2007年5月7日
IBM、コンピュータ・チップ製造に自然界のプロセスを応用
-初めて「自己組織化」を製造に応用し、次世代マイクロプロセッサーのナノワイヤー周囲に究極の絶縁体である真空地帯を形成
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[米国ニューヨーク州アーモンク 2007年5月3日(現地時間)発]
IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)は3日(現地時間)、従来のチップ製造に対して画期的な、次世代コンピュータ・チップの製造に自然のプロセスを利用し、初の「自己組織化型」ナノテクノロジーを応用したことを発表しました。
IBMは、貝殻、雪の結晶片、歯のエナメル質を作り出す自然のパターン形成プロセスを利用し、各コンピュータ・チップ内に隣り合って密集しているナノ規模の長大な配線の周囲に、絶縁のための真空地帯を作る何兆個もの穴を形成しました。
この手法を使ったチップを動作させた場合、従来の手法を用いるよりチップ上の電気信号が最先端のチップよりも35%高速に流れる、または消費エネルギーを35%節約できることが、IBMの研究所で実証されました。
IBMが特許を取得したこの自己組織化プロセスは、研究所で将来有望であることが示されたナノテクノロジー製造方式を初めて商用生産環境に移行しました。従来の製造手法を用いながらも、ムーアの法則で2世代分に相当する配線性能の向上を一気にもたらします。
この新しい絶縁方式は、科学者からは一般的に「エアギャップ(airgap)」と呼ばれていますが、これは誤った呼び方です。なぜなら、この“ギャップ”は実際には真空で、空気のない状態だからです。IBMが採用した手法は、コンピュータ・チップ上の銅配線の間に真空地帯を形成し、消費電力を節減すると同時に電気信号がより速く流れることを可能にするものです。自己組織化のプロセスにより、“ギャップ”の形成に必要なナノ規模のパターン作成が可能になります。この方法なら、現在のリソグラフィック技術で実現できる規模よりもかなり微細なパターンを作成することができます。
真空は、配線静電容量に対する究極の絶縁体であると考えられています。配線静電容量は、2つの導電体(この場合はチップ上の隣り合った配線)が互いの電気エネルギーを減損させたり吸収したりする際に発生して、望ましくない熱を生成し、チップを通過するデータ伝送速度を減速します。
これまで、チップ設計者は多くの場合、チップを流れる電力をいっそう強めることで静電容量の問題に対処することを余儀なくされ、そのプロセスで他の問題が新たに発生していました。また、絶縁能力の高い絶縁体も使用されていましたが、こうした絶縁体はチップが小型化するほど脆弱になり、またその特性は真空の絶縁性能とは比較になりません。
自己組織化プロセスはすでに米国ニューヨーク州イーストフィッシュキルのIBMの最新製造ラインに統合されており、2009年にはIBMの製造ラインに全面的に取り入れられてチップ製造に使用される予定です。このチップ技術はまずIBMのサーバー製品ラインで使用され、その後IBMが他社向けに製作するチップで使用される予定です。
自己組織化エアギャップ・プロジェクトのチーフ・サイエンティストでありIBMフェローのダン・エーデルスタイン(Dan
Edelstein)は、次のように語っています。「私たちは今回、世界で初めて自己組織化により大量のポリマーを合成して、大量生産が可能な既存の製造プロセスにそれらを組み込む能力を実証することができました。自己組織化の手法を研究所から工場へと移行することで、既存の素材や設計アーキテクチャーが実現できる限界よりもさらに小型で高速かつ省電力のチップを製造することが可能になりました。」
エーデルスタインが率いたIBMチームは、今ではチップ製造の標準的な手法となっているアルミニウムの代わりに銅配線をコンピュータ・チップで使用する手法を発明しました。彼らはチップの構築法と多くの業界や用途にわたるチップの使用法を変革した、10年間におよぶIBM研究所のチップにおけるイノベーションを先導してきています。
自己組織化の秘密
IBMの画期的技術の秘密は、IBMの科学者がどのように、一貫して高性能な成果を上げる何百万個ものチップを生産できるように自己組織化プロセスを研究の場から生産・製造環境に移行させたかにあります。
現在製造されているチップは、銅配線の周りを絶縁体が囲んでいます。この製造法では、回路パターンを作成するためにマスクが使用されており、マスクを通して露光を行い、後の工程で不要な部分を化学的に取り除いています。
自己組織化によってエアギャップを生成する新しい手法では、マスキングと露光・エッチングのプロセスを省きます。IBMの科学者たちは、そのプロセスの代わりに適切に混合した化合物を、配線チップ・パターンを刻んだシリコン・ウエハーに注いでから焼くという手法を開発しました。
特許を取得したこのプロセスは、300ミリメートルのウエハー全体にナノ規模の均一の穴を何兆個も形成して、一定の規則性をもって化合物を組織化するために適切な環境を提供します。これらの穴は直径わずか20ナノメートルで、最小で現在最先端のリソグラフィー技術を使って作成できるサイズの5分の1までの縮小を実現します。
穴が形成されると、珪酸化炭素ガラス(carbon silicate glass)が取り除かれて、配線の間に上述のエアギャップ、すなわち真空地帯が作られます。これによって、電気信号の流れを35%高速化、または消費エネルギーを15%節約することが可能になります。
自己組織化は、コンピュータ・チップの構築に有用な素材を作成するために可能な手法として、IBMおよび世界中の研究所で科学者たちが研究してきたコンセプトです。このコンセプトは、毎日の自然の中で発生しています。これは、私たちの歯でエナメル質が形成される方法であり、貝殻が作られるプロセスであり、水が複雑な雪片に姿を変える過程と同じものです。ただ、自然に発生するプロセスはすべて固有の動きですが、IBMは、全く同じ穴を何兆個も形成するように自己組織化プロセスを導くことに成功した、という点に大きな違いがあります。
この新しいテクノロジーは、操業の中断や新しいツールを必要とせず、あらゆる標準CMOS製造ラインに組み込むことが可能です。自己組織化プロセスは、米国カリフォルニア州サンノゼのIBMアルマデン研究所とニューヨーク州ヨークタウンのT.J.ワトソン研究所によって、共同で開発されました。そして、IBMと強力な業務提携関係にある米国ニューヨーク州アルバニーの世界的な研究開発センター、アルバニー・ナノテク施設内にあるアルバニー大学のナノスケール・サイエンス&エンジニアリング学部と、ニューヨーク州イーストフィッシュキルのIBM半導体研究開発センターにおいて、将来の商用生産に向けての手法として完成されました。
IBMマイクロエレクトロニクスの詳細は、http://www.ibm.com/chips/(US)をご覧ください。
IBMリサーチの詳細は、http://www.ibm.com/research(US)をご覧ください。
以上
当報道資料は2007年5月3日(現地時間)にIBM Corporationが発表したものの抄訳です。原文は下記URLを参照ください。
http://www.ibm.com/press/us/en/pressrelease/21474.wss(US)
<関連サイト>
日本IBM半導体ソリューション トップページ:http://www.ibm.com/jp/chips/
<ホームページ>
日本IBMトップページ:http://www.ibm.com/jp/
プレスリリース:http://www.ibm.com/press/jp/
