掲載日 2004年2月24日
設立から57年、2006年には60周年を迎えるソニー株式会社(以下、ソニー)。時代のスピードに合わせて雇用もさまざまな形態をとるようになりました。同社は、「社員には雇用形態の選択肢を与えて、自らキャリア・アップしていくような仕組みも考えなければならない」との思想の下、VOC(Voice of Customer: 顧客や市場の声)を聞いた上で、新たな人事制度の設計を構築しています。そこで、人事構造改革に焦点を当て、同社の考え方と取り組み、どこまで達成できたかを紹介します。
お客様ニーズ

ソニー株式会社
人事センター
リソースマネジメント部
統括部長
中田研一郎氏
人事の構造改革
ソニー株式会社 人事センター リソースマネジメント部、統括部長の中田研一郎氏が、人事の構造改革というミッションを受けた時、担当役員から真っ先に与えられた使命が、「経営戦略と人事戦略を連動させること」。つまり、単なる人事ではなく、経営戦略を実現するための人事でなければいけなかったわけです。ソニーにとっての「人材育成」の基本的なテーマは、この「経営戦略と人事戦略をいかに連動させるか」でした。
構造改革を実現するためには、人事の構造というものを特定しなければいけません。ソニーではいろいろと検討した結果、人事構造を「理念層」、「ポリシー層」、「実践層」、「インフラ層」という4つのレイヤーに分けて考えました。
「理念層」とは、人事のマネジメント理念。ここをまず押さえないと、制度が変わるだけで構造は変わりません。それから「ポリシー層」というのは、いわば評価指標です。人事の業務には採用、配置、評価、報酬、最後は退社というさまざまな局面がありますが、それぞれの局面で何をどうするかという方向性を明確にしないと、改革はできません。このポリシーをおのおのの人事業務の中に、どういう方向にどう適用したいのか、それを明確に決めることが大切でした。
理念とポリシーさえ決まれば、それを実践するための制度設計をすればよいわけです。この制度設計自体は「実はそんなに難しくない」と中田氏は言います。しかし、議論をしっかりしておかないと、いろいろな意見をすべて取り入れ、玉虫色の制度になってしまうというリスクがあります。
「マネジャー・レベルからきちんと議論を詰めた上で、人事制度の設計を行ない、かつ、この業務プロセスのBPR(Business Process Reengineering:業務改革)を行なっていくべきなのです」(中田氏)
構造改革の具体的な実行手段の1つとして、情報インフラの構築は不可欠でした。これを優先的に手掛けた結果、現時点で当初の目標を完全にクリアしている状況、と中田氏は話します。
人事の根幹をなす部分が、コア制度としての人事評価制度です。企業カルチャーが発現されるもっとも大事なところで、ここに触れずに改革はなし得ません。またソニーでは、制度変更後にも人事構造改革の仕上げとして、「教育の改革」に取り組んでいます。そして、一体どういう人材を求め、どういう人材を育成しようとしているのか、現在、思想的な部分にまで掘り下げたプロジェクトを開始しつつあります。
ソリューション
システムとインフラの同時構築
インフラストラクチャーとなる人事統合情報システムは、日本IBMが提供するサービスです。ここが改革を成功に導く本質的な要因と言えるでしょう。つまり、どんなにいい制度をつくっても、紙とハンコで処理しているようでは、「アメリカのIT企業には勝てない」のです。
そこでソニーでは制度をつくると同時に、それを実行可能とするシステム・インフラを構築する基本設計を打ち出しました。その上で、現場の意見を十分に吸い上げるため、マネジャーから現場スタッフまで非常に広範なヒアリングをし、さまざまな意見を抽出しました。
これらの意見を集約すると、「マネジメントの戦略実行支援をするようなツールをきちんと作る」ということです。終身雇用は大きく変化しつつあり、かつ新たな実力主義というものが出てきたため、明確な価値観の転換があります。それをはっきりさせる必要があったのです。

人事情報システム
“Cast-net”
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ソニーイーエムシーエス株式会社は、ソニーの各カンパニーから、量産設計プラットフォーム、カスタマー・サービス・プラットフォーム、さらに資材プラットフォームを移管し、資材調達、量産設計からカスタマー・サービスまで一貫したモノづくりを担うために誕生しました。かつてはグループ11社それぞれで違うシステムを使っていましたが、それをイーエムシーエスとして統合したわけです。
これまで、11社が別々のシステムを使用していた理由は、ソニーが1990年代の拡大成長時に重要視した、個別最適という方向性によるものです。この11通りの自社開発の人事、勤怠、給与などのシステムを一挙に統合したわけです。システムを使ってキャスティングを行なうという意味でこの総合システムは“Cast-net”と名付けられました。モザイク状のレガシーシステムを、ワン・カラー、ワン・プラットフォーム、ワン・コモン・プラットフォームにしたのです。
「会社を人体に例えますと、動脈系が11通りあるようなわけですから、これでは体が動きません。これを健全な、統合されたシステム系にするということが、もう好むと好まざるとにかかわらず、絶対やらなければいけないことでした」と、中田氏は振り返ります。
オフライン学習の実現
マネジャー教育の部分では、数カ月にわたって“Management Basics”というパイロット・プロジェクトが日本IBMとともに立ち上げられました。技術的な部分では、いかにこれをソニー流にするかがポイントで、中田氏も実際に操作し、日本IBM開発の教育コンテンツをソニー流にカスタマイズしていったのです。
「Webによるe-Learningというのは便利なようですが、結局のところ不便でした。会社にいる時にe-Learningしている統括部長がいるわけがない。1日の業務を終えたら、もう夜の7時、8時です。それからe-Learningをする人は、よほど特殊な人です」(中田氏)

