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プレスリリース

IBM、ナノテクノロジーの2つの飛躍的成果を発表



IBM、原子構造や原子デバイスについてのナノテクノロジーの2つの飛躍的成果を発表
= 磁性原子に関する画期的研究により、単一原子データ・ストレージの実現に迫る =
= 単一分子スイッチングにより分子コンピューター開発の可能性 =


[米国カリフォルニア州サンノゼおよびスイス・チューリッヒ 2007年8月30日(現地時間)発]


IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)は30日(現地時間)、ナノテクノロジーの分野において、2つの重要な科学的成果を発表しました。この発表は、数個の原子または分子による新しい種類のデバイスや構造を将来的に実現させる可能性を拓くものです。

製品化への道のりはまだ遠いものの、これらの技術的躍進によりIBM内外の科学者はナノテクノロジー分野の一つである、原子規模の極小レベルの要素を用いた構造やデバイスの構築を今後も推進することができるでしょう。こうしたデバイスは、将来のコンピューター・チップ、ストレージ・デバイス、センサー、そして誰も想像しなかったような用途に利用される可能性があります。

今回の成果は、8月31日に『サイエンス』誌で発表された2つの研究レポートの中で明らかにされています。

最初のレポートでは、IBMの研究員たちが、磁気異方性という特性を個々の原子について測定する上での大きな進展について解説しています。この測定により、情報を格納する原子の能力を判断できるため、今後の技術に重要な影響をもたらします。これまで、単一原子の磁気異方性の測定に成功した研究はありませんでした。

この研究を続けて行けば、原子の小規模クラスター、さらには個々の原子から、磁気情報を確実に格納できる構造を構築できるようになるでしょう。こうしたストレージ機能が実現すれば、3万本近くの長編映画やYouTubeのコンテンツ全体(1,000兆ビット以上のデータ量と推計される何百万本もの動画)をiPodの大きさのデバイスに収容することができます。そしてさらに重要なのは、この飛躍的技術により、従来のコンピューティングの枠を越えた全く新しい学問分野や研究領域に応用できる極小の新しい種類の構造やデバイスが実現するかもしれない、ということです。

2番目のレポートでは、IBM研究員たちが、分子の外形を崩壊させることなく完全に動作する最初の単一分子スイッチを発表しています。これは、今日のコンピューター・チップや記憶装置よりはるかに小型、高速、省エネルギーとなる分子規模のコンピューティング・エレメントの構築に向けて踏み出された、重要な一歩です。

研究チームは、単一分子内部のスイッチングだけでなく、1個の分子内部の原子が隣接する分子内部の原子のスイッチングを行い、基本ロジック素子の役割を果たすことができるということも実証しています。分子の組織が破壊されていないことも、これが可能となる理由の1つです。


微小の科学:原子の磁気特性の理解
「Large Magnetic Anisotropy of a Single Atomic Spin Embedded in a Surface Molecular Network(表面分子ネットワークに組み込まれた単一原子スピンの大きな磁気異方性)」という研究論文で、IBMリサーチの研究チームは、IBMの特殊なSTM(走査型トンネル顕微鏡)を使って個々の鉄原子を操作し、特別な処理を施した銅表面上に原子レベルの精度で配置しています。その上で、個々の鉄原子の磁気異方性の向きと強度を判断しています。

異方性によって磁気が特定の向きを維持できるかどうかが決まるため、異方性はデータ・ストレージの重要な特性です。つまり、これによって、コンピューターでデータを格納するための基礎となる「1」または「0」を磁気で表わすことが可能になります。


極小デバイス:単一分子ロジック・スイッチング
「Current-Induced Hydrogen Tautomerization and Conductance Switching of Naphthalocyanine Molecules(電流誘導型の水素互変異性化とナフタロシアニン分子の伝導性スイッチング)」という研究論文でIBMリサーチの研究チームは、ナフタロシアニン有機分子内の2つの水素原子を使って、コンピューター・ロジックの基本要素である単一分子の「オン」と「オフ」を切り替える能力について解説しています。IBM内外の研究者により、これまでに単一分子内のスイッチングが実証されていますが、スイッチング時に分子はその形状を変えてしまうため、コンピューター・チップやメモリー素子の論理ゲートに応用するには不適切なものでした。

