の日本にあって、企業が新たな付加価値を生み出し続けるために最重要な経営資源・財産である「人財」価値を最大化する「ヒューマン・キャピタル・マネジメント(人財管理)」の提供を、さらに強化していきます。
注: IBCSでは、「人材」を、「人財(ヒューマン・キャピタル)」と捉え、企業が継続的に競争優位を保持するために必要不可欠な知的資産と考えています。「人財」をいかに活用し、効果的にマネジメントするかが、企業経営においてますます重要になってきます。
IBMは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