Off Line 学習の実現
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では、どこで勉強する時間を確保するのか。「飛行機の中」と中田氏は言います。例えばヨーロッパ出張なら16時間、電話なし、会議なしのフリータイム。そこで、CD-ROMを使い、次にネットにつないだ場合に利用履歴が残るような技術“eBridge”を開発し、e-Learningと組み合わせたのです。これはソニーの技術があればこそ可能になったことです。
導入効果
提携業務とペーパーレス
今から2年前、中田氏指揮の下、この統一プラットフォーム“Cast-net”を、ソニーのエレクトロニクス5万人、20社全部に導入しようというプロジェクトが立ち上がりました。人事管理、給与管理、勤務管理といった提携業務をシステムとして入れ、それ以外に電子承認、電子申請を取り入れています。
「従来は1つの業務にまつわる紙に、ハンコが合計すればおそらく20個ぐらいは押されていたのではないかと思います。こうした作業に、最低でも1週間はかかっていました」(中田氏)
それがすべて電子承認になれば、クリック2回で終わるのです。もちろん、ペーパーはゼロになります。人事部は、モニターはしても関与はしません。ソニーでは、こうした業務の大転換が、いま行なわれつつあるのです。
この提携業務では、「人事を人事の中に閉じ込めない」「業務を閉じ込めない」ために、全社員向けの情報提供業務支援ツール“社員Portal”が採用されています。社員が、自分のすべての人事業務情報を目の前のデスクトップで見られる。これにより、今までまったくタッチしていなかった人事業務に自分が関与し、セルフ・マネジメントを行なっていく、というコンセプトの転換が図られたのです。
マネジャーは“Management Portal”の設置により、これまで人事部に聞いていたことを、キーボードをたたけばすぐに分かるようになったのです。「人事の情報と業務を、人事から現場に、あるいはマネジメントにオープンにしていく」というスタイルを基本コンセプトにし、ソニーの経営戦略と人事戦略が連動したのです。
将来の展望
社員の夢を実現させる仕組みづくり
ソニーの具体的なビジネス目標は、「2006年の60周年に向け、利益率10%にすることです」(中田氏)。今以上売り上げを伸ばすというよりも、いかに利益を10%のレベルに回復させるかがテーマです。
1980年代のAVナンバーワン、1990年代にはそれがネットワークにつながり始め、今やナローバンドがブロードバンドになりました。ソニーではインフラの整備とともに、2010年を目指して、サービス商品をすべてユビキタス・バリュー・ネットワークの方向にオリエンテーションしていく予定です。「ソニー・ドリーム・コミュニティーという形で、モバイル、アウトドア、ホーム、いずれの場所においてもソニーの商品、サービスが自由に使える、それが最大のエンターテインメントにつながっていく」と言います。
企業として、ソニーが考える一番の要は「ソニーの社員一人ひとりが、非常に元気になること」です。入社してくる人材は、会社に尽くそうと思っているのではなく、大半は自分を成長させたい人、能力を高めたい人です。人事は、その夢を実現させるような仕組みを用意していきたい、と中田氏は語ります。
「本人の夢がソニーの中で実現されれば、本人はさらにモチベーションを高くできる。本人のドリームと会社のドリーム、これはいわばソニーで言うところのコンピテンシーなのです」(中田氏)
これは企業理念と一体不離の部分であり、人材開発のキーでもあります。ソニーらしい考え方、行動を抽出し、これをいかに制度の中に入れ込み、かつ会社のカルチャーにしていくかを考えなくてはならない。それが人事部に与えられたミッションであり、教育プログラムの推進にもつながっているのです。
お客様の声
本当の意味での戦略的人事とは
「かつて人事部員は、大体全社員の顔を覚え、自分の頭の中にたたき込んでいたものです。それが優秀な人事マンの位置付けでした。とはいえ、1人でアクセスできる範囲というのは非常に限定されるし、ソニーでは、中途入社の人も毎年数百人入ってきます。こうなると、もう人に依存した人事業務というのは限界です」(中田氏)
大企業になると、社員間のコミュニケーションが成り立ちにくくなります。従って、ナレッジ・マネジメントをこの人事業務の中に入れないと本当の意味での戦略的人事はできません。そこで"Cast-net"という統合システムを通し、マネジャーと社員のコミュニケーション・ツールにしたのです。
現在、ソニーの人事は、人事を独占するのではなく、マネジャーあるいは社員がこういった業務をスムーズにできるよう、基準とツールを提供するのがミッションだと考えています。よって、具体的な基準やツール、新評価システムや、新たなエキスパート制度、e-Learningの内容、コンテンツなどを人事部門の業務として取り組んできたのです。
ソニーは今後も変化に対応した新たな人事の構造改革に取り組む考えを打ち出しています。
お客様情報
設立: 1946年5月7日
連結売上高・利益(2003年3月末現在)
売上高: 7兆4,736億円
営業利益: 1,854億円
連結子会社数: 1,035社
会長兼グループ最高経営責任者: 出井伸之
グループ社員数: 161,100名
事業内容: エレクトロニクス、ゲーム、音楽、映画、金融
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事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、 eServer 、iSeries、AS/400、RS/6000 および
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