プレスリリース

IBMワールド・コミュニティー・グリッドが小児がんの治療薬開発に取り組む

2009年3月17日

IBMワールド・コミュニティー・グリッドが小児がんの治療薬開発に取り組む

IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)と千葉県がんセンターおよび千葉大学は、小児がんの一種である神経芽腫の新しい治療薬を開発することを目的としたプロジェクト「ファイト!小児がんプロジェクト(Help Fight Childhood Cancer Project)」*を開始します。ボランティアが所有するパソコンのコンピューティング能力を寄付する取り組みであるワールド・コミュニティー・グリッド(以下、WCG)*を活用することで、薬剤の候補となる化合物を見つけ出す実験シミュレーションにかかる年月を大幅に短縮し、2年で完了する予定です。
* ファイト!小児がんプロジェクト(Help Fight Childhood Cancer Project)
http://www.worldcommunitygrid.org/projects_showcase/hfcc/viewHfccMain.do
* ワールド・コミュニティー・グリッド
http://www.worldcommunitygrid.org/

WCGは個人や企業が所有するコンピューターのアイドリング時の処理能力を寄付することで「仮想スーパー・コンピューター」を作り、医療や環境といった全世界的な課題の解決を目指す研究プロジェクトに演算処理能力を提供し、支援する世界規模の人道的な貢献活動です。今回の「ファイト!小児がんプロジェクト (Help Fight Childhood Cancer Project)」は、WCGが処理能力を提供する研究プロジェクトとしては、アジア太平洋地域で初めて採用されました。

小児がんは、一般に15歳未満のこどもに発生する悪性腫瘍を指し、日本では事故に次いで子どもの死因の第二位となっています。その中でもお腹や胸の交感神経節や副腎にある神経細胞から発生するがんである神経芽腫は最も治りにくく、患者の生存率が40%未満とされています。神経芽腫は、すでに進行した状態で発見される場合が全体の3分の2を占めているため、先進国では70%以上の小児がん患者が助かるようになった最近でも依然として多くの子どもを苦しめており、この治癒率を上げることが世界中の医師や研究者にとって重要な課題となっています。

今回のプロジェクトでは、長く神経芽腫の遺伝子研究を進めてきた千葉県がんセンター研究局長の中川原章博士が率いる研究チームが、WCGが提供する膨大なコンピューター処理能力を活用し、神経芽腫の新しい治療薬の開発を目指します。具体的には、がん細胞の増殖を助けるたんぱく質分子であるTrkB受容体、ALK受容体とその下流シグナル分子SCxxの3つに対し、その機能を阻害できるような正しい構造と化学的な性質を持つ新しい候補薬剤を、約300万個の低分子化合物との組み合わせをシミュレーションすることで見つけ出します。さらにWCG 上ですでに実行されているプロジェクトで実績のあるシミュレーションソフトウェア「AutoDock」を活用することで、何千もの候補化合物の解析を並行して行うことができ、高速なスクリーニングが可能となります。

世界中の参加者が所有するパソコンがWCGに接続することで、膨大なコンピューティング能力を生み出し、遺伝子構造のシミュレーションを高速かつ高度化するこのスマートな取り組みにより、治療による回復の見込みに影響を与える予後因子を発見できれば、今後の腫瘍生物学、創薬、治療計画の分野の発展に役立つと考えられています。

一般公開された既存の人道的グリッドとしては最大の規模であるWCGには現在、200カ国以上からの43万人以上が参加者し、120万台以上のコンピューターが接続されています。ボランティアが自分のパソコンを登録して無償のソフトウェアをインストールすると、パソコンが一定時間使われていない状態になるとWCGのサーバーにデータ要求を送ります。サーバーはプロジェクトに必要な演算処理を分散して個々のパソコンに送り、パソコンは処理結果をサーバーに送り返します。これまでにWCGが処理した結果の数は2億5000万個を超えています。

2004年11月の発足以来、WCGでは「ゲノム比較 」「がん撲滅支援」「ヒトたんぱく質解析」の3プロジェクトが終了し、「AfricanClimate@Home」「筋ジストロフィー治療支援」の2プロジェクトが計算結果の解析フェーズに入り、現在は6つのプロジェクトの計算を実行中です。2006年7月に終了した「ヒトたんぱく質解析」では、有機体やヒトゲノムにあるタンパク質を染色体上に位置づけ、約120000のたんぱく質ドメインの構造を解明しました。これらはマラリアや他の病気に関連する特定のタンパク質の研究に活用される予定です。

<ワールド・コミュニティー・グリッド実行中のパソコン画面>

ワールド・コミュニティー・グリッド実行中のパソコン画面

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