2009年6月24日
IBMとスイス連邦工科大学チューリッヒ校、
新しい水冷スーパーコンピューターの開発計画を発表
廃熱の再利用により、エネルギー消費削減40%、二酸化炭素排出量の最大85%削減を目指す
[スイス・チューリッヒ、2009年6月23日(現地時間)発]
エネルギーを意識したコンピューティングを実現するため、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(チューリッヒ工科大学)とIBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE
: IBM)は本日、余剰な熱を直接再利用して大学校舎に利用するという、業界初の水冷スーパーコンピューターの開発計画を発表しました。このAquasarと呼ばれる革新的なシステムは、従来の冷却技術を使用した同様のシステムに比べて、二酸化炭素排出量を最大85%まで削減し、年間約30トン(※注1)もの二酸化炭素を削減すると見込まれています。
コンピューティング・システムや、データセンターのエネルギー効率を向上させることは、壮大な事業です。実際、今日一般の空冷のデータセンターにおいては、その二酸化炭素排出やエネルギー消費の50%までが、コンピューティングそのものではなく、プロセッサーを熱から守るために必要な冷却システムの稼動のために使われており、全体的な観点からエネルギー効率を判断すると、とても最適からはかけ離れた状態にあります。
チューリッヒ工科大学 熱力学研究所所長で、この共同プロジェクトのリーダーであるPoulikakos(ポーリカコス)教授は、次のように語っています。「エネルギーは間違いなく、21世紀の人類が直面する最大の課題と言えるでしょう。私たちには、コンピューティングのスピードや性能だけを基準にして、コンピューティング・システムを設計するようなことは、もはや許されません。今後の目標は、高性能で、エネルギー消費の低いスーパーコンピューターや、データセンターを構築することです。これは、液体での冷却を意味しています。」
画新的な水冷システムと、熱の直接再利用機能を持つAquasarという新しいスーパーコンピューターは、チューリッヒ工科大学に設置され、2010年から稼働する予定で、全体のエネルギー消費を約40%削減する見込みです。このシステムは、チップ・レベルでの水冷領域における、チューリッヒ工科大学とIBM科学者の長期にわたる共同研究、またIBMチューリッヒ研究所の科学者によって推進される“エネルギー直接再利用による水冷データセンター”の概念に基づいています。
この水冷スーパーコンピューターは、1ラックに2つのIBM® BladeCenter®サーバー(注2)で構成され、ピーク性能で約10テラフロップスを実現します。
各ブレードはプロセッサー毎に、微小規模の高性能水冷機能と、各ブレードを全体システムに容易に脱着することを可能にする配水ネットワークと接続の入出力用の配管を装備しています。
冷却媒体としての水は空気に比べて、約4,000倍効率的に熱を保持することができ、熱伝導効率も遥かに上回ります。約60℃の水によるチップ・レベル冷却は、チップの稼働温度をその最大許容温度85℃以下に保つのに十分です。高温の冷却液の入力は出力する際により温度が高くなり、このケースでは65℃に達します。
個々のブレードの配管は、サーバー・ラックのより大きな配管に接続され、それらは更に中央の配水網に接続されています。水冷スーパーコンピューターは冷却液として10リットルの水を必要とし、そのポンプは毎分約30リットルの配水を確保します。この冷却システム全体は、完結した回路からなります。冷却水はチップにより継続的に温められ、受動的熱交換機を通過する際に、必要最適温度へと冷却されます。そこで取り除かれた熱は、この実験で対象となる大学の暖房システムに直接送られます。これによって、多くのエネルギーを必要とする今日の冷却装置のニーズを解消できます。
エミッション・フリー(排出相殺)のハイパフォーマンス・コンピューティングの3年間の共同研究
このプロジェクトは、IBMの科学者とお客様が一体となって、実ビジネスの課題を解決するための最新技術を研究・実験する、IBMのFirst-Of-A-Kind
(FOAK)プログラムの一環です。スイスIBMとIBMリサーチ、ドイツ・ボーブリンゲンのIBM研究所の支援によって実現することができました。
この液体で冷却するスーパーコンピューターの研究は、“液体冷却スーパーコンピューターの余剰熱直接再利用:
低エネルギー消費、ハイ・パフォーマンス、ゼロ・エミッション・コンピューティングとデータセンター”と呼ばれる3年間の共同研究プログラムとして計画され、主にIBM、チューリッヒ工科大学、スイスCCEM(エネルギー&モビリティ能力開発センター)などが、共同で出資しています。システムの一部は、チューリッヒ工科大学、スイス連邦工科大学
ローザンヌ校、スイス・エネルギー&モビリティ能力開発センター、IBMチューリッヒ研究所などの科学者たちによって、冷却技術や効率性のための更なる研究に活用されます。
Aquasarのコンピューティング性能の追求は研究の中で重要な部分を占めます。Aquasarは、チューリッヒ工科大学のコンピューター科学部門のコンピューター科学工学研究所によって、ナノテクノロジーと流体力学のインターフェースにおいて現れる問題に関係する、マルチスケール・フロー・シミュレーションに活用されます。また、この研究所の研究者たちはIBMチューリッヒ研究所と協調して、システム内で各アルゴリズムが稼動する際の効率を最適化します。こうした活動は、このプロジェクトに参加する、その他の基礎研究所が開発するアルゴリズムによって補完されます。このスーパーコンピューター・システムによって、科学者は重要な科学の問題を効率的に解決する能力を実証し、同時に、人類を脅かすようなエネルギーや環境的課題に関する副作用を気にする必要がなくなります。
注1. 京都議定書の基準を満たす実際のカーボン・オフセットを活用します。CO2量の30トンは、年間の平均的なシステム運用と化石燃料などによるビルの暖房を想定し、見積もっています。
注2. BladeCenterは、QS22 IBM PowerXCell 8iプロセッサーと、HS22 Intel®
Nehalemプロセッサーが組み合わされています。また、第3世代空冷IBM BladeCenterサーバーが、比較計測用のシステムとして導入されます。このリリースに表記された数値は全て見積もりであり、水冷IBM
BladeCenterに関連しています。
当報道資料は、IBM Corporation が2009年6月23日(現地時間)に発表したプレスリリース
(http://www.ibm.com/press/us/en/pressrelease/27816.wss)の抄訳です。
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