コンピューター・チップ内のスイッチは、電子の流れのオンとオフを切り替える電灯のスイッチのように動作します。そして、スイッチを組み立てることでロジック・ゲートを構成し、ロジック・ゲートが電気回路を構成します。かつてない極小のスイッチを装備することで、かつてない極小サイズの回路を実現でき、より多数の回路をプロセッサーに組み込んでスピードと性能を高めることができます。

将来的には、これらの分子スイッチにより、現在最速のスーパーコンピューターに匹敵する速度で動作しながらも、サイズはスーパーコンピューターよりはるかに小さいコンピューター・チップが実現するかも知れません。さらに、一片のほこりのサイズ、あるいは針の先端に装着できるような極小コンピューター・チップの構築さえも予測されています。

従来のシリコン・ベースのCMOSチップの開発は物理的限界に近づいており、IT業界はコンピューターの性能をさらに高めるために、新しい、真の意味での「破壊的テクノロジー」を探究しています。モジュラーの分子ロジックはその候補となっていますが、実現までにはまだ数年かかります。IBMリサーチの研究チームの次のステップは、これら一連の分子を用いて回路を構築した後、さらにネットワーク化して一個の分子チップとする方法を解明することです。

電子コンポーネントとして分子を使用するコンセプトは、未発達な段階にあります。これまでのところ、スイッチまたはメモリー素子として機能する個々の分子についての、2、3の例しか実証されていません。これらの分子のほとんどは複雑な3次元構造で、スイッチング時にその形状を変えてしまいます。その機能を維持しながらこれらを面に配置するのは極めて困難であるため、コンピューター・ロジックの構成要素としては不適切なものとなっています。

IBMリサーチの研究チームが使用した分子内のスイッチングは、明確に定義され、高度に局所化され、可逆性があり、分子固有のもので、そして分子組織の変化を生じない、という特徴を備えています。したがって、この分子は、ロジック素子として機能する、より複雑な分子デバイスの構成要素として使用することができます。スイッチング時に分子の形状が変化しないため、複数のシングル・スイッチを制御下に置いて結合することができます。スイッチング・プロセスは、より複雑な構造に組み込まれた分子でも機能します。


「偶然の」科学
IBMリサーチの研究チームは、どの分子が分子スイッチに適しているかどうかを見極めるために、さまざまなテストを行ってきましたが、ナフタロシアニンに実施したテストはスイッチングを観察するためのものではなく、分子の振動を調べるためのものでした。なぜなら、分子の振動に関する理解は、原子レベルで動作するデバイスにとって重要なものであるからです。チーム・メンバーは、この振動のテスト中にスイッチングの見地からも興味深い結果に驚き、振動の研究からスイッチングの研究へと焦点を移すことで、この技術的躍進を実現させました。


ナノテクノロジーにおけるIBMのリーダーシップ
以上の新しい成果は、IBMリサーチにおけるナノスケール・サイエンスの実績の中でも最新のものです。スイスの2人のIBM研究員は、1980年代初めのSTMの発明に対して1986年度のノーベル物理学賞を授与されました。過去20年間以上にわたり、IBMアルマデン研究所の研究員たちは、精密に設計された構造に原子を配置するために他に先駆けてSTMを活用してきました。この結果、基本的な原子規模での物性が明らかになり、情報の格納、伝送、処理に応用できる可能性が生まれています。


動画、補足写真、およびビデオ・クリップを含むプレス・キットを、IBMプレスルームでご覧いただけます。
http://www.ibm.com/press/us/en/presskit/22242.wss (US)
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