掲載日 2004年4月19日
創業60余年、世界のカメラ・メーカーとして革新を続けてきたキヤノン株式会社(以下、キヤノン)は、いまやマルチメディアのグローバル・カンパニーへと成長しました。全世界に販売地域が約60あり、大きな拠点は日本、米国、欧州、アジア、オーストラリアの5つ。その下にサブの販売店が60拠点ほどあります。生産拠点はアジア太平洋地域のベルト・ラインを中心に約30、研究開発は日本をベースに、米国、オーストラリア、欧州をはじめとした18拠点で行なわれています。
昨今のグローバル化により、顧客の求める品質・価値観の変化、製品の多様化、サポートの複合多様化が進みました。これに伴い、各拠点における個別サービスとサポート業務の負担が増大したことから、キヤノンは全社的な対応を取る必要性を痛感しました。そこでIT化によるROI(Return on Investment:株主資本利益率)の最大化を目指して、各地域の共通課題を集約し、Webインフラを活用した「Web Self-Support System」(以下、WSSS)を展開することにしたのです。
お客様ニーズ

キヤノン株式会社
玉川事業所
インクジェット第一
品質保証
センター
所長 黒下 行雄 氏
サポートのグローバル展開を目指す
キヤノンの全売り上げの4分の1強を占めるという、デジタルカメラ、インクジェットプリンター、イメージスキャナー、ファクシミリなどのデジタルコンシューマ製品群は、4つの事業本部に分かれて製造されています。サポートも事業本部ごとに違う体系となっていました。
「キヤノンが目標として掲げた“サポート業務の統合”とは、事業本部ごと販売地域ごとに独立して行なわれている業務を統合することで、コストの軽減、顧客満足度の向上、サポートのグローバル展開を目指すものです」とインクジェット第一品質保証センターの所長、黒下行雄氏は言います。
具体的な目標を設定していく上で、顧客満足度は、米国の著名雑誌『PC Magazine』のサービス・ランキングを基準にしたとのことです。このランキングは、顧客による満足度をランクA〜Eで評価するものですが、キヤノンのインクジェットプリンタは、1998年はB、2002年にはDにまで落ち込んでしまったため、2004年までにはこれをAに戻すことを目標にしたそうです。
対投資効果の面では、サポート業務の統合とグローバル展開を連結利益の0.5%以下で実現し、連結ROIの最大化を目標の下、スタートしました。
ソリューション

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WSSSを全世界で展開
サポート統合に向けて、販売会社、キヤノン、IBMの3社で、Global Web Self-Support System(WSSS)というシステムを作りました。システム内の共通のサポートコンテンツは、5カ国語(日本語、英語、フランス語、スペイン語、中国語)に翻訳され、それぞれ需要がある国に飛ぶような仕掛けになっています。システムのコンテンツ・マネジメント・フローはIBMが構築したものですが、共通コンテンツはすべてキヤノンが準備しました。
「その際、われわれがIBMにお願いしたことは、各事業本部で行なうコンテンツ作成や回答ナビゲーターのデータ入力は、Microsoft® Windows®アプリケーションの下で使えるものにしてほしいということです。専任のオペレータしかできないような難しいオペレーションが必要では、長続きしないからです」(黒下氏)
この依頼を受けIBMでは、担当者が自分の端末で通常のMicrosoft Windowsアプリケーションを使うのと同じように、ナビゲーター・ツールに回答を教え込むことが可能なシステムを開発し、提供しました。また、確認作業がスムーズに行なわれるよう配慮し、各地域でも通常のWebを閲覧するのと同じ要領でコンテンツをレビューできるようにしました。
一方、ユーザーは自国の販売会社のWebにアクセスすると、全世界でサポートの共通な部分についてはWSSSを利用することになり、ローカルな部分は販売会社へ戻っていく仕組みのため、ユーザーにはWSSSが見えません。そのため、すべてのサポートを販売会社が行なっているように見えるのです。このようなシステムを構築したことで、グローバル化が実現できたのです。
導入効果

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『PC Magazine』ランキングBに回復
当初より目標としていた『PC Magazine』でのランキングアップでは、2001年からサポート・システムを立ち上げるために分析した結果を米国に反映させ、今年の初頭からWSSSによるWebサポートを強化してきた結果、顧客満足度の面では、2003年7月の『PC Magazine』ではBランクにまで回復しています。『PC Magazine』のサーベイ時期がWSSS立ち上げの過渡期にあったことを考慮すると、2004年にはAランクに到達するのではないかと、目標達成が期待されています。
キヤノンでは、WSSSによるWebサポートを導入してから、コール率も減少してきました。これはWSSSによってインタラクティブなトラブルシューティングが可能になってきたからだ、と分析しています。ユーザーがWebにアクセスすると、電話のオペレータと話すようにインタラクティブに進み、回答ナビゲーターが疑似的な会話形式で答えを出していく仕組みになっているのです。米国では「70%のユーザーが、電話を入れる前にまずWebにアクセスするようになった」との結果も出てているようです。
また、それまでコールセンターでは約120人のオペレータを使っていたため、費用やスタッフ教育の点で多くの問題を抱えていましたが、WSSS導入によりさまざまな負担が軽減されてきているとも評価が出ています。
将来の展望
電話、Web、E-mail、修理 - 4つの接点を一本化
「『PC Magazine』による顧客満足度はBにまで回復することができましたが、このナビゲーターで回答が得られなかったユーザーはまだ17%もいます。この数字には途中で面倒になり、止めてしまった人などのデータは含まれていないため、最終回答まで進んでいないユーザーはかなりの数に上ると推測されます」(黒下氏)
そのため、今後もナビゲーターの精度を随時変えていく必要があると言えるでしょう。
今後の大きな課題は顧客接点です。「電話、Web、E-mail、修理。この4つの接点を一本化してお客様と1対1で対応できているところはまだありません」と黒下氏は言います。
「例えば電話で説明したら、“修理に持って来てください”と言われ、修理拠点に行くとまた同じことを聞かれる。これはお客様にとって非常に苦痛ですし、弊社の信頼感も失われます。お客様が一言“キヤノンに伝えました”と言って修理に出せば、すぐ戻ってくる状態でないといけません」(黒下氏)
今後は、2005年までにこの4つの顧客接点をどのように一本化するか、いわば顧客接点の統合がキヤノンの大きな課題となるはずです。
お客様の声
顧客の立場で、徹底的な追求と解決へ
「よく“簡単操作”といいますが、例えば、スキャナーでもプリンターでも、ドライバーをWebからダウンロードすると、アイコンがぽっと出てくる。一番最初にお客様が分からないのは、それがパソコンのどこに入ったかということです。次にインストールする際も、今インストールされているものがあれば、それをアンインストールしないといけない。そういうことが、PCを使い慣れていないお客様にとっては難しい。これらの動作をすべてワンクリックでできるようにならなければ、簡単とは言えません」(黒下氏)
お客様情報
設立: 1937年8月10日
連続売上高: 2兆9,401億円(2002年度)
資本金: 167,2億円(2002年12月31日現在)
従業員数: 2万1,475人(2002年12月31日現在/含嘱託社員)
事業内容: 複写機、コンピュータ周辺機器、情報機器などの事務機、カメラ、光学機器など
用語の説明
- ROI
Return on Investment:株主資本利益率
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴはInternational Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標です。
Microsoft、Windows、Windows NTおよびWindowsロゴはMicrosoft Corporationの米国およびその他の国における商標。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。
