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エルミタージュ美術館

   
think research


デジタル技術により
美術館の秘宝をまのあたりに


(Think Research 1999 2月号より)

エルミタージュ美術館は、世界で最も優れた美術館の1つとして長年評価されてきました。しかし、そのこのうえなくすばらしい秘宝は、ロシアのサンクトペテルブルクにある壮大なロココ宮殿に収められ、世界の研究者や美術愛好家にとって、ルーブル美術館所蔵の作品群のようには決して身近なものではありませんでした。このたびIBMは、 エルミタージュ美術館と協力して、その膨大なコレクションをデジタル形式で世界に公開することにしました。去る6月14日、サンクトペテルブルクで開催された祝賀式典で、国立エルミタージュ美術館館長ミハイル・ピオトロフスキー氏ならびにIBMの販売流通担当上級副社長兼グループ・エグゼクティブのウィリアム・A・エサリントンは、複数年提携契約を発表しました。このプロジェクトは、IBMから160万ドルの補助を受け、イタリア、イスラエル、ロシア、および米国におけるIBM研究者の開発による新たなマルチメディア・ツールを活用して、美術館の最も貴重な作品の数々を広く深く鑑賞できるようにします。ツールは、直接訪れる見学者にも、Web経由で訪れる多くの見学者にも利用の幅を広げます。


ピオトロフスキー氏は、次のように語っています。「このテクノロジーにより、当館のコレクションはさらに多くの人々に身近なものとなります。しかも同時にコレクションそのものを保護することにもなります。さらに、美術館での教育活動をできる限り興味深いものにしてくれます。」


The Madonna and Child /Leonardo da Vinci
The Madonna and Child
(The LittaMadonna)
Leonardo da Vinci
1490- 1491
Lampi,portrait of Catherine II
Lampi, portrait of Catherine II

エルミタージュ美術館は、ロシアの女帝で芸術通であったエカテリーナII世の宮廷博物館として1765年に建設されました。現在、その 250万点に及ぶ貴重なコレクションには、レンブラント、ルーベンス、ティツィアーノ、レオナルド・ダヴィンチらの油絵だけでなく、セザンヌ、ヴァン・ゴッホ、マティス、ピカソらの19〜20世紀の傑作も収められています。


エルミタージュ・プロジェクトは、IBM のT. J. ワトソン研究所のイメージ・ライブラリー・アプリケーション・グループによって開発された最新のイメージ・キャプチャー・テクノロジーを最も意欲的に活用するという点で際立ったものです。当グループはすでに、ワシントン D.C. の米国国立美術館、バチカン・ライブラリー、その他の美術館でデジタル・アーカイブの制作を支援してきた実績があります。1997 年には、エルミタージュ美術館が IBM を招き、特別のイメージ制作スタジオの開発と、利用についての美術館管理者向けトレーニングを行いました。このスタジオでは、高性能デジタル・カメラ Pro/3000を駆使していますが、これは高解像度 CCD センサーと特別設計のカラー・フィルターを採用して最上のディテールと精密度で芸術作品を記録するものです。このカメラは、1回のスキャンで30メガバイトの情報を取り込みます。イメージは取り込まれた後でサイズが縮小され、インターネットでダウンロードして通常のコンピューター画面で表示できるように扱いやすいサイズに圧縮されます。

コレクションのごく一部を高解像度イメージで提供するという多くの美術館の方針とは異なり、オンライン・コレクション全体を高解像度で利用可能にするというエルミタージュ美術館の決定は、ワトソン・グループを率いるフレッド・ミンツァーにとって納得できるものでした。


「一見したところ、そのレベルのイメージ品質は必要ないように思われるかもしれませんが、Webサイトの利用者が芸術の美しさを体験するきっかけとなるためには不可欠なものです」と彼は述べています。


オンラインによる表示と研究は、エルミタージュとIBMの協力の第1目標です。英語とロシア語によるダイナミックな新しいWebサイトには、カリフォルニア州サンタテレサとイタリアのナポリにあるIBM研究所で開発したハードウェアとソフトウェア、およびジョージア州アトランタにあるIBMインタラクティブ・メディアで開発した特別のユーザー・インターフェースが採用されています。仮想利用者は、まもなくQBI(query by image content(イメージ・コンテンツによる照会))検索テクノロジーを使用して高解像度イメージのデータベースを検索できるようになります。QBICは、色や形状を記述することでイメージの検索を可能にするものです。


電子すかし

多くの場合利用者は、ワトソン研究所で開発された3-D仮想現実ツールのPanoramIXイメージを利用してさまざまな角度から作品を鑑賞したり、IBMのハイファ研究所で生み出されたJavaベースのテクノロジーを利用してズーム・インしたりすることができるようになります。ハイファ研究所で開発されたクライアント・サーバー・ユーザー・インターフェースにより、エルミタージュのスタッフは美術作品に関する情報を簡単に追加したり更新したりすることができるようになります。デジタルの不正利用を防止するため、美術館のオンライン・イメージにはすべて、目立たない 電子透かしが埋め込まれる予定です。


美術館に入ると、利用者には、英語とロシア語のヘルプ・キオスク(キオスクのベースになっているJakiとして知られる特別のJavaアプリケーション・フレームワークと同様、ハイファ研究所で開発されたもの)が表示されます。このキオスクは、美術館と見学の情報を提供するだけでなく、利用者が観ようとする作品に関して最短の経路をたどる個人向けのマップも提供してくれます。


美術館の中央入口の近くには、モスクワに拠点を置くIBMの東欧/アジア研修センターとの提携により設立された教育技術センターがすでに設置されています。利用者は、IBM の7つのワークステーションの1つに進み、たとえば西欧絵画の信条といった、美術館の膨大なコレクションの一面をインタラクティブに掘り下げて研究することができます。


ピオトロフスキー氏は、さらに豊かな経験が美術愛好家にもたらされるものと考えています。「イメージはまさに、デジタル・ライブラリー・テクノロジーの中心に位置していますが、これは単なる鑑賞を超えるものです。これは、当美術館のコレクションを鑑賞し、研究し、細部にわたり理解するということです。」

  この記事は、Think Research 1999 No.2 を、日本語にしたものです。

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