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情報技術の匠

「PROVISION Fall 2008 No.59」 特集 変貌を遂げるソフトウェア・テクノロジー のご紹介

第44回 ソリューションの匠

匠・プロフィール

本田 伊津子(ほんだ いつこ)
日本アイ・ビー・エム株式会社
ゼネラル・ビジネスSVC事業部
アプリケーション・イノベーション・サービス
GBソリューション

1983年、日本IBM入社。サービス実施部門に配属され銀行のSI開発を経験。
1988年からソリューション営業となり中堅企業様向けの業務アプリケーションを中心に活動。2003年GBサービスに異動後、ASSET Businessの立ち上げを担当し、現在、IBMの知的資産であるiSeriesSiteとC/S Bridge※でお客様へのソリューション構築のサービス・ビジネスを推進。今年リリースしたサービス指向アーキテクチャー(SOA)のMEGA Frameのビジネスも推進中。

※正式名称:IBM System i™ を利用したクライアント・サーバー型システムを構築するための通信ミドルウエア(C/S Bridge)

お客様のそばで

  勤続25 周年のリフレッシュ休暇。一姫二太郎、2 人の子どもとのフロリダ家族旅行、同期入社であり同士でもある夫と2 人きりの沖縄旅行。そして昨年亡くなった父のお墓参りに、生まれ育った町・広島へ。1 カ月間、存分に休養をとった今、本田は25 年にして初めての感覚を持った。それは「日本IBMで25 年働いてきて初めて、休みが終わるときに『あぁ、もう少し休んでもいいかなあ』と思ったんです。4カ月の産休・育休の時は、とにかく早く職場復帰したくてしょうがなかったのですけれど。夏休みの終わりが近づいた小学生の感覚を思い出しました(笑)」
  そう、今回の休暇は、本田にとって大きな意味を持つものだった。

  「お客様のそばにいることが好きなんです」と言い切る本田。話は、20 年前にさかのぼる。 SE 部門からソリューション営業に仕事が変わった際、上司からの「この仕事はお客様の業務を理解しなければダメだ」という一言が本田の心には強烈に響いた。それなら徹底的にお客様の業務を理解しよう、そこから真に必要な解決策を提供しよう。
  「その上司がそれを実践させてくれました。それでお客様のところで、受注や出荷処理、経理や帳票処理のお手伝いをさせてもらったり。経理ができるなら今度は給与も…なんて感じで。結局、簿記も2 級まで取りました(笑)」
  こうなるとお客様の信頼も自然に高まった。自社の業務の悩みを深く理解してくれているということで相談相手に指名され、そうして実情を知ることで最適なソリューションを提供できる。お客様にとっても本田にとっても幸せな関係だ。
  「うちの同業のほかの会社はどんな対処をしているの? なんて相談してくださって。業務と直接関係ない話も気軽にできるお客様もいらっしゃるんです。会社のデスクにいるよりお客様の近くにいるほうが幸せかも(笑)」
  本田は日本IBM のソリューション営業ではあったが、お客様側に立ったときに「日本IBM はもっとお客様のためにこうあるべきだ」と感じることが多かったという。そんなときに格好の話し相手、いや、時にはケンカ相手となる存在。それが同期で、PM 職を長く勤める夫である。職種的に違う立場である夫との議論、アドバイスが悩みの解決になることも多い。
  だが、働く女性として、家族は大切な存在であるが、時には悩みにもなる。

  「キャリアを積むこと、役職が上がっていくこと。それは女性が働く上ではプラスになることばかりではないですよね」
  思いを半ばにして家庭環境を原因に辞めていく女性の先輩、同期、そして後輩たち。本田も忙しい毎日の中で育児に悩み続けた。通勤にかかる時間は2 時間、深夜に帰宅しても子どもは布団の中。早朝、30 分ほどの時間を一緒に過ごしただけで電車に飛び乗る毎日では、保育園の送り迎えを自分と夫の母親に頼むしかなかった。
  ある日、駆けつけた授業参観で周りの母親を見た時のなんともいえない違和感が、「私はちゃんと子育てができているのだろうか」という疑問を本田に突きつけた。
  「そんなときに、当社女性エグゼクティブの『私は事業所を変わるたびに、子どものためにそこから10 分のところに引っ越しました』という言葉を聞いて、思い切って箱崎事業所の近くに子どもたちと引っ越そうと決めたんです。この辺りだと家賃も高くて、暮らしていくのはそれなりに大変ですけど(笑)」
  下町の良さが残る町で、子どもたちもいきいきと楽しんでいる。早朝、隅田川の周辺を夫と一緒に1時間かけてウォーキングし、週末は子供たちとママさんサッカーチームで思いきり汗を流す。元気で明るいママと優しいパパがそばにいる。それは子供たちにとっても本田自身にとっても、幸せな引っ越しとなった。

  入社以来25 年、家族に支えられて仕事に打ち込んできた。しかし気が付けば会社での立場も変わり、自分が現場で汗を流せばいいという状況ではなくなっていた。
  「これまでは私がいなきゃ! なんて思っていたのですが、実はそうでもないみたいですし(笑)、このごろはみんなにそれぞれうまく分担してもらったら大丈夫だな、と思える状況になってきたんです」
  そう、冒頭の「夏休みの感覚」の理由、それは後継が育ってきたことにあった。自分の働き方、貢献の仕方を大きく変えていく時期だからこそ、ゆったりした時間を過ごしたかった。25 周年を迎え、本田の日本IBMでのキャリアも折り返し点を過ぎている。自分が最前線に出ていくのではなく、自分のようにお客様のそばで活動することを愛する人間を、もっともっと育てること。それがお客様に対して本田がするべき新たな仕事となっていた。
  「でも、休みが明けて何日か経つと、やっぱりお客様のところに走って行きたくなっちゃうんです。だってお客様にもっともっと日本IBM のバリューを伝えたくて(笑)。これからの後半戦は『本田さん。私がお客様へ最善のソリューションで提案してきますから任せてください』と目を輝かせて走っていく人間を育てることが目標です。それが、私が好きなお客様と日本IBM のために、私ができることなんです」
  IBM は現在、日頃からお客様にご提供しているハードウェアやソフトウェア製品、最新のテクノロジーだけではなく、お客様向けプロジェクトの開発生産性向上、品質向上のためのツールやアプリケーションなど、さまざまな「知的財産」(IP:Intellectual Property)を所有しており、これらの「知的財産」を"価値あるコンポーネント" IP サービス・コンポーネント(IP アセット)としてお客様へのサービスに利用している。本田が手掛けるIPアセットである『iSeriesSite』は、経理、人事・給与、生産管理、ワークフローなどの分野で日本IBM のソリューションとして、アプリケーション開発のサービスとともに提供している。また、『C/S Bridge』は、中小型サーバー部門で常にお客様満足度第一位のサーバーであるi5(AS/400)上のGUI 化、Web 化のアプリケーション開発において、既存のRPG、COBOLのスキルを活用した上で高レスポンスかつ運用の容易なシステムの開発を提供している。そこではお客様業務に精通し、商売の実情を知りつくさなければ最適な提案と高品質なサービスの提供は難しい。
  本田は心の底から楽しんでお客様と向き合うことで、この仕事に一番必要なスキルを身に付けた。さあ、後輩たちはどうなっていくのだろう。
  この先輩を超えていくのは大変だ。超えさせるのも大変かもしれない。しかし、この大きな課題に対する"ソリューション" こそ、本田が"これからの10 年" に自分へと課した大きなミッションなのだろう。