掲載日 2004年11月15日
朝日新聞社は、2001年より「次期システムプロジェクト」として、全社的なシステムの見直しを開始しました。見直しの対象は、(1)ネットワーク基盤、(2)新聞製作系システム(記事・画像などの素材DB・新聞を組み上げるしくみ・印刷など)、(3)経営営業系(業務・営業・情報など)に大別されます。
ここでの「次期システムプロジェクト」の目的のひとつには、ホスト型システムからオープン系システムへの変更がありました。今回の事例は(3)経営営業系に焦点をあてたものです。
同社は、1990年前後に社内の業務系、営業系のシステムを全面的に作り替えオンライン化を実現しました。このシステムは、ホストコンピューター上でDB2®Universal Database™、CICS®を使い、CSP(Cross System Product)という第4世代言語で構築しました。次期システムでは、オープン系のAIX®を選択しています。
アプリケーションの移行には、ホストシステムで開発された多数のアプリケーション資産と、そこで培われた技術者のスキルを有効活用するために、VisualAge Generator®を採用しました。加えてVisualAge Generatorの機能でWeb化を実現し、各自のPCからグラフィカルな画面で業務ができる環境を構築したことで、社員へ高いサービスを提供しています。
VisualAge Generatorは、クロスプラットフォームでCSPの資産をスムーズに移行できるCSPの後継製品です。
このプロジェクトは朝日新聞社の次期システムプロジェクト室が構築を手がけ、基幹システム運用を担当している業務情報部との連携で進められました。また日本アイ・ビー・エム株式会社 報道ソリューション・サービス(以下 日本IBM 報道ソリューション・サービス)とビジネスパートナーである株式会社 日本コンピューター・ビューロー(以下 NCB)、株式会社 産能コンサルティング(以下 SCC)が支援しています。
お客様ニーズ

朝日新聞社
次期システムプロ
ジェクト室
神保修氏
ホストのソフト資産を有効活用してダウンサイジング
ダウンサイジング、オープン系の移行に着手したのは、経理、資財、販売、広告などのシステムです。総務システムは検討の結果、移行はせずに、パッケージによるシステム化を選択しました。
「次期システムの最初の段階で、経理システムを中心とする業務系システムはホストシステムのソフト資産を生かす結論に達し、「サーバーへの移植」を判断しました。そのためCSPのアプリケーションを活用できるVisualAge Generatorに移行することからスタートしました」と神保修氏(次期システムプロジェクト室)は語っています。
CSPのアプリケーションをVisualAge Generatorに移行し、基幹業務をWeb化していくことや、重要な社内業務であったバッチ処理システムの再構成などを日本IBM 報道ソリューション・サービスと協力しながら進めていきました。
ソリューション

朝日新聞社
業務情報部
久保田滋氏
VisualAge GeneratorによってユーザーインターフェースのWeb化を図る
インターフェースのWeb化にはVisualAge Generatorのウェブトラン(WebTran)機能(ホストで動いていたCSPソースを再利用しながら、Webアプリケーションへ変換する)を利用しています。
最終的には300弱程の画面数に対してWeb化を行いました。そのほかの3,000近い画面もWeb化を検討しましたが、Host-On Demand(PCOMの代替製品で、ブラウザーにより業務画面を閲覧できるIBM製品)へ移行しました。Host-On Demandを採用したのは、3270の操作性を保持したままでも業務が行えるため、あえて継承させた点とサービスインまでの効率を考慮した点によります。
ホスト基幹業務で利用されていたインターフェースについて、久保田滋氏(業務情報部)は次のように述べています。
「ホストのころから、ユーザーインターフェースの改善が必要なのは理解していました。ですから利用者数の多いところは、ユーザーインターフェースをWeb化しました。画面のWeb化は手を入れる必要があります。しかし全社員が使用対象となる部分は、利便性を図るためにもやるべきだと。一方で、画面のWeb化をしないことで、移行までの工数が削減されます。画面のWeb化に関しては、そういった重み付けをした上で判断しました」
インターフェース・デザインの工夫や
開発体制の見直しにより互換性の課題を解決
移行では開発ツールやプラットフォーム間での互換性に課題が持ち上がったものの、開発体制の見直しや、ビジネスパートナーであるNCB、SCCによるアプリケーション・デザインの検討・工夫により、課題を解消しました。
【開発体制について】
統合テストの段階から日本IBM 報道ソリューション・サービスと朝日新聞社が共同で作業に取り組みました。神保氏は「この段階から共同作業を行うと、甘えを生じてしまう心配がありましたが、お互いの作業に責任を持ってプロジェクトを進行することができました」と話しています。
【プラットフォームの互換性への対応について】
実際に日本IBM 報道ソリューション・サービスから、このプロジェクトに参加していた吉田由紀子は、以下のように述べています。
「互換性の取れないであろう部分に関し、どのように対応、実現するかという机上調査を行いました。例えば次のような点です。
・ホストのEBCDICコードとAIXのシフトJISコードの違い
ホストCICSにはCICSプリント機能があるがAIX側にはないため、別の帳票作成機能を作り込んだ。また数値項目のオーバーフロー検知の仕方が異なるため、プログラム修正を行った
・インフラ的なしくみの違い
ホストではJES2というソフトウェアが稼働し、JOBのスプーリングなどを行うが、AIXにはない。そこでJCLをSHELLに移行する際に、WebSphere® MQを利用することで、スプーリングや同じJOBが複数実行されないよう工夫を施した
机上調査後、実際の設計に入る前に、30本程度のプログラムを変換して確認しました。次に全面的な開発前に、ある1機能(プログラム約200本)をパイロット移行、今までの設計に間違いがないか確かめて開発に入りました。
開発後、テストを進めていくと、やはり大規模なシステム移行(プログラム数 約5,000本・JCL数 約3,100本、DBテーブル数 1,800テーブル、APF帳票・QMF帳票)であったため、想定していなかった互換性の取れないものが発生しました。
その問題は発生の都度、ビジネスパートナーであるNCB、SCCとともに解決にあたりました」
また吉田は「CSPからVisualAge Generatorへの変換は、バッチプログラムにも書き換えが有効で、オンラインプログラムの変換以上に効率がよかったです。バッチプログラムの本数がかなりあったので、助かりました」とも語っています。
導入効果

