日本アイ・ビー・エム株式会社
取締役専務執行役員
開発製造担当
内永 ゆか子
- ITが研究開発に与えた影響
この10年でIT(情報技術)が著しい勢いで進歩してきました。そのテクノロジーはコンピューターなどの情報機器だけではなく、自動車や家電製品など幅広く応用され、あらゆるものにITが組み込まれようとしています。しかし、ITによる社会の本格的なイノベーションは、まだこれからではないでしょうか。
世界中の産業でITを応用した商品開発が進められていますが、いろいろなところで問題にぶつかっているというお話を伺います。機械や電気を組み合わせて製品を作ることに関しては長年の経験があっても、それにITが入り、どんどん高機能化するにつれて、うまく制御することが難しいというケースが珍しくありません。
例えば自動車を考えてみると、走りの性能や乗り心地といった面だけではなく、今や車が居住空間の一部になり、運転している時間を自分のパーソナルライフとしてエンジョイできるかどうかというところのバリューが高まっています。そうなると、商品開発におけるITやソフトウェアの役割が増し、従来からやってきた技術の分野とは違うものが必要になります。このような商品を開発する際にお客様企業が課題を持たれるIT分野に対して、IBMの持つテクノロジーや開発プロセスおよび豊富な経験など、お手伝いできるものが数多くあります。 - 自らの大変革の経験を生かして
わたしたちIBM自身が、研究開発や製造の面でも大きな変革を経験してきました。その最大のポイントは、IPD(Integrated Product Development:統合製品開発)というマネジメントシステムを導入し、R&D(Research and Development:研究開発)部門がIBM全体のビジネスにきちんと貢献する仕組みをつくり上げたことです。
具体的には、まず開発の最初の段階からマーケットの動向を常に意識するということ。また、すべての開発のステップに対して全員が同意して進め、終了させること。そして、開発の状況をガラス張りにするということ。
その結果、開発を始めてから製品出荷までの時間であるTTM(Time to Market)が3分の1に短縮される一方で、製品化されずに終わった開発プロジェクトに掛かった費用を5分の1に激減させることに成功しました。
IBMの50年以上にわたるものづくりの経験に、このような自らのR&Dイノベーションのノウハウを合わせてご提供する、そこに新たなバリューがあるのではないかと考えています。特に、日本が世界でも強みを発揮しているデジタル家電や自動車、そして携帯電話といった分野で、大きな役割を果たせるのではないかと思います。 - ITのカスタマイズ製品に対するニーズ
ITが手に入りやすくなると、今度はお客様企業の要求に応じたカスタマイズ製品に対するニーズが高まってきました。R&Dの面では、特にスーパーコンピューターを使ったシミュレーションを活用したいというものです。
スーパーコンピューターによる精度の高いシミュレーションをすることによってあらかじめ予測を立て、研究開発のコストと時間を低減する。あるいはビジネスリスクを下げる。そのためには、目的別にスーパーコンピューターをカスタマイズし、チューニングをして最高性能を引き出す必要があります。
このように、スタンダードなIT製品だけではカバーしきれない部分が増えています。IBMでは、お客様企業のR&D部門のニーズに応じたカスタマイズなど、幅広いご支援ができる体制および技術やノウハウの蓄積があります。 - R&Dイノベーションは始まったばかり
企業における製品開発では、当然ながらソフトウェアもハードウェアもすべてが必要になってきます。それに対して、IBMのさまざまなテクノロジーグループが持っている技術をインテグレーションしてご提供するために、わたしたちは「結(ゆい)」というキーワードを掲げて連携を図っています。
「結(ゆい)」は日本の農村などで古くから行われてきた習わしの一つで、一人ではできないような大きな仕事を、近隣の住民が互いに労働を提供し合って行うものです。それぞれ専門分野が異なる研究員やグループが緊密なチームワークの下に手を携えてIBMの総力を結集する姿を、「結(ゆい)」という言葉に託しました。
ITによるイノベーションがこれからだとすれば、企業のR&D部門におけるイノベーションも、また始まったばかりといえるでしょう。IBMにはハードウェアやソフトウェア、半導体などにおける幅広い経験と最先端の研究開発体制があります。これらをインテグレーションしてお届けしたいと考えています。
