掲載日 2004年3月5日
三菱グループのメンバーである旭硝子株式会社(以下、旭硝子)は、近く創業100周年を迎える、世界を代表するガラス・メーカーです。カンパニー制を用いる同社の中核、自動車ガラスカンパニーは、自動車用ガラスの専業メーカーとして約50年の歴史を持ち、これまで日本の自動車メーカーの発展とともに、グローバルに展開してきました。
旭硝子は、2002年に“Look Beyond”というカンパニー・ビジョンを策定し、「イノベーション&オペレーション・エクセレンス」(Innovation&Operational Excellence:革新と卓越)、「ダイバーシティ」(Diversity:多様性)、「エンバイロンメント」(Environment:環境)、「インテグリティー」(Integrity:誠実)、この4つの価値を旭硝子グループの末端まで浸透させ、エクセレント・カンパニーへの成長を目標にしているということです。
この中に「エンバイロンメント」という言葉が入ったことで、同社の環境への姿勢が明確に打ち出され、旭エンバイロンメント・マネジメント・システム(AEMS)が起動したのです。
お客様ニーズ

旭硝子株式会社
自動車ガラスカンパニー
環境室長 三輪雅之氏
環境経営の実現に向けて
自動車ガラス工業は、ガラス化学事業を中心としたエネルギー多消費型素材産業と言えます。「素材産業の中でも、製品、プロセスから排出される廃棄物が大変多く、環境へのインパクトが非常に高いメーカーだ」と、同社自動車ガラスカンパニーの三輪雅之環境室長が認識されているとおり、環境保全を強く意識した活動を行なうに値するバックボーンを持っています。
環境という問題に取り組むにあたり、まずは同カンパニー内に、環境室が設置されました。特に日本においては、「自動車ガラスカンパニーの環境経営ビジョンを明確にし、環境経営基盤を整備・構築して、経営トップが求める環境経営を実現すること」が、環境室のミッションだと言います。現在、同カンパニーには大きな課題があります。それは2005年1月から完全施行される「自動車リサイクル法」に向けて、自動車ガラスのリサイクルを実現させなければいけない、ということです。これを踏まえ、環境の法規を守り、さらに環境保全をし、それを環境経営にまで高めていきたい、という目標を掲げているのです。
同カンパニーでは、2000年から環境レポートを発行し、環境保全に向けた情報開示に努めてきました。体制整備としては、ISO14000(環境マネジメント・システム規格)の認証取得が挙げられます。すでに8工場、1研究所という各サイトの認証取得が完了しています。今後は、2004年6月を目標に「日本の旭硝子コーポレート、全社統合認証を取得したい」と、認証取得をサイト・レベルからコーポ—レート・レベルへと広げていく考えのようです。
また、自動車メーカーから「製品から有害物を排除するように」「プロセスをきれいにしなさい」「環境経営に取り組める仕組みを構築しなさい」といった要求もあり、これにこたえるためにも、環境負荷の低い、きれいな製品を納入できるグリーン・サプライヤーを目指しているところです。
ソリューション
世界の自動車用ガラスのトップランナーとして
同カンパニーは、自動車ガラスリサイクルについて、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの助成もあり、ある工場の中にフロント・ガラスのリサイクルをはじめとした、リサイクル・プラントを設置しています。リサイクル実証試験を行なった結果、技術的な問題はないということで、同カンパニーは、技術開発をいち早く進め、自動車メーカーにさまざまな提案をしています。
また、合言葉が「環境経営の実現」という同カンパニーは、「日経の環境格付けで連続トップという環境先進企業IBMの環境経営を参考にしたい」と、IBMとのジョイントで環境経営実現プロジェクトというチームを編成しました。
「環境活動は企業の価値を高める、あるいは環境活動が企業の競争力になると、明確に認識しています。世界の自動車用ガラスのトップランナーとして、量、質だけではなく、環境活動でもトップランナーになりたい」(三輪氏)
そのために、材料調達先、仕入れ先、取引先の材料から「きれい」にしていこうと努めているのです。同カンパニーでは、環境への影響を考慮した製品の調達指針「グリーン調達ガイドライン」に対応するため、「旭マテリアルデータシステム」(AMDS)という、材料一覧を管理する電子システムを構築しました。加えて同システムを管理、運用する社内の組織をつくり、マニュアルの整備、指標の整備をしてきました。さらにAMDSを整備し、最終的にはライフ・サイクル・アセスメント(Life Cycle Assessment:製品やサービスが環境与える影響を評価する手法)に展開できるよう開発を進めています。
他方で、自動車メーカーが中心になって開発を進めた「国際材料データシステム(IMDS)」があります。自動車メーカーは材料メーカーに、部品の構成材料や化学物質のデータを、このシステムに登録するよう呼びかけています。同カンパニーではすでにこのシステムを活用し、グリーン・サプライヤー活動を行なっています。
| 事業所名 | 取得時期 | 審査登録機関 |
|---|---|---|
| 京浜工場 | 1998年2月 | 日本規格協会 |
| 相模工場 | 1998年8月 | 日本規格協会 |
| 高砂工場 | 1999年5月 | 日本規格協会 |
| 鹿島工場 | 1999年10月 | 日本化学キューエイ |
| 愛知工場 | 2000年3月 | 日本品質保証機構 |
| 船橋工場 | 2000年5月 | 日本規格協会 |
| 中央研究所 | 2000年7月 | 日本検査キューエイ |
| 関西工場 | 2000年12月 | 日本品質保証機構 |
| 千葉工場 | 2002年2月 | 日本検査キューエイ |
| 北九州工場 | 2002年4月 | 日本規格協会 |
環境へのインパクトの軽減に関しては、2000年を目標に、1995年から廃棄物実績比95%削減に取り組んできました。結果として、2年遅れの2002年に1995年比95%削減を達成し、「2005年に向けてゼロエミッションを達成したい」と、更なる活動に励んでいます。
また、例えば板ガラスは、劇薬であるヒ素を用いることで品質・性能が劇的に改善されるため、ヒ素を使うことがガラス業界の常識となっていますが、同カンパニーではいち早く製品の中からヒ素を排除しています。ヒ素を使用しない、きれいなガラス、特にプラズマ・ディスプレイ用の板ガラスにおいては、世界シェアの9割を占め、その技術が評価されています。
自動車用ガラスについては、前述したように「自動車リサイクル法」への対応を率先して進めています。「ガラスリサイクル・プラントを設置した工場を用意し、現在いろいろなトライアルを進めているところです」と、三輪氏は言います。
「21世紀は環境の世紀だという認識に立ち、ではどうしたらいいのかということで努力してきたわけですが、私ども単独では何もできませんでした。そこで、社外役員である北城恪太郎会長がいらっしゃる日本IBMのサポートを得たのです。日本IBMと環境経営推進のための活動体制を組むことで、環境経営を支えるさまざまなシステムが形になりました」(三輪氏)

