本文へジャンプ

プレスリリース

脳の能力を基に未来のコンピューターを探索


2008年11月21日

IBM、脳の能力を基に未来のコンピューターを探索

[米国カリフォルニア州サン・ノゼ、2008年11月20日(現地時間)発]

IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)は、米国の5つの大学と共同で、低消費電力とコンパクトなサイズを実現しながら、感覚や、知覚、行動、相互作用、認知などの脳の能力を模倣し、シミュレートできるコンピューティング・システムを創り出すという他に類を見ないプロジェクトに取り組みます。

デジタル・データの爆発的増加は、とどまる所を知りません。米調査会社IDCによると、デジタル・データの量は毎年60%ずつ増加しており、企業は、この途方もない新しい情報の流れを手にすることができます。しかし、こうした情報をリアルタイムで監視、分析、反応する能力がなくては、その価値の多くは失われてしまいます。こうしたデータが獲得、分析されるまで、決断や行動が遅れてしまうからです。コグニティブ・コンピューティング(Cognitive Computing)は、瞬時に様々な情報源からの大量のデータを統合し、分析することのできるシステムを提供し、企業や個人が大きな影響を与える迅速な意思決定をすることを可能にします。

例えば、銀行家は、目まぐるしいペースで常に変化し続ける相場データをもとに、瞬時に判断しなければなりません。また世界の水の供給を監視する業務においては、センサーや作動装置網が、温度や水圧、波の高さ、音、海流などの数的指標を継続的に記録し、これらのデータを送信してきます。どちらの場合も、そうしたすべての情報を理解することは、一個人、または100人掛かりでも、非常に困難です。“グローバルな脳”として機能するコグニティブ・コンピューターは、この複雑なパズルのバラバラの破片を素早く的確に組み立て、人々が迅速に優れた判断を下せるように支援します。

脳の構造やダイナミクス、機能、行動様式などから示唆されることを探求することにより、IBMが率いるコグニティブ・コンピューティング研究チームは、機械をプログラムによって制御するという従来のパラダイムを打ち破ることを目指します。最終的にこのチームは、シナプスやニューロンとしてナノスケールのデバイスを利用して、脳の低電力消費や小ささと競えるようになることを期待しています。この技術は全く新しいコンピューターの設計思想やプログラミングのパラダイムをもたらし、最終目標として、様々なセンサーや情報源からの情報を統合し、曖昧さに対処しながら、状況に応じた方法で反応することができ、また独自の学習機能・パターン認識機能を持ち、複雑な現実世界の環境に対応する知覚、行動、認知機能によって、困難な課題を解決することのできる、新しいインテリジェンスを持った、コンピューターを遍在的に展開することです。

IBMとそのパートナーは、米国国防省国防高等研究計画局(DARPA)から、DARPAの神経形態学的電子工学システム(SyNAPSE)の、第一段階に対する助成金として、490万ドルを受けました。IBMが提案する“シナプトロニクスとスーパーコンピューティングによるコグニティブ・コンピューティング(C2S2)”では、今後9ヶ月にわたって、シナプトロニクス、物理学、神経形態学的回路、スーパーコンピューティングのシミュレーションや仮想環境などの分野で、画期的な研究を計画しています。初期の研究では、ナノスケール、低電力の擬似シナプス機器の実証、また脳の機能の超小型回路を解明することに注力します。C2S2の長期目標は、低電力でコンパクトなコグニティブ・コンピューターを実現し、哺乳類と同レベルの知能規模のインテリジェンスに近づくことです。

IBMは、多面的なワールドクラスの研究者・協力者のチームを集結させました。IBMのコグニティブ・コンピューティング推進マネージャー Dharmendra Modha博士が率いるこのチームは、スタンフォード大学のKwabena Boahen教授、H. Phillip Wong教授、Brian Wandell教授、ウィスコンシン-マジソン大学のGulio Tononi教授、コーネル大学のRajit Manohar教授、コロンビア大学医療センターのStefano Fusi教授、そしてカリフォルニア大学マーセド校のChristopher Kell教授等が参加し、課題に取り組みます。またStuart Parkin博士、Chung Lam博士、Bulent Kurdi博士、Campbell Scott博士、Paul Maglio博士、Simone Raoux博士、Rajagopal Ananthanarayanan博士、Raghav Singh博士、Bipin Rajendran博士を含むIBMの研究員もチームの一員として、共に課題に取り組みます。

先立って、IBMのコグニティブ・コンピューティング・チームは、IBMのブルージーン(Blue Gene®)スーパーコンピューターの性能と、コグニティブ・コンピューティングのアルゴリズムを用いて、小型哺乳類の脳に匹敵する規模のリアルタイムに近いシミュレーションを実証しました。このシミュレーション能力を用い、研究者は脳の計算の核となるミクロやマクロな回路を発見するために、脳の機能や構造の様々な数学的仮説を検証しています。

これまで人工知能研究の分野は、インテリジェントな機械の技術の側面にのみ、焦点をあててきました。この研究の流れの最先端であるコグニティブ・コンピューティングは、全ての研究を結びつけるような、全体的なインテリジェントな機械の開発を目指しています。IBMのコグニティブ・コンピューティングの取り組みは、毎年、オピニオンリーダーを集め最先端の科学技術の根本的な課題に挑む、2006 Almaden Instituteから生まれました。IBMは人工知能研究分野で長い歴史を持ち、1956年にIBMが世界で最初の大規模(512ニューロン)の皮質シミュレーションを行った時まで遡ることができます。


当報道資料は、IBM Corporation が2008年11月20日(現地時間)に発表したプレスリリースの抄訳です。原文は下記URLを参照ください。
http://www.ibm.com/press/us/en/pressrelease/26123.wss (US)

IBM Researchの詳細については、こちらのサイトをご覧ください。
http://www.ibm.com/research

IBM、Blue Geneは、International Business Machines Corporationの米国ならびにその他の国における商標。