朝日新聞社
業務情報部
次長 楠山岳史氏
各自のPCで業務が可能に。社員へ高いサービスを提供
「社内でもこのプロジェクトは成功事例としてとらえています」と神保氏は評価しています。
「以前は3270端末を部門に何台か設置して、入力の際には端末まで出向き、慣れが必要な独特の画面を操作していました。それが“端末フリー”とでも言いましょうか、各自のPCからグラフィカルな画面で、簡単に操作ができるようになりました。
ホストの画面操作に関する苦情数に比べると、サービスイン後は数がかなり少なくなりましたので、満足度も高いのではないでしょうか」
導入によって利用者が広がったことで、今後の課題も見えてきたと楠山岳史氏(業務情報部 次長)は話しています。
「各自のPCから利用できる状況というのは、障害時の影響度も大きくなったということ。ですからトラブルが起こった場合に、どこを見て原因を追究するか、どのように迅速に復旧すべきかなど、現在の環境に習熟していく必要があります」
将来の展望

朝日新聞社
業務情報部
技師 南波三郎氏
プロジェクト終了後のIBMへの期待
「現在、VisualAge Generatorの開発キット導入の段階にあります。導入には、処理が重くならない程度のコンピューターをそろえなくてはなりませんが、市販PCレベルのスペックでも、快適に利用できるキットが開発されることを期待しています」(久保田氏)
「ダウンサイジングした結果、導入したサーバー台数は23台になります。これだけの台数ですから、運行・管理コストを抑えることが大きな課題です。低コストで運行・管理できるサービスをぜひ提供してほしいですね」(神保氏)
「保守という観点では、機能アップでバージョンが上がるのはいいのですが、下位バージョンのサポートがなくなると、やはり困る時があります。下位バージョンとの互換性は、常に保持していだたきたいと思います」(南波三郎氏 業務情報部 技師)
お客様情報
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■営業内容
日刊新聞の発行、雑誌・書籍・年鑑などの出版、その他
■内外契約通信社
AP(米)、ロイター(英)、AFP時事(仏)、共同通信、時事通信など
■特約海外新聞
ニューヨークタイムズ(米)、タイムズ、サンデー・タイムズ(以上 英)、ルモンド(仏)、東亜日報(韓国)など
■従業員数(2004年4月1日現在)
6,472人(男 5,796人 女676 )
ビジネス・パートナー
アプリケーションソフトウェア開発事業。事務処理用では「電機全社における生産管理・工程管理・資材管理システムの開発」、「不動産会社固定資産償却ならびに管理システムの開発」など。技術計算用では「各種核燃料の計量管理システムの開発」、「各種シュミレーションプログラムの開発」を行う
システムコンサルティング・ERPパッケージ導入支援。システム開発(調査・分析・設計・開発)では、ビジネスシステム、マルチメディア制御システム、情報通信ネットワークシステムなどを手がける
用語の説明
- SNA
Systems Network Architectureの略。IBMのメインフレームを中心に、各種制御プロセッサや端末などが接続されているネットワークアーキテクチャー
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、AIX、CICS、DB2、DB2 Universal Database、VisualAgeおよびWebSphereはInternational Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標です。
UNIXはThe Open Groupの米国およびその他の国における登録商標。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。
