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コンピテンシーの道程

「PROVISION Fall 2008 No.59」 特集 変貌を遂げるソフトウェア・テクノロジー のご紹介

職人の技 シリーズ(24) 〈シューフィッター〉


株式会社 銀座ヨシノヤ
森野 潤一 さん


足とともに、靴とともに
これからも歩み続ける。


  シューフィッターと聞いて、想像する姿はどんなものだろうか。おそらく、店舗でお客様のファッション・スタイルに「フィット」する靴をお薦めし、そしてサイズを測り足に「フィット」させる。こうしたサービス業的なものではないだろうか。
  「もちろんそれもシューフィッターの重要な仕事です。でも、それだけじゃないんです」
  と、森野さんは言う。

  「足というのは十人十色。30年ほど前、銀座ヨシノヤの各支店で23cmの靴を買われたお客様の足を1000人ほど集中的に測らせていただきデータを集めました。そうしたところ本来22cmのお客様が23cmの靴を買っていたり、また24cmの方も23cmを履いていたりすることが分かりました。これは、甲の高さや太さのために22cmでは入らずにサイズを上げたり、逆に甲が薄くて細いので24cmではフィットせずにサイズを下げるなどされていることが主な理由でした。お客様の履き心地を考えたら、それではいけない。いろんな足のタイプを分類して長さと甲周りのバランスをとった靴型をなるべく多くの既成靴の中に投入していこうという目的で、社内で靴のことをしっかりと考えるための研究会が発足されました。シューフィッターは接客だけではなく、こうした商品開発にも資料収集などフィードバックをして連携しています」
  銀座ヨシノヤには、シューフィッターの視点から生まれたヒット作として、オーダー対応の既成靴、『CREA(クリエ)』シリーズがあり、より多くのお客様に自分にあった履き心地の靴を提供しているという。
  こうした取り組みのためにも、シューフィッターは個々のお客様に対するフィッティングだけではなくシルエットやデザイン、素材や機能を含めた時代性を取り入れた既成靴のトータル・プロデューサーとしてのスキルが必要になるのだ。
  例えば、働く女性の足元を美しくするために必要なのはデザインだけではない。彼女たちがハイヒールでも背筋を伸ばしてさっそうと歩けるように、足の疲れを気にせず仕事に打ち込み、快適な朝を迎えられるようにと考えて新素材をソールに投入する。さらに、最近は、整形外科などの医療的な考え方に基づく靴作りも進んでいる。森野さん自身も、医師やほかの会社の人たちとの、足の健康を考える勉強会にも積極的に参加している。
  「お子様のおでかけ靴。あまり形は変えられませんが、その中でも考えなければいけないことがあります。小さい頃の足の骨を窮屈にしてはいけないし、お子様の健やかな成長を考えた素材選び、デザインも重要なんです」
  創業1907年。元号にすると明治40年。銀座ヨシノヤの百年の歩みは、日本の靴の歴史との二人三脚。これだけの年月にわたって時代のトレンド・リーダーであり続けることは、容易なことではない。
  ここでいうトレンド・リーダーとは、ファッション・トレンドのことだけではない。ファッションとしての流行を作るだけではなく、靴としての機能、いや、もう一歩踏み込んでいけば、「人の足にとっての靴とは何か?」を時代の先頭に立って考え、実践していくこと。その姿勢そのものを体現する存在こそ、シューフィッターなのだ。
  「何がやりがいっていうと…そうですね、靴という小さい世界ですけれど、改良・改善することがたくさんある。終わりがないっていいますか、それが面白いのかな」
  そう、時代も変わればデザインも変わる、ますます便利な素材も生まれてくる。そしてお客様のマインドも変わっていく。
  「でも足は変わらないんですよ。時代が変わっても。それに対して靴は変わっていく。追いかけっこみたいなところはありますね。大きい変化も確かに面白いけど、その中で、ちょっとした変化でアピールするっていうのは結構面白いんじゃないかと。それでお客様に喜んでもらえれば」
  靴と足の幸せな関係、そこから生まれる、靴を履く人の幸せ。シューフィッターがこだわるのは、お客様の足とともに歩み続けることなのだろう。