図をクリックで拡大このように、自動車ガラスカンパニーは「環境経営」「環境規制」「環境保全」という3つの輪を軸に、個別対応を着実に実行してきました。現在は統合認証を目指し、環境マネジメント・システムを構築するための仕組みづくりと整備を進めています。
将来の展望
グローバル統合認証を目指して
アジア(日本)、アメリカ、ヨーロッパの3局で運営されている同カンパニーでは、今後はそれぞれの局ごとにAEMSを確立し、グローバルに統合していこうとしています。
同カンパニー社長、ジェイ・N・ストロング氏は現在、東京で世界を統括しています。彼の環境方針は、最初に説明した旭硝子コーポレートとしての環境ビジョン“Look Beyond”、自動車ガラスカンパニーの環境方針、そして日本・アジア本部の本部長の環境方針、これらをベースに、法規および自動車リサイクル、グリーン調達のリクエストなどを加えたものです。
一方、環境に優しい商品ということも考えなければなりません。「ヒ素のないクリーンなガラスもあれば、クールベールという、赤外線をカットして肌に優しく、心地よさを提供し、かつ省エネにつながる自動車用のガラスもあります。結果として車の燃費が良くなる、こうした幾つかの商品をすでに提供しています。これらをあらためて見直すなど着実に実行していけば、環境経営が実現できるのではないか」と、三輪氏は言います。
さらに「単なるISO14000の認証取得にとどまらず、工場だけの活動からファンクション、あるいはプロセス、具体的には上流の設計開発へ認証を広げる、あるいは下流の営業サービスへ広げるということで、展開を図ってきました。ジオグラフィカルには、国内からアジア、欧米へ。これらのリテラシーに上げ、指標を整備して、ITで環境経営を実現しようと考えています」と展望しています。
換言すれば、ベーシックな部分、インフラの部分からスタンダードへ。どこでも共通で行なえる、なおかつ、それをアドバンスな状態にしたいという思いがあると言えます。「パッシブの受け身の状態ではなく、アクティブに、さらにプロアクティブにやろうではないか。そしてグローバルに」とうたい上げ、取り組んでいるわけです。
お客様の声

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環境活動が事業価値につながる
あらためて環境経営とは何か。AEMSの中身、目指すものは何なのだろうか——。三輪環境室長はこう言います。
「AEMSを確立することで、グリーン・サプライヤーになりたいという思いが実現するのではないかと思います。その結果として企業価値が高まり、競争力が上がるはずです。環境に優しいという活動は環境のためにもなりますが、やはり事業、会社そのものの価値を上げ、収益に貢献するのではないでしょうか」
環境経営の実現に向け、旭硝子のトップランナーとして活動してきた自動車ガラスカンパニー。将来的には環境会計にまでつながるようなITの仕組みを整備して企業価値を高め、競争力を向上させ、旭硝子に貢献していくことになるはずです。
お客様情報
創立: 1907年9月8日
設立: 1950年6月1日
資本金: 90,472百万円(2002年3月末現在)
代表取締役: 瀬谷 博道
従業員数: 6,334名(2003年3月現在)
事業内容: ガラス、ディスプレイ、化学事業 など
用語の説明
- ISO14000
環境マネジメント・システム規格 - ライフ・サイクル・アセスメント
Life Cycle Assessment:製品やサービスが環境与える影響を評価する手法
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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