掲載日 2004年12月8日
ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社は、「So-net(ソネット)」のサービス名称で、インターネット接続・コンテンツサービスを提供しています。社員数は417名(2004年3月末現在)、売上高は382億円(2004年3月期連結)と、インターネット接続業者大手の一つです。ここでは、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(以下、So-net)で行なわれたコールセンターの改革についてご紹介します。
お客様ニーズ

ソニーコミュニケーション
ネットワーク株式会社
カスタマーフロント
ディビジョン
ゼネラルマネージャー
小西 一有氏
会員数の増加に対応できないシステムとコストの増大
So-netのコールセンター改革のきっかけは、会員数が100万人を突破した1999年ごろといいます。会員数の増加により、それまでのシステム運用に限界を感じ始めたのです。そこで、システムの再構築プロジェクトが立ち上げられました。しかし、さまざまな理由でプロジェクトは頓挫し、会員数が200万人を超えた2002年ごろまで、旧来のシステムをそのまま使い続けるよりほかはありませんでした。
So-netでは、それまで自社でコールセンターのシステム開発・運用を行ない、自社でエージェントを教育しながら運営してきました。「コールセンターは、われわれにとってコア・コンピタンスなのだから、質のよいサービスが提供できているはずだという自負が、社内の共通認識として存在していました」と、当時の状況を小西氏は話します。
ISPとして初めて土日のサポート対応やナビ・ダイアル(全国共通市内通話サービス)を実現するなど実績を上げてきたSo-netに対し、社会的評価も高いものでした。日経某誌のプロバイダ調査では、1999年にはサポート部門で第3位(総合第9位)、2000年には第6位(総合第18位)に挙げられるなど、ユーザーからも高い評価を得ていたのです。
「コストを抑えながらも高い顧客満足を得ることがCRMの重要課題です。しかし、時間の経過と共にお客様のニーズも高度になっていくため、コールセンターのサービスも日々向上させていかなければならないのです。そこで、この問題の早期解決のため、2002年、日本IBMのコンサルティングを受けることにしました」(小西氏)
ソリューション

図:日本IBMによる
改革チャート
(画像クリックで拡大)
コンサルティングによる現状分析とその評価
日本IBMのコンサルティングによって最初に行なわれたのが、綿密な現状分析です。2カ月間かけて、既存資料調査、ヒアリング、モニタリング、ミステリーコール、人材・組織評価、簡易アンケート調査、勉強会実施、IT調査、プロセス調査を行ないました。その結果、現状の完全否定という結論に至りました。
“No Manage、No Governance”つまり「自社でシステム開発から運営まで行なえば、独自のユニークなサービスが提供でき、それがコア・コンピタンスにつながる」と考えていたSo-netに対し、日本IBMのコンサルティングは「オペレーターごとにばらばらの応対がなされており、一定の品質が保たれていない状態である」ということを導き出したのです。「我流であることが裏目に出て、最低の状態であったとも言えるでしょう」と小西氏は分析します。そこで、日本IBMが提示したのが改革チャートでした。
システムの再構築
システムの再構築プロジェクトは、改革というよりも、新しく作り直すに等しい作業でした。So-netでは、まず、システムの再構築プロジェクトの最終目標をスタッフに浸透させるため、サポート・ポリシーを作成しました。
システムの再構築の目的は、2つ。
1つは、システム・レスポンスの向上による対応品質の向上です。そのためには、大型コンタクト・センター向けのシステム装備の導入、応対品質向上を目指した業務プロセス・フロー構築、マネジメント・プロセス実現、徹底した品質管理のPDCAサイクル構築・定着化が必要になります。
もう1つは、業務効率の向上によるコスト削減。それを実現させるためには、エージェント管理手法の確立、エージェント管理のPDCAサイクル構築・定着化が必要になります。
以上を実現するための基本方針は3つです。
1つはCRMパッケージはノン・カスタマイズで導入すること。そうすることでパッケージのコンセプトやノウハウを最大限享受でき、応対・サポートの品質を極大化することができると考えたのです。これは徹底した品質管理サイクルの短期間構築・定着化にも有効ですし、当然ながら導入コストも下がります。
2つめが、「業務」をパッケージに合わせること。CRMパッケージをノン・カスタマイズで導入するためには、どうしても必要な作業です。当然、現行の業務とは違うやり方を求められるので、現場スタッフの戸惑いもありますが、徹底した現行業務の見直しと業務フロー、業務マニュアルの整備も行なわれました。
そして3つめが、センターの目的・目標に立ち返ることです。サポート・ポリシーを全員で理解し業務遂行することで、業務のよりどころがはっきりし、判断が容易になるということです。
定着化への道程
業務フローにも見直しが入りました。プロジェクトが進むにつれ、スタッフのスキルやマインドと実際の業務プロセスの間にギャップや混乱が生じます。そのギャップや混乱を解消するために行なったのが、管理者(スーパー・バイザーやリーダー)向けの研修でした。1セッション30分間ぐらいのものを、1週間に22回も行なったのです。ここでは、実際のシステム操作だけでなく、サポート・ポリシーやプロジェクトの目的、方針、新システムのコンセプトなど、業務遂行にかかわる背景にあるものを丁寧に教育していったのです。
そして、新システム・新業務の定着化のいちばんの課題は、スタッフが自ら変わることでした。マネジメントそのものの変革です。つまり、一人ひとりが過去の成功体験から脱し、現状を見つめ直した上で、大胆に自分自身が変革すること、下位へのメッセージは明快・大声で何回も伝えること、気合いだけではなくロジカルに説明することが必要なのです。
導入効果

図:プロジェクトによる
保留時間の改善効果
(画像クリックで拡大)
新システム導入で劇的な改善
「プロジェクトの結果、コールに対する保留の発生率は、24.4%から21.7%に、保留時間では、稼働前の2週間平均に比べ、稼働後は1通話あたり22%、コール後の後処理時間は約2分以上の短縮がみられました。それぞれ、新システムを導入することで、一時的には数字は悪くなった時期がありましたが、その後は劇的な改善が見られました」(小西氏)
電話応対をモニタリングする回数を増やすことで、品質のコントロールも改善されたそうです。
将来の展望
常識を疑うことから始まったSo-netのコールセンター・システムの抜本的業務改革は始まったばかりです。
「従来、インハウスのコールセンターはコストが高いが品質も高い、それに比べて、アウトソーシングの場合はコストは安いが品質も低いと言われてきました。しかし品質は運営形態や運営場所に依存しないのではと考えています。たとえば、われわれの事例でそれを証明することができるのではないかと、現在も取り組みを続けている段階です」(小西氏)
2004年になって、地方の2都市にそれぞれコールセンターを置き、現在は、それらを横浜からコントロールしている状況です。「まだ、始めたばかりで目に見えた結果は出ていませんが、順調にいくだろうという手応えを感じています」と話す小西氏。So-netの大胆な変革は、衆望を担います。
用語の説明
- CRM
Customer Relationship Management。顧客関係管理。顧客情報を取得し分析を行なうなどして、顧客との関係を強化させ、売上と収益をさらに拡大させる戦略。 - コア・コンピタンス
独自技術やブランド価値のように、他社には模倣できない価値。 - PDCAサイクル
事業活動のPlan(計画)−Do(実施)−Check(監視)−Action(改善)のサイクル
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事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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